加給年金は廃止される?2028年4月に変わること・額・条件
令和7年に成立した年金制度改正法に、加給年金を廃止する規定はありません。決まったのは、令和10年(2028年)4月からの配偶者の加給年金額の見直し(引き下げ)と、子の加給年金額の引き上げです。令和10年3月までに配偶者の加給年金が付いた人は、現行の額のままです。この記事は、年下の配偶者がいて老齢厚生年金を受け取る前後の方と、そのご家族が、厚生労働省・日本年金機構・e-Govの原文で整理したものです。
あなたの場合、加給年金はどうなる?
加給年金は、老齢厚生年金に付く家族手当のような加算です。状況ごとの扱いを、根拠つきで並べました。
| あなたの状況 | 加給年金 | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和10年3月までに配偶者の加給年金が付いた | 付いた額のまま、配偶者が65歳になるまで | 改正法附則第12条第4項 |
| 令和10年4月以降に初めて付く | 新しい額に見直し(引き下げ) | 厚年法第44条第2項 |
| 18歳年度末までの子がいる | 令和10年4月分から1人につき引き上げ | 改正法附則第12条第5項 |
| 配偶者が65歳になった | 終わる。条件に合えば振替加算 | 厚年法第44条第4項 |
| 配偶者が厚生年金20年以上の年金を受ける権利を持つ | 配偶者の分は支給停止 | 日本年金機構 |
| 年金を繰り下げて待機中 | 受け取れない・増額もされない | 日本年金機構 |
| 厚生年金の加入が20年未満 | 付かない(中高齢の特例を除く) | 厚年法第44条第1項ほか |
出典:令和7年法律第74号、e-Gov法令検索 厚生年金保険法(令和10年4月1日時点を含む)、日本年金機構「加給年金額と振替加算」。厚年法は厚生年金保険法の略です。
令和7年の改正法で決まったこと
「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号、令和7年6月20日公布)のうち、加給年金に関わる部分は次のとおりです。施行は令和10年(2028年)4月1日です。
- 配偶者の加給年金額:厚生年金保険法の本則の額が、224,700円×改定率から202,200円×改定率に変わります(第44条第2項)。厚生労働省の資料では、配偶者の加算が「現行408,100円→見直し後367,200円」(2024年度価格)とされ、「既受給者は現行の額のまま」と書かれています。
- 子の加給年金額:現行は1人目・2人目が224,700円×改定率、3人目以降が74,900円×改定率です。見直し後は1人につき269,600円×改定率になり、令和10年4月分から適用されます(附則第12条第5項)。厚生労働省の資料では、第1・2子234,800円と第3子以降78,300円が、1人あたり281,700円になると示されています(2024年度価格)。
- 廃止の規定:厚生労働省の法律案要綱・法律案案文、衆議院で可決された修正案のいずれにも、加給年金を廃止する規定は見当たりません。令和10年4月1日時点の厚生年金保険法の条文にも、配偶者と子の加給年金額の規定が残っています。
配偶者の加給年金の見直しは、令和10年4月より前に配偶者の加給年金が加算された老齢厚生年金の受給権者には適用されません(附則第12条第4項)。令和10年4月以降に老齢厚生年金を受け取り始めて、初めて配偶者の加給年金が付く方が、見直し後の額の対象です。令和8年度の額と2024年度価格の例は年度が違うため、そのままは比べられません。
加給年金の額(令和8年度)ともらえる条件
| 対象 | 加給年金額(年額) | 年齢制限 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 243,800円 | 65歳未満 |
| 1人目・2人目の子 | 各243,800円 | 18歳到達年度の末日まで |
| 3人目以降の子 | 各81,300円 | 18歳到達年度の末日まで |
出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」(令和8年4月から)。1級・2級の障害の状態にある子は20歳未満まで対象です。
配偶者の加給年金額には、老齢厚生年金を受ける方の生年月日に応じて特別加算が付きます。昭和18年4月2日以後生まれの方は179,900円で、配偶者の加給年金額は合計423,700円です。配偶者が5歳年下なら、満額で5年間受け取った場合の目安は約212万円になります。
もらえる条件
- 厚生年金の被保険者期間が20年(240月)以上:共済組合等の期間を除いた厚生年金の期間が、40歳(女性・坑内員・船員は35歳)以降に15〜19年ある場合の中高齢の特例もあります。
- 65歳到達時(または65歳以降に20年に達した時)に、生計を維持している65歳未満の配偶者か、18歳年度末までの子がいる:生計維持は、生計を同じくしていることと、前年の収入が850万円未満(または所得が655万5千円未満)であることが目安です。
- 届出が必要:加給年金額の加算には届出が必要です。戸籍謄本、世帯全員の住民票、配偶者の所得証明書などを年金事務所に出します。
配偶者が自分で厚生年金20年以上などの老齢厚生年金の受給権を持つ場合は、実際に受け取っていなくても配偶者の加給年金額は支給停止されます(令和4年3月時点で加給年金が支給されていた方には経過措置があります)。
繰り下げ・配偶者の65歳・振替加算
繰り下げると加給年金はもらえない
日本年金機構は、加給年金額と振替加算額は繰り下げによる増額の対象にならず、繰り下げの待機期間中は受け取れないとしています。年下の配偶者がいる方が繰り下げを考えるときは、待機中の加給年金額も含めて比べる必要があります。繰り下げそのものの損益分岐点は年金の繰り上げ・繰り下げの記事にあります。
配偶者が65歳になると終わり、振替加算へ
加給年金は、配偶者が65歳に達した月の翌月に終わります(厚年法第44条第4項)。このとき、配偶者が大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれ、老齢基礎年金を受けられるなど一定の条件を満たすと、配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算が付きます。
| 配偶者の生年月日 | 振替加算(年額) | 月額 |
|---|---|---|
| 昭和31年4月2日〜昭和32年4月1日 | 48,760円 | 4,063円 |
| 昭和34年4月2日〜昭和35年4月1日 | 29,256円 | 2,438円 |
| 昭和36年4月2日〜昭和41年4月1日 | 16,335円 | 1,361円 |
| 昭和41年4月2日以後 | なし | なし |
出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」(令和8年度)。生年月日ごとの全区分は同ページの表にあります。配偶者自身の厚生年金などの加入期間が240月以上ある場合などは対象外です。
遺族年金の改正の中身は遺族年金の改正の記事、親が年金をもらっているときの扶養の線は年金をもらう親の扶養の記事にまとめています。
よくある質問
Q. 加給年金は廃止されますか?
A. 令和7年に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)には、加給年金を廃止する規定はありません。決まったのは、令和10年(2028年)4月から、老齢厚生年金の配偶者の加給年金額を見直す(引き下げる)ことと、子の加給年金額を引き上げることです。令和10年4月より前に配偶者の加給年金が加算された人は、現行の額のままとされています(同法附則第12条第4項)。
Q. 今、配偶者の加給年金をもらっています。令和10年4月に減りますか?
A. 同法附則第12条第4項は、施行日(令和10年4月1日)より前に配偶者に係る加給年金額が加算された老齢厚生年金の受給権者には、改正前の規定がなお効力を有すると定めています。厚生労働省の資料も「既受給者は現行の額のまま」としています。配偶者が65歳になれば、加給年金はそれまでどおり終わります。
Q. 年金を繰り下げたら、加給年金はどうなりますか?
A. 日本年金機構は「加給年金額や振替加算額は増額の対象になりません。また、繰下げ待機期間中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません」としています。年下の配偶者がいて繰り下げを考えている方は、待機中に受け取れなくなる加給年金額も含めて考える必要があります。繰り下げそのものの損得は、年金の繰り上げ・繰り下げの記事にまとめています。
Q. 配偶者に収入があると、加給年金はもらえませんか?
A. 日本年金機構の用語集では、「生計を維持されている」の要件に、生計を同じくしていることと、前年の収入が850万円未満(または所得が655万5千円未満)であることが挙げられています。一方、配偶者自身が厚生年金の被保険者期間20年以上などの老齢厚生年金の受給権を持つと、配偶者の加給年金額は支給停止になります。
Q. 振替加算とは何ですか?誰がもらえますか?
A. 配偶者が65歳になって加給年金が終わるとき、一定の条件で配偶者自身の老齢基礎年金に付く加算です。日本年金機構によると、対象は大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方で、額は生年月日で決まります。昭和36年4月2日から昭和41年4月1日生まれは年16,335円(月1,361円)で、昭和41年4月2日以後生まれにはありません(令和8年度)。配偶者自身の厚生年金などの加入期間が240月以上あるなどの場合は対象外です。