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手が止まるのは、難しいからではなく、窓口が1つではないから

相続の手続きは、順番さえ分かれば1つずつ片づきます。止まる原因は難しさではなく、窓口が法務局・金融機関・税務署と分かれていることと、兄弟との話し合いがまだ済んでいないことの2つです。この記事では、全部自分でやる場合を含めた4つの進め方を費用つきで並べ、専門家に頼むといくらかかるのかを、公表されている価格で確認します。

止まっているのは、あなたが怠けているからではない

当サイトが集計した第9期(2024〜2026年度)の介護保険料は、全国1,573の保険者ごとに決められていて、最も高い大阪府大阪市の月額9,249円から、最も低い東京都小笠原村の3,374円まで幅があります。親の負担額を市区町村単位で調べる人は、たいてい親の家計の側にもう片足を踏み入れています。

その保険料の請求が止まる日が、いつか来ます。そして、その日から始まるのが相続の手続きです。銀行に「相続の手続きに必要な書類を揃えてください」と言われて、そこで止まっている人は少なくありません。

止まる理由は、たいてい難しさではありません。窓口が1つではないからです。不動産は法務局、預貯金は各金融機関、相続税は税務署。口座が3つあれば、3つの銀行にそれぞれ別の書類を出すことになります。しかも、どの窓口でも最初に求められるものは同じです。誰が相続人なのかを、戸籍で証明すること。

そしてもうひとつ、たぶんこちらのほうが大きい理由があります。手が止まっている本当の原因は、兄弟に「勝手に進めた」と言われるのが怖いからではありませんか。戸籍を取り寄せるだけなら誰の同意も要りません。それでも取りに行かないのは、動き出したら分け方の話を切り出すことになると分かっているからです。

この記事は、その2つを分けて考えるために書いています。手続きの手間の問題と、話し合いの問題は別のものです。前者はお金で解決できます。後者は解決できませんが、見積書という共通の材料があると話しやすくなります。

相続登記は2024年4月から義務になった

法務省は、相続登記について次のように案内しています。

法務省の案内(相続登記の申請義務化)

相続したことを知った日から3年以内に登記。正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。令和6年4月1日より前の相続も対象で、同日より前に相続したことを知った不動産は、令和9年3月31日までに登記する必要があります。

出典:法務省「不動産を相続したらかならず相続登記!」(2026年9月4日確認)

ここで押さえておきたいのは、2024年4月より前の相続にも期限があるという点です。何年も前に親が亡くなり、実家の名義が親のままになっている、というよくある状態も対象になります。

もうひとつ、期限とは別の理由で、時間が経つほど手続きが重くなります。相続人が亡くなると、その相続人の子が新たに相続人になる場合があります。最初は兄弟3人で済んだ話が、次の世代では従兄弟を含む人数になり、そのすべてから書類をもらうことになります。会ったことのない親族に印鑑をお願いする状況は、後になるほど作りにくくなります。

相続手続きの進め方は4つある

専門家に頼むことが唯一の正解ではありません。まず全部を並べます。

進め方費用自分の手間平日に動く必要
全部自分でやる実費のみ(戸籍・登記の税金・郵送費)大きいあり
金融機関の相続手続きの代行を使う金融機関が定める手数料小さいあり(窓口)
手続きごとに士業へ個別に頼む依頼先ごとの報酬中くらい(窓口が複数になる)依頼先による
相続手続きを一括で引き受ける窓口に頼むパッケージ料金+実費小さい不要な場合がある

口座が1つで、不動産がなく、相続人も少ないなら、自分でやるほうが早くて安く済みます。戸籍を集めるのに時間はかかりますが、郵送でも請求できます。反対に、不動産の名義変更が必要で、金融機関が複数あり、平日に動けないとなると、自分でやる負担は急に大きくなります。

なお、亡くなる前の対策(遺言書の作成、生前贈与、判断能力が下がる前の財産管理)はこの記事の範囲ではありません。そちらは「まだ早い」と思っているうちにしか契約できない備えで扱っています。

4つのうち一括の窓口が答えになるのはどの場合か

次の3つが重なるときです。

  • 不動産の名義変更がある:登記の申請は書式が決まっていて、間違えると補正のために何度もやり取りが発生します。
  • 金融機関が複数ある:1か所ごとに書類の様式が違い、同じ戸籍一式を何度も出し直すことになります。
  • 平日に窓口へ行く時間が取りにくい:仕事を休んで法務局と銀行を回る日数を、費用と比べることになります。

1つしか当てはまらないなら、その1つだけを士業に頼む形(前章の3つ目)で足りることがあります。次の章では、そのときいくらかかるのかを、公表されている価格で確認します。

資料を請求すると、そのあと何が起きるか

ここでは、相続手続きを一括で引き受ける窓口の1つである「nocos(ノコス)」の公式サイトに書かれている内容を使って、申し込みから先を順に並べます。

1. 最初に届くのは資料で、依頼ではない

公式サイトでは、相続手続きの流れが分かる資料を無料で請求できると案内されています。資料を取り寄せた時点では、まだ何も依頼していません。費用が発生するのは、見積もりを見て依頼を決めたあとです。

2. 伝えるのは3つだけ

見積もりを出すために必要な情報は、突き詰めると次の3つです。

  • 相続人が何人いるか
  • 不動産がどこに何件あるか
  • 口座のある金融機関がいくつあるか

この3つで作業量が決まるからです。「分からない」も含めて伝えてかまいません。実際、相続人の範囲は戸籍を取ってみないと確定しないことがありますし、親の口座を全部把握している家庭のほうが少数です。分からないものを調べるところから見積もりに入ります。

3. 相談の場所と日程

公式サイトには、相談方法として全国の相談所・自宅への出張相談・ZOOMによるオンライン相談・自宅近くの喫茶店などが挙げられており、土日祝の面談にも対応、年中無休(年末年始を除く)と記載されています。相談所はNCPグループの直営で全国60拠点以上(2025年11月時点)とされています。平日に動けないことが理由で止まっているなら、ここが実務的に一番大きい情報です。

4. 初回面談は無料。そこで見積もりが出る

公式サイトには「初回面談は無料」と記載されています。見積もりを見てから断ってかまいません。

5. 頼む範囲ごとの価格が公表されている

相続手続きの費用は「相場」の形では示されにくいのですが、この窓口は必要な手続きだけを選べるプランの価格を公表しています(2026年9月4日確認)。

頼む範囲価格(税抜)価格(税込)
戸籍収集・相続関係図の作成39,000円42,900円
遺産分割協議書の作成65,000円71,500円
預貯金の名義変更・解約(金融機関1か所につき)50,000円55,000円
不動産の名義変更(所有権移転登記)65,000円71,500円
相続スタンダードプラン(不動産の相続に必要な手続きをまとめて)150,000円165,000円
相続登記の義務化プラン150,000円165,000円
相続税の申告プラン資産総額の0.5%〜1.2%(税理士報酬の目安として記載)

いずれも公式サイトの記載にもとづきます。実費は別途必要です。交通費、郵送費、登録免許税(固定資産評価額の0.4%)、戸籍や不動産資料の取得費用などが該当します。また、パッケージの価格は標準的な居住用住宅(土地1筆・建物1戸)を前提としたもので、それ以外の不動産がある場合、不動産価格が1,000万円を超える場合、数次相続・代襲相続・兄弟姉妹相続・法定相続人が5名を超える場合は別途費用がかかると注記されています。

6. 見積書は、兄弟に見せる材料になる

ここが、この記事で最も伝えたい部分です。「勝手に進めた」と言われるのが怖いなら、見積書を先に取ってしまうのが実は近道です。金額と作業範囲が1枚の紙になっていれば、「誰がどこまでやるか」「費用は誰が出すか」を具体的な数字で相談できます。何も持たずに「そろそろ手続きしないと」と切り出すより、話が短く済みます。見積もりを取ることは、依頼を決めることではありません。

7. 費用が発生する地点

資料請求と初回面談の段階では費用は発生しません。発生するのは依頼を決めたあとです。実費(税金や証明書の取得費)は、自分で手続きをする場合でも同じようにかかります。

向いている人・向かない人

この窓口には、扱っていない相談があります。先に書きます。

向いている人向かない人
すでに相続が発生している まだ相続が発生していない(遺言書の作成・生前贈与・生前の相続税対策は対象外)
不動産の名義変更が必要 相続放棄をしたい
金融機関の口座が複数ある 成年後見・家族信託の相談をしたい
自分で進めようとして止まっている 離婚・法人登記・債務整理など、相続以外の相談
平日に窓口へ行く時間が取りにくい 口座が1つで不動産もなく、自分で進められる

右の列に当てはまった方の行き先です。ここで正しい窓口に行ってもらうほうが、あなたにとっても早く済みます。

  • まだ相続が発生していない場合:親が元気なうちにできる備えは別の話です。家族信託の記事成年後見制度との比較をご覧ください。
  • 相続放棄を考えている場合:家庭裁判所への申述が手続きの窓口です。原則として相続の開始を知った時から3か月以内に手続きをする必要があるとされているため、早めに家庭裁判所または弁護士・司法書士に相談してください。
  • 親の預金が動かせなくて困っている場合:亡くなった後ではなく、判断能力の低下によるものなら親の預金が下ろせなくなるときが該当します。

費用に相場がないのはなぜか

相続手続きの費用を調べても、はっきりした相場が出てこないのには理由があります。引き受ける範囲によって作業量がまったく違うからです。解約する口座が1つか5つか、不動産が1件か3件か、相続人が2人か7人か。同じ「相続手続き」という言葉でも、中身は別物です。

だからこそ、見積もりを取ることに意味があります。前の章の3つ(相続人の人数・不動産の件数・金融機関の数)を伝えれば、自分の家の場合の金額が出ます。他人の家の相場を調べても、自分の家の金額には近づきません。

あわせて書いておきます。当サイトは、この記事に掲載しているリンク経由での資料請求によって、広告主から報酬を受け取っています。そのうえで、自分で手続きする選択肢を最初に並べ、対象外の相談を隠さずに書いています。対象外の相談を送っても、読者は無駄足になり、広告主の対応にもなりません。

次の一手

資料を請求する前に、次の3つをメモしてください。

  • 相続人が何人いるか(分かる範囲で構いません)
  • 不動産がどこに何件あるか(固定資産税の納税通知書に載っています)
  • 口座のある金融機関がいくつあるか(通帳やキャッシュカードの枚数で数えて構いません)

この3つが分かれば見積もりが出ます。分からない欄があってもかまいません。「分からない」も含めて伝えれば、それを調べるところから見積もりに入ります。

資料請求の窓口はこの記事の中ほどの案内に置いています。

よくある質問

Q. 相続手続きは自分でもできますか?

A. できます。戸籍を集めて相続人を確定し、遺産分割協議書を作り、法務局と各金融機関に必要な書類を出す、という流れです。費用は実費だけで済みます。ただし窓口は不動産が法務局、預貯金が各金融機関、相続税が税務署と分かれており、平日の日中に動く必要があります。口座が1つで不動産がない場合は自分で進めるほうが早いこともあります。判断の分かれ目は、不動産の名義変更があるかどうかと、金融機関がいくつあるかです。

Q. 費用はいくらかかるのか、事前に分かりますか?

A. nocosの公式サイトには、必要な手続きだけを選べるプランとして、戸籍収集と相続関係図の作成が39,000円(税込42,900円)、遺産分割協議書の作成が65,000円(税込71,500円)、預貯金の名義変更・解約が金融機関1か所につき50,000円(税込55,000円)、不動産の名義変更が65,000円(税込71,500円)と掲載されています。いずれも登録免許税や戸籍の取得費などの実費は別途です。金額は条件によって変わるため、初回の無料面談で見積もりを確認してください(2026年9月4日確認)。

Q. 平日に窓口へ行く時間が取れません。

A. nocosの公式サイトには、全国の相談所のほか、自宅への出張相談、ZOOMによるオンライン相談、自宅近くの喫茶店などでの相談ができると記載されています。土日祝の面談にも対応し、年中無休(年末年始を除く)と案内されています。初回面談は無料です。

参考・出典