退職前に必ず確認すべき7つのこと【有給・失業給付・退職金】
退職は人生の大きな転機ですが、手続きを知らないだけで数十万円単位の損が生じることがあります。有給休暇の消化、失業給付の受給資格、社会保険の切替、退職金の税金——これらをしっかり確認することが、退職後の生活を安定させる第一歩です。転職先が決まっている・いないに関わらず、退職前に必ず押さえておくべき7つのポイントをまとめました。
1. 有給休暇の残日数と退職前に取得する権利
有給休暇(年次有給休暇)は、退職日までの期間で残日数をすべて取得する権利があります。会社が有給取得を拒否した場合は違法です(労働基準法39条)。 厚生労働省の就労条件総合調査(2023年)によると、年次有給休暇の取得率は62.1%と過去最高を記録しましたが、退職時に未消化となるケースも多く、退職前の計画的な消化が重要です。
退職前に有給を消化するために、退職の意思表示はできる限り早く行いましょう。有給の残日数は給与明細や勤務管理システムで確認できます。
- 有給休暇の付与日数は勤続年数に応じて増加(入社6か月後から10日〜最大20日)
- 未使用の有給休暇は退職時に買い取り義務はないが、会社の意向で買い取ることはできる
- 退職日までに消化しきれない場合、消化できなかった日数は失効する
有給取得を拒否されたら
会社が有給取得を拒否する場合、「時季変更権」の行使は退職者には適用できません(退職後に振り替えることができないため)。退職前の有給取得を拒否されたら、労基署や労働相談窓口に相談できます。
2. 離職票・源泉徴収票の受け取り確認
退職後に必要な書類は複数あります。退職日が確定したら、会社に対して以下の書類の受け取りを事前に確認しておいてください。
- 離職票:雇用保険の失業給付申請に必要。退職後10日程度で郵送されることが多い。
- 源泉徴収票:同年中に転職する場合や確定申告に必要。退職後1か月以内に交付する義務がある。
- 雇用保険被保険者証:転職先で必要。自分で管理している場合は紛失注意。
- 年金手帳(または基礎年金番号通知書):転職先の社会保険加入手続きに必要。
- 健康保険資格喪失証明書:国民健康保険や配偶者の扶養に入る際に必要。
離職票が来ない場合
退職後2週間以上経っても離職票が届かない場合は、会社にすぐ連絡してください。それでも対応されない場合は、ハローワークに相談すると代わりに対応してくれることがあります。
3. 雇用保険(失業給付)の受給資格と待機期間
失業給付(基本手当)を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
受給資格の主な要件
- 離職前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上(自己都合)
- 会社都合・特定理由離職の場合は、離職前1年間に6か月以上
- ハローワークに求職の申込みをしていること(積極的に就職活動をしている)
給付日数と受給額の目安
基本手当の日額は、退職前6か月の平均賃金(賃金日額)の約50〜80%です(高収入ほど率が低くなる)。給付日数は離職理由・年齢・被保険者期間によって異なります(自己都合なら90〜150日程度)。
待機期間と給付制限期間
ハローワークへの申込み後、7日間の「待機期間」があります。自己都合退職の場合はさらに2か月(5年間で2回目以降は3か月)の「給付制限期間」があり、その間は失業給付が受けられません。会社都合の場合は給付制限なしで受給できます。
4. 自己都合と会社都合の違い
退職理由が「自己都合」か「会社都合(特定受給資格者)」かによって、失業給付の開始時期と給付日数が大きく異なります。
「会社都合」と認定されるケースには、解雇・整理解雇・賃金未払いによる退職・ハラスメントによる退職などが含まれます。自分から退職を申し出た場合でも、実態が会社都合(パワハラ・未払い残業代等)であれば「特定理由離職者」として認定される可能性があります。
離職票の「離職理由コード」を必ず確認
離職票に記載された離職理由コードが実態と異なる場合は、ハローワークで異議申し立てができます。会社が「自己都合」と記載したが実態は会社都合だった場合、申し立てで訂正されることがあります。
5. 社会保険の切替(任意継続 vs 国民健康保険)
退職すると、会社の健康保険から外れます。退職後は以下のいずれかに加入する必要があります。
選択肢の比較
- 任意継続保険:退職後2年間、退職前の健康保険を継続できる。保険料は退職前の約2倍(会社負担分もすべて自己負担)。手続きは退職後20日以内。
- 国民健康保険:前年の所得に基づいて保険料が決まる。前年の収入が高い場合は任意継続より高くなることも。退職後低収入になるなら翌年から安くなる。
- 配偶者・親の扶養に入る:年収130万円以下の見込みであれば可能。保険料負担なし。
どちらが安いかは前年の収入によって異なります。退職後すぐに転職する場合は転職先の社会保険に入れるため、問題になりにくいですが、しばらく無職になる場合は早めに試算して選択してください。
6. 退職金の税金と退職所得控除
退職金には「退職所得」として所得税・住民税がかかりますが、退職所得控除という大きな非課税枠があります。控除額は勤続年数が長いほど大きくなります。
退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額の計算
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例えば勤続25年なら控除額は800万円+70万円×5年=1,150万円。退職金1,500万円の場合、退職所得は(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 =175万円となります。
退職所得の申告書を提出してください
会社に「退職所得の受給に関する申告書」を退職前に提出すると、退職金から適切な税額が源泉徴収されます。この申告書を提出しない場合は一律20.42%が源泉徴収され、確定申告で還付を受けることになります。
7. 転職先が決まっている場合の入社前手続き
転職先が既に決まっている場合は、入社前に以下の準備・手続きを進めておきましょう。
- 源泉徴収票の準備:入社後に新しい会社で年末調整をするために必要。前職から受け取っておく。
- 雇用保険被保険者証の確認:新しい会社での雇用保険加入手続きに必要。
- 健康保険の空白をなくす:退職日の翌日から新しい会社の社会保険に加入できれば問題なし。空白がある場合は国民健康保険への一時加入が必要。
- 入社書類の準備:マイナンバー、銀行口座情報、通勤経路と交通費の見積もり等。
転職の場合、同年内に2か所から給与を受け取ることになるため、年末調整は転職先の会社で行うか、自分で確定申告する必要があります。前職の源泉徴収票を転職先に提出することで年末調整に含めてもらえます。