転職後の有給休暇はいつから取れる?付与日数・繰越・買取の仕組み
転職直後に「急な用事で休みたいのに有給がない」という状況を経験した方は多いと思います。有給休暇(年次有給休暇)は、法律上、入社から6か月後・出勤率80%以上という条件を満たして初めて付与されます。前職の有給は引き継がれません。本記事では有給付与の条件、勤続年数別の付与日数早見表、繰越・買取のルール、時季変更権と計画的付与の仕組みまで、転職者が知っておくべき有給休暇の知識を整理します。
有給休暇の付与条件
年次有給休暇の付与条件は労働基準法39条に定められています。 厚生労働省の就労条件総合調査(2023年)によると、年次有給休暇の取得率は62.1%と過去最高を記録しましたが、転職時の有給消化トラブルは依然として多く報告されています。
- 継続勤務6か月:入社日から数えて6か月以上継続して雇用されていること
- 出勤率80%以上:全労働日(所定労働日)のうち80%以上出勤していること
この2つの条件を満たした時点で、有給休暇の取得権が発生します。転職後は改めてゼロからカウントが始まります。
出勤率80%の計算に含まれる「出勤扱い」の日
育児・介護休業期間、産前産後休業期間、業務上のけが・病気による休業期間は「出勤したものとみなす」と定められています(労基法39条10項)。これらの期間で欠勤した場合でも出勤率の計算に影響しません。
付与日数の早見表(勤続年数別)
有給休暇の付与日数は勤続年数に応じて増えていきます。フルタイム(週5日以上)の場合の法定最低付与日数は以下のとおりです。
| 勤続年数 | 付与日数(年) |
|---|---|
| 0.5年(6か月) | 10日 |
| 1.5年 | 11日 |
| 2.5年 | 12日 |
| 3.5年 | 14日 |
| 4.5年 | 16日 |
| 5.5年 | 18日 |
| 6.5年以上 | 20日 |
パートタイム(週4日以下・週30時間未満)は、所定労働日数に応じた「比例付与」が適用されます。週3日・勤続0.5年の場合は5日など、フルタイムより少ない付与日数になります。
パートタイム・契約社員の比例付与早見表
| 週の所定労働日数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
※週の所定労働時間が30時間以上の場合は、日数にかかわらずフルタイムと同じ付与日数になります。
年5日の時季指定取得が義務化
2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与された労働者は、そのうち年5日を必ず取得しなければならず、会社にも取得させる義務があります(時季指定義務)。
前職の有給は転職先に引き継げない
有給休暇は「使用者(会社)と労働者の間の権利」であり、会社をまたいで引き継ぐ制度はありません。前の会社で残っていた有給は、転職先には持ち越せません。
そのため、転職前には前職の有給を計画的に消化しておくことが重要です。退職日までに消化しきれない場合は、買取を依頼することも可能です(詳細は後述)。
転職直後に有給がない期間の対処
- 会社独自の「特別休暇制度」(慶弔休暇・リフレッシュ休暇など)が使える場合がある
- 欠勤扱いになる可能性を理解した上で休む(給与控除される場合がある)
- 入社時に「有給を6か月以前から付与してほしい」と交渉することもできる(会社の裁量で前倒し付与が可能)
※欠勤控除がある場合、実際にどの程度手取りが減るかは給与手取り計算機で確認できます。
試用期間中の有給の扱い
試用期間中であっても、勤続期間のカウントは入社初日から始まります。試用期間が6か月であれば、試用期間終了と同時に有給が付与されることになります。
「試用期間中は有給がない」という会社の主張は、6か月未満の段階では正しいですが、6か月を超えても付与しない場合は違法です。
有給の繰越(最大2年分)
使い切れなかった有給休暇は翌年度に繰り越せます。繰越期間は最大2年です(労基法115条の時効)。
- 当年付与分から先に消化する(古い順に消化するのが一般的)
- 2年を超えると時効で消滅(使わないと消える)
- 最大繰越日数:前年20日+今年20日=40日が上限
有給を使いにくい職場環境でも、時効消滅を防ぐために少しずつ消化することをお勧めします。
有給の買取は原則禁止(退職時は例外)
有給休暇の買取(未消化有給を金銭で精算すること)は、原則として禁止されています。理由は、買取が行われると「有給を取得するより金銭で受け取れる」という意識になり、有給取得の抑制につながるためです。
買取が認められる例外
- 退職時の未消化有給:退職後に消化できない分については、会社が任意で買取ることが認められている(義務ではない)
- 法定日数を超える有給の買取:会社が法定日数(年10〜20日)を超えて付与した分については買取可能
- 時効消滅した有給:2年を超えて時効消滅した分については買取の交渉が可能(会社の判断次第)
退職時の有給消化は権利
退職前に未消化の有給を消化することは労働者の権利です。会社が「退職日まで有給は使えない」と言っても、正当な時季変更の理由がない限り拒否できません。退職前の有給消化については当サイトの関連記事も参考にしてください。
時季変更権と計画的付与
時季変更権とは、労働者が有給を取得しようとした時期に業務の正常な運営が著しく妨げられる場合、会社が別の時季に変更を求めることができる権利です(拒否ではなく変更のみ可能)。ただし「人手が足りない」「繁忙期だから」という理由だけでは行使できないケースも多く、その必要性は厳格に判断されます。なお退職日が確定している場合、時季変更権を行使しても変更後の取得先がなくなるため、実務上は行使できないとされています。
計画的付与とは、労使協定を結んで有給取得日を会社が指定する制度です(年5日を超える部分が対象)。夏季休暇・年末年始をこれに充てている会社もあります。
退職までに有給を使い切る進め方
転職を決めたら、退職日から逆算して有給消化のスケジュールを組むことが重要です。
- 残日数を確認する:直近の給与明細や人事システムで有給残日数を確認する
- 引継ぎ期間を見積もる:業務の引継ぎに必要な最低日数を洗い出し、退職日から逆算する
- 退職日の1〜2か月前に消化計画を申請する:まとまった日数を一度に申請すると業務調整がしやすい
- 有給消化中の在籍状態を確認する:有給消化中も社会保険・雇用保険の被保険者資格は継続する(退職日まで)
転職先の入社日が決まっている場合は、退職日と入社日の間に空白期間ができないよう、有給消化のスケジュールと合わせて調整しましょう。会社が引継ぎを理由に有給消化を拒む場合の対応は、労働組合のない会社でのトラブル対処法で解説している交渉手段が参考になります。
よくある質問
Q. 転職後の有給休暇はいつから使えますか?
A. 転職先で継続勤務6か月・出勤率80%以上の条件を満たした時点で10日付与されます。前職の有給は引き継げないため、転職直後の6か月間は有給がない状態が続きます。
Q. 前職の有給休暇は転職先に引き継げますか?
A. 引き継げません。有給休暇は会社と労働者の間の権利であり、転職すると前職での勤続年数・有給残日数はリセットされます。退職前に消化しきれない分は買取を相談するか、計画的に消化しておく必要があります。
Q. 試用期間中でも有給休暇は取得できますか?
A. 試用期間であっても勤続期間のカウントは入社初日から始まるため、試用期間の途中で6か月を経過すれば有給休暇が発生します。試用期間だからという理由だけで有給を認めないのは違法です。
Q. 有給休暇の繰越には期限がありますか?
A. あります。有給休暇の消滅時効は2年(労基法115条)で、繰り越せるのは最大で前年分と当年分を合わせた40日までです。2年を超えると自動的に消滅します。