雇用保険(失業給付)の受給額の計算と申請手順の完全ガイド
退職後に受け取れる雇用保険(失業給付)は、次の仕事が決まるまでの大切な生活基盤です。しかし自己都合退職か会社都合退職かによって給付制限の有無が変わり、受給できる期間も勤続年数や年齢で大きく異なります。この記事では、受給資格の確認から基本手当の計算方法、ハローワークでの申請手順、受給中のアルバイト制限、早期就職時の再就職手当まで、知っておくべき知識をすべて解説します。
雇用保険の受給資格
雇用保険の基本手当(失業給付)を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。厚生労働省「雇用保険事業月報」によると、基本手当(延長給付を除く)を新たに受け始めた人は令和6年度で1,149,933人でした。
- 離職日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上ある(特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月以上)
- 就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる状態にある
- 積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、現在職業に就けない状態にある
受給できないケース
病気・けが・妊娠・育児などで働くことができない状態では基本手当は受給できません(受給期間の延長申請が可能)。また、自営業を始めた場合や内定を得ている場合も受給できません。
自己都合と会社都合の違い
退職理由によって、給付が始まるまでの待機期間が大きく異なります。
自己都合退職(一般の離職者)
自分の意思で退職した場合(転職・一身上の都合など)は、待期の後に基本手当が支給されない「給付制限期間」があります。厚生労働省のリーフレットによると、退職日が2025年(令和7年)4月1日以降なら原則1か月、2025年3月31日以前なら原則2か月です。ただし、退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格の決定を受けている場合は3か月になります。なお、2025年4月1日以降に教育訓練給付金の対象講座や公共職業訓練などを受けた場合は、ハローワークへの申し出により給付制限が解除されます。
会社都合退職(特定受給資格者)
倒産・リストラ・整理解雇・雇い止めなど、会社都合による退職の場合は給付制限なしです。7日間の待機期間を経てすぐに給付が開始されます。また、給付日数も自己都合より多くなります。
特定理由離職者について
体力的な理由・家族の介護・ハラスメントによる退職など、やむを得ない事情の自己都合退職は「特定理由離職者」として給付制限なし(または短縮)で扱われる場合があります。ハローワークで詳しく相談してください。
基本手当の計算方法
基本手当の1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6か月間の賃金をもとに計算されます。
計算の流れ
賃金日額 = 離職前6か月の賃金合計 ÷ 180
※ボーナスは含まない。残業代・通勤手当は含む
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%)
※給付率は賃金日額が低いほど高くなる(低賃金者を厚く保護する仕組み)
給付率の目安として、賃金日額が高いほど率が低くなります。例えば日給1万円程度の場合は概ね50〜60%台、日給5,000円前後の場合は80%近くになります(上限・下限額が毎年改定されるため、詳細はハローワークで確認)。
1か月の受取額の試算
1か月の受取額(目安) = 基本手当日額 × 28〜30日
※認定日の間隔は通常28日。実際の受給額は認定を受けた日数分
給付日数の目安
給付を受けられる日数は、退職理由・年齢・被保険者期間(雇用保険への加入期間)によって異なります。
自己都合退職の場合(一般の離職者)
年齢による差はなく、被保険者であった期間だけで決まります。被保険者期間が1年未満の欄は表にも日数がなく、原則として受給資格そのものが得られません(離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要)。
- 被保険者期間1年以上10年未満:90日
- 被保険者期間10年以上20年未満:120日
- 被保険者期間20年以上:150日
会社都合退職(特定受給資格者)の場合
会社都合は離職時の年齢でも日数が変わります。並びは「1年未満/1年以上5年未満/5年以上10年未満/10年以上20年未満/20年以上」です(就職困難者を除く)。
- 30歳未満:90日/90日/120日/180日/(20年以上は該当なし)
- 30歳以上35歳未満:90日/120日/180日/210日/240日
- 35歳以上45歳未満:90日/150日/180日/240日/270日
- 45歳以上60歳未満:90日/180日/240日/270日/330日
- 60歳以上65歳未満:90日/150日/180日/210日/240日
受給期間は1年間
基本手当は、離職日翌日から1年以内に受け取らなければなりません。この1年の期間を「受給期間」といい、期間内に給付日数を使い切れなかった場合、残った日数は消滅します。
ハローワークでの申請手順
- 離職票を受け取る
退職後に会社から「離職票」が郵送されます。通常10〜14日程度かかります。届かない場合は会社に問い合わせてください。
- ハローワークで求職の申込みをする
住所地を管轄するハローワークに、離職票・雇用保険被保険者証・本人確認書類・印鑑・写真(2枚)・振込先通帳を持参します。
- 7日間の待機期間を過ごす
求職申込み後の7日間は、アルバイトを含む就労をしてはいけません。
- 雇用保険説明会に参加する
ハローワークが指定する説明会に参加し、今後の認定日・求職活動の方法などを確認します。
- 求職活動を行い、認定日にハローワークへ
認定日(約4週間ごと)にハローワークを訪問し、前回認定日から認定日前日までの求職活動実績を申告します。原則として認定対象期間に2回以上の求職活動が必要です。
受給中のアルバイト制限
失業給付を受けながらのアルバイトは完全に禁止されているわけではありませんが、正しく申告しなければなりません。
- 就労した日(アルバイトを含む)はハローワークに申告が必要
- 就労した日は給付が支給されない(後日繰り越しになる場合も)
- 週20時間以上・31日以上の継続雇用が見込まれる就労は「就職」とみなされ、受給停止になる
- 申告せずに働いていた場合は不正受給となり、受給額の返還のほか、不正に受給した額の2倍以下の納付を命じられることがある(雇用保険法10条の4第1項)
不正受給は厳しく対処される
申告せずに働いたことが発覚した場合、支給された失業等給付の全部または一部の返還を命じられるほか、厚生労働大臣の定める基準により、不正に受給した額の2倍以下に相当する金額の納付を命じられることがあります(雇用保険法10条の4第1項)。正直に申告することが最重要です。
再就職手当の条件
失業給付の受給期間中に早期に再就職した場合、再就職手当として残った給付日数に応じた一時金を受け取ることができます。
再就職手当の受給条件
- 就職日前日時点で、所定給付日数の3分の1以上が残っている
- 給付制限期間がある場合は、期間経過後の再就職であること(待機期間中は不可)
- 1年を超えて雇用されることが確実な就職であること
- 前の会社への再就職ではないこと
支給額の計算
再就職手当 = 基本手当日額 × 残日数 × 給付率
※残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合:70%、3分の1以上の場合:60%
早く再就職するほど有利
再就職手当は早期に就職するほど残日数が多く、受取額が大きくなります。失業給付を「満額もらいきる」より、早期再就職で再就職手当を受け取る方が総受取額が多くなるケースもあります。