傷病手当金の支給条件・支給額の計算と申請方法【病気・けがで働けない場合】
病気やけがで長期間働けなくなった場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。これは会社員(健康保険加入者)の所得を一定期間補償する制度で、最長1年6か月間、休業前賃金の3分の2を受け取ることができます。この記事では支給条件・支給額の計算方法・申請手続きの流れ・有給休暇との使い分け・障害年金や失業給付との関係まで解説します。
傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険法第99条に定められた給付で、会社員が業務外の病気やけがで働けなくなった際に、生活保障として健康保険から支給される所得補償です。 2023年10月から社会保険の適用拡大により、従業員51人以上の企業でも短時間労働者の加入が義務化され、傷病手当金の受給権を持つ会社員が増加しています。
給与が支払われない期間の生活費を補うためのものであり、会社の制度ではなく健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)からの給付です。自営業者(国民健康保険加入者)は対象外となります。
業務上の病気・けがは対象外
業務上または通勤途中の病気・けがは、傷病手当金の対象外です(労災保険の休業補償給付が適用されます)。傷病手当金はあくまでプライベートな病気・けがへの保障です。
支給条件
傷病手当金を受け取るには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 業務外の病気やけがで療養中である
- 療養のために仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含む4日以上仕事を休んだ(待期期間3日間が必要)
- 休業した期間について給与の支払いがない(または給与が傷病手当金より少ない場合は差額支給)
待期期間(3日間)について
傷病手当金が支給されるのは4日目からです。最初の3日間(待期期間)は支給されません。この3日間は連続している必要がありますが、有給休暇・公休日・休日も含めることができます。
退職後も受給できる場合がある
在職中に傷病手当金の受給を開始していた場合、退職後も引き続き受給できます(継続給付)。ただし条件があり、退職日まで継続して1年以上の被保険者期間があることが必要です。
支給額の計算方法
傷病手当金の1日あたりの支給額は、標準報酬日額の3分の2です。
1日あたりの傷病手当金 = 標準報酬日額 × 2/3
標準報酬日額 = 標準報酬月額 ÷ 30
※標準報酬月額は社会保険の保険料計算に使う月収の基準額
計算例
月収30万円(標準報酬月額30万円)の場合:
- 標準報酬日額 = 30万円 ÷ 30 = 1万円
- 1日あたりの傷病手当金 = 1万円 × 2/3 ≒ 6,667円
- 1か月(30日)の受取額目安 ≒ 20万円
給与が支払われている日は支給されない
休業日に給与が支払われた場合、傷病手当金は支給されません。ただし給与額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。
最長1年6か月の支給期間
傷病手当金は、同一の病気・けがについて支給開始から最長1年6か月(通算)受け取ることができます。
「通算」の意味
2022年1月の法改正により、支給期間が「支給開始日から1年6か月」から「通算1年6か月」に変更されました。途中で職場復帰して給付が止まった期間があっても、その期間はカウントされず、実際に傷病手当金を受け取った日数が1年6か月(546日)に達するまで受給できます。
1年6か月を超えた後の選択肢
傷病手当金の支給が終了した後も回復しない場合は、障害年金・生活保護などを検討することになります。社会保険労務士や地域の福祉窓口に相談することをお勧めします。
申請手続きと必要書類
傷病手当金の申請は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)に対して行います。会社を通じて申請するのが一般的です。
必要書類
- 傷病手当金申請書(加入している健康保険の窓口または協会けんぽのウェブサイトで取得)
- 医師の意見書(療養担当者記入欄):主治医に記入してもらう。傷病名・療養期間・就労不能であることの証明
- 会社担当者の記入欄:休業日数・給与の支払状況を会社に記入してもらう
申請のタイミング
申請は1か月ごとにまとめて行うのが一般的です。休業が続いている間は毎月申請することになります。申請書は2年間さかのぼって申請できます(時効2年)。
有給休暇と傷病手当金の使い分け
病気・けがで休む場合、有給休暇と傷病手当金をどう使い分けるかは重要なポイントです。
有給休暇取得日は傷病手当金が出ない
有給休暇を取得している日は給与が支払われるため、傷病手当金は支給されません。ただし待期期間(最初の3日間)に有給を当てることで、給与をもらいながら待期期間を満たすことができます。
一般的な活用パターン
- 最初の3日間(待期期間):有給休暇を使って給与を確保
- 4日目以降の長期休業:傷病手当金を申請
有給残日数が多い場合は、有給消化と傷病手当金の申請期間を計画的に設定することで収入の空白を最小限にできます。
障害年金・失業給付との関係
傷病手当金と障害年金
同じ病気で障害年金も受給できる場合、傷病手当金と障害年金を同時に受給することは原則できません。障害年金の金額が傷病手当金を上回る場合は障害年金のみ、下回る場合は差額が傷病手当金として支給されます。
傷病手当金と失業給付(雇用保険)
退職後に失業給付を受けるためには「すぐに働ける状態」であることが条件です。傷病手当金を受給しているということは「働けない状態」であり、その間は通常、失業給付を受給できません。ハローワークに「受給期間延長申請」を行うことで、回復後に失業給付を受け取る権利を保全できます。
受給期間の延長申請は忘れずに
退職後30日を超えて傷病状態が続く場合は、離職日の翌日から1か月経過後、4か月以内にハローワークへ受給期間延長の申請を行ってください。申請を忘れると失業給付の受給期間が切れてしまう可能性があります。