試用期間中の解雇は有効?労働者が知っておくべき権利と対処法
「試用期間中だから、いつでも切れる」と思い込んでいる会社が多くあります。しかし法律上、試用期間中であっても解雇は原則として自由ではありません。14日を超えて雇用された場合は解雇予告(または30日分の解雇予告手当)が必要であり、「本採用しない」という決定は合理的な理由がなければ「不当解雇」として争うことができます。本記事では試用期間の法的位置づけから、解雇された場合の対処法、有給・社会保険の権利まで詳しく解説します。
試用期間の法的な位置づけ
試用期間とは、採用後の一定期間を「本採用の適格性を評価するための観察期間」として設ける制度です。多くの企業で3か月〜6か月程度設けられていますが、労働基準法に明示的な規定はなく、民事的な取り扱いに委ねられています。 厚生労働省の調査によると、未払い賃金が発覚した事業場への是正指導は年間数万件に上ります。試用期間中の不当解雇トラブルも多発しており、適切な知識が自衛のために必要です。
最高裁判所は「三菱樹脂事件」(1973年)において、試用契約は解約権留保付きの労働契約であると判断しました。つまり試用期間中であっても労働契約は成立しており、使用者が留保している解約権(本採用拒否権)を行使するには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
「試用期間だから何でもできる」は誤解
試用期間中であっても、労働者には労働基準法・労働契約法のすべての保護が適用されます。最低賃金・有給休暇・社会保険・解雇規制——いずれも試用期間中から適用されます。
14日を超えた試用期間での解雇予告義務
労働基準法21条ただし書きにより、試用期間中であっても14日を超えて引き続き使用された労働者を解雇する場合には、解雇予告義務が適用されます。
- 雇用開始から14日以内:解雇予告なしで即時解雇可能
- 雇用開始から14日超:30日前の解雇予告 または 30日分の解雇予告手当が必要
解雇予告手当は「平均賃金×30日分」です。これを支払わずに即日解雇した場合は労働基準法違反となり、解雇予告手当の支払いを請求することができます。
「試用期間中は解雇予告不要」と言われたら
14日を超えて働いているにもかかわらず「試用期間中だから予告なしで解雇できる」と言われた場合は違法です。所轄の労働基準監督署に相談してください。
「本採用しない」と言われた場合の対処法
試用期間終了後に「本採用しない(延長する)」と告げられた場合の対処ステップを説明します。
ステップ1:理由を書面で確認する
まず「なぜ本採用しないのか」について書面(解雇理由証明書)の交付を求めてください(後述)。口頭だけでは後から争いが難しくなります。
ステップ2:理由の合理性を検討する
本採用拒否が有効とされるには、採用時には知ることができなかった事実が試用期間中に判明し、それが採用継続を相当でないとする客観的な理由である必要があります。
- 有効とされやすい例:重大な経歴詐称、業務に必要な能力の著しい欠如(十分な指導後も改善なし)
- 無効とされやすい例:入社前から会社側が把握していた事情、軽微なミス、個人的な感情
ステップ3:都道府県労働局または弁護士に相談
不当と思われる場合は、都道府県労働局のあっせん制度(無料)または弁護士への相談を検討してください。
解雇理由の書面請求権
労働基準法22条により、解雇された労働者は退職から2年以内であれば、使用者に対して解雇理由証明書の交付を請求する権利があります(解雇予告中の場合も同様)。
請求があれば、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。これを拒否することは労働基準法違反です。
書面に記載された理由が争いの基準になる
解雇理由証明書に記載された理由以外の理由は、後から訴訟で主張することが制限されます。会社が主張できる解雇理由を書面で確定させる意味でも、早めに請求することが重要です。
不当解雇として争える条件
試用期間中の本採用拒否(解雇)が不当解雇として争える主な条件は以下のとおりです。
- 解雇理由が客観的に合理的でない(経歴詐称でもなく、業務能力に問題がない)
- 指導・改善の機会が与えられなかった
- 解雇前に告知・聴聞(本人に弁明の機会を与えること)がなかった
- 同期入社の他社員と比べて明らかに不合理な扱い
- 妊娠・育休取得・労組加入などを理由とした解雇(これらは違法)
不当解雇の場合は、解雇無効(職場復帰)または金銭的解決(バックペイ=未払い賃金相当額の支払い)を求めることができます。
争う手段
- 都道府県労働局のあっせん:無料・迅速(60日以内)、強制力はなし
- 労働審判:費用が低い・迅速(3回以内)
- 地位確認訴訟(民事訴訟):時間はかかるが強制執行力あり
試用期間中でも有給休暇・社会保険の権利はある
試用期間中であっても、労働基準法・社会保険法は全面的に適用されます。
有給休暇
有給休暇は入社から6か月・出勤率80%以上で付与されます(労働基準法39条)。試用期間中の6か月は勤続年数にカウントされるため、試用期間が終わっていなくても6か月を超えた時点で有給が発生します。
社会保険(健康保険・厚生年金)
週30時間以上(目安)または正社員の3/4以上の労働時間がある場合、試用期間初日から社会保険に加入義務があります。「試用期間中は社会保険に入れない」と言われた場合は違法です。
雇用保険
週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある場合、試用期間初日から雇用保険に加入する義務があります。
試用期間中の社会保険未加入は違法
「試用期間中は保険に入れない」「様子を見てから手続きする」という会社は法令違反を犯しています。年金事務所または労働基準監督署に相談してください。