パワハラ・セクハラの法的定義と職場での正しい対処・申告方法

職場でのパワーハラスメント・セクシャルハラスメントは、被害者に深刻な精神的・身体的ダメージを与えます。2020年のパワハラ防止法施行により、企業にはハラスメント防止措置が義務付けられました。この記事では、パワハラの6類型とセクハラの定義を整理し、証拠の集め方、社内申告の進め方と限界、外部機関への相談方法、弁護士への依頼が必要なケースまでを具体的に解説します。

パワハラの6類型(厚生労働省定義)

厚生労働省は、パワーハラスメントを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と定義しており、具体的に6つの類型を示しています。 厚生労働省の調査によると、未払い賃金が発覚した事業場への是正指導は年間数万件に上ります。パワハラについても、2022年度の個別労働紛争相談件数は過去最高の約28万件に達しています。

  • 身体的な攻撃:殴る・蹴る・物を投げつけるなど、身体に危害を加える行為
  • 精神的な攻撃:暴言・侮辱・長時間の叱責・人格を否定する言動
  • 人間関係からの切り離し:無視・仲間外れ・職場内での孤立化
  • 過大な要求:業務上不要なことや不可能なことの強制、私的な雑用の強制
  • 過小な要求:能力・経験とかけ離れた簡単な業務への配置転換・仕事を与えない
  • 個の侵害:私的な事柄への過度な立ち入り、SNSのチェックなどプライバシーの侵害

「指導」との線引き

業務上の適正な指導やミスへの注意はパワハラに当たりません。ポイントは「業務上の必要性があるか」「手段が相当か」の2点です。必要性のない人格攻撃や、他の社員の前での執拗な叱責は類型に該当しやすくなります。

セクハラの定義——職場環境型と対価型

セクシャルハラスメントは男女雇用機会均等法第11条に規定されており、職場における性的言動への対応として、会社に防止措置を義務付けています。

対価型セクハラ

性的な言動に対して拒否・抵抗した場合に、解雇・降格・不利益な異動などの不利益を与えるものです。「交際に応じないと昇進させない」といった行為が典型例です。

環境型セクハラ

性的言動によって職場環境が不快なものとなり、就業意欲が低下したり、業務に支障が出たりするものです。性的な冗談・ヌードポスター・身体への接触などが含まれます。

被害者は女性だけではない

セクハラの被害者・加害者の性別は問いません。男性が被害を受けるケースも法律の保護対象です。また、同性間のセクハラも適用されます。

証拠の集め方

ハラスメントの申告や法的手続きを進める際、証拠の有無が結果を大きく左右します。被害を受けたら、できるだけ早く記録を始めてください。

記録すべき内容

  • 日時・場所:いつ・どこで起きたか
  • 言動の具体的内容:何をされたか・何を言われたか(できるだけ言葉を正確に)
  • 証人の有無:その場に誰がいたか
  • 自分の状態:どのような精神的・身体的影響があったか

有効な証拠の種類

  • メール・チャットのスクリーンショット(日時が確認できるもの)
  • ICレコーダーによる録音(日本では原則として自分が参加している会話の録音は合法)
  • 医療機関の診断書(うつ病・適応障害などの病名と発症時期)
  • 日記・手帳への記録(日付入りのもの)

証拠収集は在職中に行う

退職後は社内システムへのアクセスができなくなります。メールや業務記録の保存は在職中に完了させてください。

社内相談窓口への申告と限界

多くの会社にはハラスメント相談窓口があり、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)により設置が義務付けられています。まず社内窓口への相談が出発点になりますが、限界もあります。

社内窓口への申告の手順

  1. 相談窓口の担当者に連絡する

    人事部・コンプライアンス担当・外部委託の相談窓口など、会社によって異なります。就業規則を確認してください。

  2. 事実関係と証拠を整理して伝える

    感情的にならず、いつ・誰に・何をされたかを具体的に伝えます。事前に記録をまとめておくと効果的です。

  3. 会社の対応を確認する

    相談後の会社の調査・対応状況を定期的に確認します。対応状況もメモしておきましょう。

社内窓口の限界

社内窓口は会社組織の一部であるため、加害者が上位管理職の場合や会社がハラスメントをもみ消す場合には、公正な対応を期待できないことがあります。そのような場合は外部機関への相談が有効です。

労働局・都道府県労働局への相談

社内での解決が困難な場合は、外部の行政機関に相談することができます。

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)

セクハラに関しては、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」が相談窓口です。会社に対して助言・指導・勧告を行う権限を持っており、問題の解決に向けた働きかけが期待できます。

個別労働紛争解決制度(あっせん)

労働局では、労働者と会社の間の紛争解決を支援する「あっせん」制度があります。費用は無料で、中立的な第三者が仲介する話し合いです。強制力はありませんが、双方が合意すれば解決できます。

相談先

総合労働相談コーナー:0120-811-610(全国共通)。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)でも相談を受け付けています。

弁護士への相談と慰謝料請求

ハラスメントによって精神的・身体的な被害を受けた場合、加害者個人または会社に対して損害賠償を請求することができます。

請求できる損害

  • 精神的苦痛に対する慰謝料
  • 通院・治療費などの実費
  • 休業によって失った収入(休業損害)
  • 退職を余儀なくされた場合の逸失利益

弁護士への相談が必要なケース

  • 精神的疾患(うつ病・適応障害など)を発症した
  • 会社がハラスメントを認めない・もみ消しを図っている
  • 加害者が上位役職者で社内解決が困難
  • 退職に追い込まれた

法テラス(0570-078374)では収入要件を満たせば無料相談・費用立替制度が利用できます。また各都道府県弁護士会でも初回無料相談を実施しています。

時効は3年

不法行為(ハラスメント)に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害を知った時から3年です。時間が経つと証拠も薄れるため、早めに専門家に相談することをお勧めします。

参考・出典

会社員の計算帳 運営事務局

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