退職した年のふるさと納税|退職金は上限額に入る?寄附できる額は?ワンストップ特例は使える?翌年の住民税との関係、寄附しすぎると
退職金は分離課税で、住民税は支払われるときに引かれています。そのため、ふるさと納税の上限額の計算には入らないと読めます(条文の読み合わせです)。退職した年の上限額の元になるのは、その年に支払われた給与です。年末調整を受けずに退職した年に確定申告をするなら、ワンストップ特例は使えません。総務省・国税庁・地方税法の原文で確かめた内容を、問いごとにまとめました。
退職金は上限額の計算に入るか
退職金の住民税は、ほかの所得とは別に計算します。地方税法第328条は、退職手当等の所得割を「他の所得と区分」して課すと定めていて、税の徴収は退職手当等を支払うときの特別徴収です(第328条の4・第328条の5)。
一方、寄附金税額控除は、前年中に寄附した分を「第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額」から引く、と定めています(第314条の7第1項)。分離課税の退職手当等の所得割は第328条で別に課されるので、引き先に入らないと読めます。
| お金の種類 | 住民税の課し方 | 読み |
|---|---|---|
| 退職金(退職手当等) | 他の所得と区分して、支払の際に特別徴収(第328条) | 寄附金税額控除の引き先に入らない |
| 退職した年に支払われた給与 | 翌年度の所得割(第313条) | 引き先に入る |
出典:地方税法第313条・第328条・第328条の4・第328条の5・第314条の7(e-Gov、2026年10月3日確認)。表の「読み」は条文の読み合わせで、総務省の明文は確認できていません。総務省は、上限額は収入や他の控除等の状況によるとして、具体的な計算は市区町村への問い合わせを案内しています(よくある質問 Q5)。
所得税の側は、寄附金控除の条文に「総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額」とあります(所得税法第78条1項)。退職所得金額を持つ人の確定申告の扱いは、後の節の国税庁の説明を見てください。
上限額の目安はふるさと納税 上限額計算ツールで出せます。年収の欄には、退職金を除いた、寄附する年に支払われた給与の額を入れてください。
退職した年は、どの所得で上限が決まるか
総務省の説明では、ふるさと納税による税の軽減は「1月~12月」の年単位です(よくある質問 Q4)。退職した年に寄附する場合、上限額の元になるのは、その年の1月から退職までに支払われた給与などです。年の途中で給与が止まるぶん、住民税の所得割は小さくなります。
| 寄附する時期 | 上限額の元になる所得 | 読み方 |
|---|---|---|
| 退職する年の、退職前 | その年に支払われる給与 | 退職までの月数が短いほど、所得割は小さくなる |
| 退職した年の、退職後 | その年に支払われた給与 | 寄附の時期によらず、年の給与の合計で決まる |
| 退職した翌年 | 翌年に支払われる所得 | 無収入なら所得割は0円。控除も0円 |
出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト「よくある質問」Q4・Q5、地方税法第314条の7第1項(e-Gov)、2026年10月3日確認。「読み方」は原文の読み合わせです。退職金は前の節の読みのとおり、この元に入りません。
所得割が小さい年の上限額の考え方は育休中・育休明けのふるさと納税にもまとめています。
ワンストップ特例は使えるか
総務省は、ワンストップ特例の対象を「確定申告の不要な給与所得者等で、寄附先が5団体以内」としています。国税庁は、確定申告をする人は、ワンストップ特例の申請が無効になると説明しています(No.1155)。
年の途中で退職した人は、年末調整の対象になる場合が限られます。国税庁は、年の中途で退職した人のうち、非居住者になった人・死亡退職・著しい心身の障害での退職・12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人・一定額以下のパートタイマーなどを除き、年末調整の対象にならないと説明しています(No.2665)。
| 退職した年の状況 | 確定申告 | ワンストップ特例 |
|---|---|---|
| 再就職して、再就職先で年末調整を受けた | 寄附だけなら不要 | 使える |
| 再就職せず、年末調整を受けていない | 申告して精算する場合は、申告書を出す | 申告するなら無効。寄附も申告に含める |
出典:総務省「よくある質問」Q7、国税庁 No.1155・No.2665(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月3日確認)。確定申告が要る場合は個別の事情で変わります。具体的な申告は税務署または税理士にご確認ください。
退職金を受け取った年に、寄附金控除のために確定申告をするときは、国税庁が「確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります」と説明しています(No.1420)。退職所得の受給に関する申告書を出していれば、退職金そのものは源泉徴収で終わります。確定申告が要るかどうかは年の途中で退職したら確定申告は必要?に、申告書の出し方は退職所得の受給に関する申告書にまとめています。
確定申告に切り替えるときの期限はワンストップ特例の期限と過ぎたときにあります。
翌年の住民税との関係
住民税の所得割は、前年の所得をもとに決まります(地方税法第313条1項)。退職した翌年に無収入でも、退職した年の給与をもとにした住民税が、翌年の6月からかかります(退職金の住民税は、支払のときに引かれた分で済んでいます)。
ふるさと納税の住民税分は、総務省の説明で「翌年度の住民税から控除」です。つまり、退職した年に寄附した分は、無収入になる翌年の住民税の減額に使われます。引ける額は、退職した年の給与などで決まる所得割が限度です(第314条の7第1項)。
退職後の住民税が、いつ・いくら請求されるかは退職時の住民税の計算ツールで目安を出せます。
寄附しすぎると何が起きるか
総務省の説明では、住民税の特例分は住民税所得割額の2割が限度です。この限度を超えると、所得税・住民税の控除を合計しても(ふるさと納税額-2,000円)の全額は控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。
退職した年に起きやすい場面
退職金の額に合わせて寄附額を決めると、控除の元になる所得割を超えやすくなります。控除額が所得割の額を超えるときは、所得割の額に相当する金額までです(地方税法第314条の7第1項)。退職金は、読みのとおり引き先に入りません。
具体的な上限額は、総務省が市区町村の住民税担当への問い合わせを案内しています。やり方そのものは会社員のふるさと納税のやり方に、住宅ローン控除がある年の見方は住宅ローン控除とふるさと納税の併用にあります。
よくある質問
Q. 退職金をもらった年は、ふるさと納税の上限額が増えますか?
A. 増えないと読めます。退職金は、支払われるときに住民税が特別徴収される分離課税で(地方税法第328条の4・第328条の5)、寄附金税額控除の引き先の「第三百十四条の三…を適用した場合の所得割の額」には入らないためです。総務省は、上限額は収入や他の控除等の状況によると説明しています(よくある質問 Q5)。実際の額は、市区町村にご確認ください。
Q. 退職した年に寄附すると、いつの住民税から引かれますか?
A. 寄附した翌年度の住民税の所得割から引かれます(総務省「税金の控除について」)。退職した年に寄附した分は、退職した翌年の6月からの住民税が減る形です。引ける額は、寄附した年(退職した年)の給与などで決まる所得割が限度です(地方税法第314条の7第1項)。
Q. 年の途中で退職しました。ワンストップ特例は使えますか?
A. 確定申告の不要な給与所得者等が対象で、確定申告をする人はワンストップ特例の申請が無効になります(総務省・国税庁 No.1155)。年の中途で退職した人は、年末調整の対象になる場合が限られます(国税庁 No.2665)。年末調整を受けず確定申告をする年は、ふるさと納税も確定申告に含めます。
Q. 退職して再就職しない年でも、ふるさと納税はできますか?
A. できます。総務省は、ふるさと納税を行う時期や自治体に制限はないと説明しています(よくある質問 Q2・Q4)。ただし、その年に給与などの所得が少ないと、住民税の所得割も小さくなり、控除しきれない寄附額が出やすくなります。
Q. 退職金から住民税が引かれているので、寄附の控除で戻りますか?
A. 戻らないと読めます。分離課税の退職手当等の所得割は、地方税法第328条により、第314条の3を適用した所得割とは別に課されるためです。寄附金税額控除は、第314条の3を適用した所得割の額から引く形です(第314条の7第1項)。この点は条文の読み合わせで、総務省の明文は確認できていません。
Q. 退職金を受け取った年にふるさと納税を確定申告するときは、何が増えますか?
A. 国税庁は、寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があると説明しています(No.1420)。退職所得の受給に関する申告書を出していれば、退職金そのものについては、原則として確定申告は要りません。
Q. 上限額ツールには、何を入れればいいですか?
A. 年収の欄には、寄附する年に支払われた給与(退職金を除く)の額を入れてください。ツールは他の控除がない場合の目安で、退職金の入力欄はありません。退職した年の上限額は、お住まいの市区町村にご確認ください。
参考・出典
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト - 税金の控除について・よくある質問(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.2665 年末調整の対象となる人(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 地方税法(第313条 所得割の課税標準、第314条の7 寄附金税額控除、第328条 退職所得の課税の特例)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 所得税法(第78条 寄附金控除)(2026年10月3日確認)
※ふるさと納税の上限額は、収入や他の控除等の状況により異なり、実際の上限額は、お住まいの市区町村の計算によります。本文の「読み」は条文の読み合わせです。具体的な申告は税務署または税理士にご確認ください。