会社員が独立すると社会保険はいくら変わるか

会社員とフリーランスでは、払う制度も、払う額も、受け取れる給付も入れ替わります。 年収帯ごとにいくら変わるのかを、公表されている料率だけで計算しました。

先に結論

会社員が給与から払っているもの

給与明細から引かれている社会保険料は4種類です。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、 そして40歳以上65歳未満の人は介護保険料が加わります。 健康保険料と厚生年金保険料は、額面そのものではなく標準報酬月額という等級表の金額に料率をかけて決まります。

  • 健康保険料 9.85%+子ども・子育て支援金 0.23%(労使合計。本人負担はこの半分)
  • 厚生年金保険料 18.3%(労使合計。本人負担はこの半分)
  • 雇用保険料 0.5%(本人負担分。会社負担分は別にあります)
  • 介護保険料 1.62%(40歳以上65歳未満のみ。労使合計)

料率は協会けんぽ東京支部・令和8年度のものです。 年収500万円・単身・40歳未満なら、本人負担の合計は年723,144円になります。

会社が払っているもの

健康保険料と厚生年金保険料は労使折半です。給与明細に載っているのは半分だけで、 同じ額をもう半分、会社が払っています。年収別の会社負担は次のとおりです。

  • 年収300万円 → 会社負担 年442,728円(本人負担 年457,728円)
  • 年収400万円 → 会社負担 年578,952円(本人負担 年598,944円)
  • 年収500万円 → 会社負担 年698,148円(本人負担 年723,144円)
  • 年収700万円 → 会社負担 年1,004,652円(本人負担 年1,039,644円)
  • 年収1,000万円 → 会社負担 年1,215,684円(本人負担 年1,265,676円)

さらに労災保険料は全額が会社負担で、雇用保険料にも会社負担分があります。 独立するとこの負担は誰も肩代わりしてくれません。国民年金にも国民健康保険にも労使折半の仕組みがないからです。

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フリーランスが払うもの

厚生年金は国民年金に、健康保険は国民健康保険に置き換わります。雇用保険と労災保険は、原則として加入できません。

  • 国民年金保険料:月17,920円(令和8年度)。年215,040円。 収入がいくらでも同じ額です。
  • 国民健康保険料:前年の所得に料率をかけた額と、世帯・人数ごとの定額の合計。料率は市区町村が条例で決めます。 全国1,706保険者の中央値は、所得割9.9%+定額66,685円です。
  • 雇用保険はありません。失業給付、育児休業給付、教育訓練給付はいずれも対象外です。
  • 労災保険は原則ありません。一部の業種には特別加入の制度がありますが、自動では入りません。

この表の国民健康保険料は、上の中央値の料率を使った単身世帯の金額です。 自分の市区町村の実際の料率は市区町村別の国民健康保険料で確認できます。

年収帯別の比較表

単身・扶養なし・40歳未満。フリーランス側は経費ゼロ・青色申告特別控除650,000円、 国民健康保険料は全国中央値の料率で計算しています。手取りは額面から社会保険料と税を引いた額です。

年収・売上 会社員 社会保険料 フリー 社会保険料 保険料の差 会社員 税 フリー 税 税の差 会社員 手取り フリー 手取り 手取りの差
300万円 457,728 471,805 +14,077 142,348 190,079 +47,731 2,399,924 2,338,116 −61,808
400万円 598,944 570,805 −28,139 232,827 326,175 +93,348 3,168,229 3,103,020 −65,209
500万円 723,144 669,805 −53,339 334,785 497,496 +162,711 3,942,071 3,832,699 −109,372
700万円 1,039,644 867,805 −171,839 651,680 1,053,832 +402,152 5,308,676 5,078,363 −230,313
1,000万円 1,265,676 1,145,040 −120,636 1,460,111 1,911,494 +451,383 7,274,213 6,943,466 −330,747

単位:円(年額)。「フリー 社会保険料」は国民年金保険料と国民健康保険料の合計です。

保険料は逆転するが、税は逆転しない

社会保険料は年収400万円を境にフリーランスのほうが安くなります。 厚生年金保険料が収入に比例して増え続けるのに対し、国民年金保険料は定額だからです。 一方で税は全ての年収帯でフリーランスのほうが高くなります。 会社員には給与収入に応じた給与所得控除があり、 年収500万円なら1,440,000円が自動で差し引かれます。 これに対してフリーランスが所得から引けるのは、実際に使った経費と青色申告特別控除650,000円です。

つまり経費がほとんどかからない仕事で独立すると、税が増えたぶんだけ手取りが減ります。 逆に、経費が多く発生する仕事なら差は縮みます。経費率を変えたときの手取りは 月単価30万〜100万円の手取り早見表で確認できます。

保険料より大きい差は給付のほう

金額として目に見えるのは保険料ですが、実際の差が大きいのは受け取れる給付のほうです。 会社員が加入していて、フリーランスが加入しない制度には次のものがあります。

  • 老齢厚生年金:厚生年金の上乗せ。国民年金だけの場合、老後に受け取る額は満額でも月70,608円です。
  • 傷病手当金:病気やけがで働けない期間の所得補償。国民健康保険には原則ありません。
  • 出産手当金:産前産後の所得補償。これも国民健康保険には原則ありません。
  • 失業給付・育児休業給付・教育訓練給付:いずれも雇用保険の給付なので対象外です。
  • 労災保険:仕事中のけがの療養・休業補償。特別加入をしない限り対象外です。

年収500万円の会社員なら、会社が年698,148円を負担してこれらの制度を支えています。 独立すると、この698,148円ぶんの原資と、それが買っていた給付がまとめて消えます。 年金の差がいくらになるかはフリーランスの年金で計算しています。

独立1年目がいちばん高くなる理由

国民健康保険料も住民税も、前年の所得をもとに計算されます。 会社員として給与を受け取っていた年の所得で決まった額を、独立して収入が不安定な1年目に納めることになります。 しかも会社員のときは毎月の給与から天引きされていたものが、独立後は自分で納付書を使って払う形に変わります。

独立初年度に用意しておく必要があるのは次の3つです。

  • 前年の給与所得で決まった国民健康保険料(会社を辞めた翌月から発生します)
  • 前年の給与所得で決まった住民税(退職時に一括徴収されていない場合)
  • 毎月定額の国民年金保険料 月17,920円

このうち国民健康保険料については、退職後20日以内に手続きをすれば会社の健康保険を最長2年間続ける 「任意継続」という選択肢もあります。どちらが安いかは所得と自治体で変わるため、 フリーランスの国民健康保険料で4つの下げ方とあわせて整理しています。

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よくある質問

会社員をやめてフリーランスになると社会保険料は上がりますか?

年収300万円では上がります(会社員 年457,728円 → フリーランス 年471,805円)。一方、年収400万円以上では下がります。国民年金保険料が定額(月17,920円)で、収入が増えても増えないためです。青色申告特別控除65万円を使い、経費がゼロ、単身・40歳未満の前提で計算した場合の金額です。

保険料が下がるなら独立したほうが手取りは増えますか?

増えません。給与所得控除がなくなるぶん課税所得が増えるため、税は年162,711円多くなります。年収500万円の場合、手取りは会社員 年3,942,071円に対しフリーランス 年3,832,699円で、109,372円少なくなります。

会社は自分のためにいくら払っていますか?

健康保険と厚生年金の会社負担分だけで、年収500万円なら年698,148円です。本人負担と同額を会社が出しています。このほかに労災保険料は全額が会社負担、雇用保険料にも会社負担分があります。

独立して1年目の負担が重いのはなぜですか?

国民健康保険料も住民税も前年の所得をもとに計算されるためです。会社員として働いていた年の所得で決まった保険料と住民税を、収入が不安定な独立1年目に納めることになります。

出典

※本ページの金額は公表されている料率から機械的に計算した概算です。 実際の保険料・税額は住んでいる市区町村、世帯構成、加入している制度、個別の控除で変わります。 断定的な税務判断は行っていません。正確な金額は市区町村の窓口、税務署、税理士等の専門家にご確認ください。