青色申告特別控除は所得税と住民税だけを下げるものではありません。 国民健康保険料も同じ所得から計算されるため、控除を使うと保険料も下がります。 3つの効果をまとめて金額にしました。
青色申告特別控除は、事業所得を計算する段階で差し引かれます。 そして所得税・住民税・国民健康保険料は、いずれもこの事業所得を出発点にして計算されます。
つまり控除65万円は、所得税率+住民税率10%+国民健康保険の所得割率の合計ぶんだけ負担を減らします。 国民健康保険の所得割率の全国中央値は9.9%なので、これが上乗せされる分だけ効果が大きくなります。 所得500万円の場合、白色申告と比べた内訳は次のとおりです。
「所得」は売上から経費を引いた額(青色申告特別控除を引く前)です。 単身・扶養なし・40歳未満、国民年金保険料は年215,040円で共通のため表から除いています。 国民健康保険料は全国1,706保険者の市町村標準保険料率の中央値 (所得割 9.9% + 定額 66,685円)で計算しています。
| 所得 | 白色申告(控除なし) | 青色申告 65万円控除 | 55万円控除 との差 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 所得税 | 住民税 | 国保 | 合計 | 所得税 | 住民税 | 国保 | 合計 | ||
| 200万円 | 26,648 | 115,700 | 222,115 | 364,463 | 0 | 57,200 | 157,765 | 214,965 | −129,220 |
| 300万円 | 72,644 | 205,800 | 321,115 | 599,559 | 42,779 | 147,300 | 256,765 | 446,844 | −129,220 |
| 400万円 | 137,732 | 295,900 | 420,115 | 853,747 | 88,775 | 237,400 | 355,765 | 681,940 | −148,312 |
| 500万円 | 297,621 | 386,000 | 519,115 | 1,202,736 | 169,996 | 327,500 | 454,765 | 952,261 | −222,386 |
| 600万円 | 481,605 | 476,100 | 618,115 | 1,575,820 | 362,148 | 417,600 | 553,765 | 1,333,513 | −205,029 |
| 700万円 | 675,799 | 566,200 | 717,115 | 1,959,114 | 546,132 | 507,700 | 652,765 | 1,706,597 | −215,239 |
| 800万円 | 859,784 | 656,300 | 816,115 | 2,332,199 | 740,327 | 597,800 | 751,765 | 2,089,892 | −205,029 |
| 1,000万円 | 1,284,234 | 844,900 | 930,000 | 3,059,134 | 1,131,594 | 779,900 | 930,000 | 2,841,494 | −184,157 |
単位:円(年額)。右端は「白色申告と青色55万円控除の差」です。白色と65万円控除の差は次のとおりです。
| 所得 | 10万円控除との差 | 55万円控除との差 | 65万円控除との差 | うち国保の減少分 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 23,495 | 129,220 | 149,498 | 64,350 |
| 300万円 | 23,495 | 129,220 | 152,715 | 64,350 |
| 400万円 | 28,089 | 148,312 | 171,807 | 64,350 |
| 500万円 | 37,278 | 222,386 | 250,475 | 64,350 |
| 600万円 | 37,278 | 205,029 | 242,307 | 64,350 |
| 700万円 | 37,278 | 215,239 | 252,517 | 64,350 |
| 800万円 | 37,278 | 205,029 | 242,307 | 64,350 |
| 1,000万円 | 33,483 | 184,157 | 217,640 | 0 |
単位:円(年額)。いずれも白色申告と比べた減少額です。 所得300万円でも年152,715円、所得500万円なら年250,475円の差になります。
2027年分から控除は最大75万円 — 要件が変わる前に何を用意するか
青色申告特別控除は3段階あります。まず55万円控除の要件は次のとおりです。
65万円控除は、上の55万円の要件に加えて、次のどちらかに該当することが必要です。
複式簿記による記帳をしていない場合の控除額は10万円です。 また、現金主義による所得計算の特例を選んでいる場合は55万円・65万円の控除を受けられません。 青色申告をするには、あらかじめ「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。
青色申告特別控除の前に引くのが経費です。経費は事業のために使った支出で、 売上から差し引いて所得を計算します。経費が増えれば所得が減り、税も国民健康保険料も下がります。
ただし経費は実際に支払ったお金なので、経費を増やしても手元に残る金額は増えません。 10万円の支出をして税と保険料が3万円減っても、差し引き7万円は出ていきます。 経費の役割は「手取りを増やすこと」ではなく「事業に必要な支出を課税所得から正しく除くこと」です。
自宅を仕事場にしている場合の家賃・光熱費のように、事業と生活の両方に関わる支出は、 事業に使っている割合で按分して経費にします。按分の根拠(使用面積や使用時間)を説明できる形で記録しておく必要があります。 経費率を変えたときに手取りがどう動くかは月単価別の手取り早見表で確認できます。
確定申告は、1月1日から12月31日までの所得について翌年2月16日から3月15日までに行い、所得税を納めます。 65万円控除は「期限内に提出すること」が要件なので、1日でも遅れると控除額が下がります。
期限を過ぎた場合は期限後申告として扱われ、納める税金のほかに無申告加算税がかかります。割合は申告のタイミングで変わります。
さらに、前年および前々年の所得税について無申告加算税等が課されたことがある場合には、10%が加算されます。 国民健康保険料も所得の申告をもとに決まるため、申告をしないと軽減の判定ができず、保険料の面でも不利になります。
法人にすれば国保料は下がるのか — 相談で何を聞かれて、どこから費用がかかるか
下げます。国民健康保険料の所得割は、青色申告特別控除を引いたあとの所得をもとに計算されるためです。所得500万円の場合、65万円控除によって国民健康保険料は年64,350円下がります。所得税・住民税の186,125円と合わせると、合計で年250,475円の差になります。
55万円控除の要件(事業所得または不動産所得があること、複式簿記で記帳していること、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に提出すること)を満たしたうえで、「優良な電子帳簿の要件を満たして仕訳帳・総勘定元帳を電子データで保存し届出書を提出する」か、「確定申告書・貸借対照表・損益計算書等を期限までにe-Taxで提出する」のいずれかに該当する必要があります。
所得500万円の場合、白色申告との差は55万円控除で年222,386円、65万円控除で年250,475円です。差額は28,089円で、e-Taxで提出するか電子帳簿を保存するかの違いだけで生じます。
期限後申告として扱われ、納める税金のほかに無申告加算税がかかります。税務署の調査の事前通知の前に自主的に申告した場合は5%、事前通知の後で調査による決定を予知する前の申告は50万円までの部分が10%、50万円超300万円までが15%、300万円超が25%、調査を受けた後の申告や決定は50万円までが15%、50万円超300万円までが20%、300万円超が30%です。
※金額は公表されている料率から機械的に計算した概算です。 実際の税額・保険料は住んでいる市区町村、世帯構成、個別の控除(社会保険料控除以外の各種控除)で変わります。 断定的な税務判断は行っていません。正確な取り扱いは税務署または税理士等の専門家にご確認ください。