収入保障保険は必要?遺族年金でいくら出るかを先に見る|会社員の死亡退職金・団信で足りる部分、必要保障額、定期保険との違い、保険料控除の対象か
収入保障保険が要るかどうかは、遺族年金・会社の死亡退職金・住宅ローンの団信・貯蓄を差し引いても、残された家族の生活費に不足が出るかで決まります。会社員が在職中に亡くなると、要件を満たせば、子のいる配偶者には遺族基礎年金(年額847,300円+子の加算)と遺族厚生年金が出ます。この記事は、会社に勤めている方が、保険を考える前に何が出るかを数える順番で、原典をもとに整理したものです。特定の保険商品や保険会社をすすめるものではありません。
収入保障保険が要るかを決める順番
生命保険文化センターの説明では、収入保障保険は、一定の保険期間内に死亡した場合、それ以後、契約時に定めた満期まで年金が受け取れる保険です。満期保険金はありません。年金で受け取るので、「家族が毎月いくら足りなくなるか」から決める考え方と相性がよい保険です。
契約の前に、次の順に数えます。
- 1. 遺族年金:国の制度から、家族の形に応じて出る額。会社員は厚生年金に入っているので、国民年金だけの人より出る額が増えます。
- 2. 会社の死亡退職金:会社の退職金規程などに定めがあれば出ます。会社によって違うので、規程で確かめます。
- 3. 住宅ローンの団信:団信に入っているローンは、亡くなったときの残りの返済が保険金で充てられます。
- 4. 貯蓄と、配偶者の収入:すぐ使える預貯金と、配偶者が働いて得る収入。
- 5. 残りの不足:1〜4を引いても生活費に足りない分が、保険で備えるかどうかを考える部分です。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2025年度)では、公的な死亡保障制度で大部分を「まかなえるとは思わない」人が66.3%、「まかなえると思う」人が24.0%でした。自分が亡くなったときのために私的に準備している人は74.8%で、手段は「生命保険」が60.2%、「預貯金」が44.1%でした。
この記事の前半は、1〜3を原典で数える部分です。5は、後半の必要保障額の考え方で扱います。
遺族年金は家族の形でいくら出るか
会社員(厚生年金の被保険者)が亡くなったときは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つを見ます。額は日本年金機構の令和8年4月分からの金額です。
| 家族の形 | 遺族年金の目安の出し方 | 保険で補う部分 |
|---|---|---|
| 18歳になった年度の3月31日までの子がいる配偶者 | 遺族基礎年金847,300円+子の加算(1・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)に、遺族厚生年金(報酬比例部分の4分の3)を足す | 末子が18歳年度末になるまでの、生活費との差と教育費 |
| 子が18歳年度末を過ぎた後の妻(40歳〜65歳) | 遺族基礎年金は終わる。遺族厚生年金に中高齢寡婦加算635,500円が加わる(40歳に達した当時、子がいて遺族基礎年金を受けていた妻。夫の死亡時に40歳以上で子がいない妻も対象) | 65歳になるまでの、生活費との差 |
| 子のいない夫婦 | 遺族基礎年金は出ない。遺族厚生年金のみ。子のない30歳未満の妻は5年間、夫は55歳以上で60歳から | 配偶者の収入と貯蓄で足りるか。2028年4月以降の死亡は見直し後のルール |
| 生計を維持されていた遺族がいない独身 | 遺族年金は出ない。父母は55歳以上で60歳から | 守りたい相手がいるか、葬儀費用などの備えを別に考える |
※日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(ともに更新日2026年6月22日)と、国民年金法第37条・第37条の2、厚生年金保険法第58条〜第63条(e-Gov法令検索、2026年10月1日施行時点)で、2026年10月3日に確認しました。2028年4月1日以後に配偶者が亡くなった場合は、見直し後のルールが適用されます。
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です(厚生年金保険法第60条第1項第1号)。在職中の死亡など、被保険者であるうちに亡くなった場合は、被保険者期間が300月(25年)に満たなくても300月とみなして計算します。そのため、若くして亡くなった場合も、300月分で計算した額になります。
遺族になれるのは、亡くなった方に生計を維持されていた人です(同法第59条)。夫、父母、祖父母は55歳以上であることも条件です。日本年金機構の用語集では、生計維持は原則として、生計を同じくしていることと、前年の収入が850万円未満(所得が655万5千円未満)であることの両方とされています。
遺族年金の見直し(2028年4月1日施行)の内容は遺族年金の改正は何が変わる?に、年齢と子の人数から額を出す計算は遺族年金はいくら? 計算ツールにまとめています。
会社員は遺族年金のほかに何が出るか:死亡退職金と団信
死亡退職金:退職金の規程に死亡時の定めがある会社では、遺族に支給されます。ない会社もあるので、規程か総務・人事の担当者に確かめます。税金は、国税庁のタックスアンサーNo.4117によると、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金等は相続税の対象で、相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。
住宅ローンの団信:団体信用生命保険は、ローンの契約者が亡くなったときなどに、残りの返済に保険金が充てられる仕組みです。たとえば住宅金融支援機構のフラット35の団信は、加入者が死亡・所定の身体障害状態になった場合などに、以後の債務の返済が不要になります。民間の住宅ローンは金融機関や商品によって保障の範囲が違うので、契約書か金融機関の案内で確かめます。団信に入っているローンの残りは、遺族の生活費の不足から外して考えるのが一般的です。
遺族年金に加えて、これらを引いたあとに不足が残るかどうかが、収入保障保険を考える出発点です。死亡退職金も団信もなく、貯蓄も少ない家庭ほど、不足は大きくなります。
必要保障額の考え方と試算の例
必要保障額は、遺族がこれから必要とする生活費の総額から、遺族年金・死亡退職金・貯蓄などを引いた、保険で備える不足の額です。ポイントは時間とともに減ることです。
- 子の年齢:末子が18歳年度末になるまでは、遺族基礎年金と子の加算が出ます。その後は遺族基礎年金が終わる一方、子の生活費と教育費も減っていきます。
- 配偶者の収入:共働きや、遺族が働ける状況であれば、不足は小さくなります。専業の場合は、働き始めるまでの期間を見込みます。
- 住まい:持ち家で団信に入っている場合は、住居費の負担が小さくなります。賃貸の場合は家賃が続きます。
収入保障保険は、保険金が年金で出るので、この「減っていく不足」に近い形で準備できるのが特徴です。子と配偶者の年齢、生活費、貯蓄を入れて必要保障額の総額を出すには、子2人・年収500万円の必要保障額(生命保険の必要保障額 計算機)をお使いください。
ここでは、月々の不足を見る試算を1例だけ示します。
| 期間 | 遺族年金(月額) | 生活費の目安との差(月額) |
|---|---|---|
| 末子が18歳年度末まで(13年間) | 15.4万円 | 生活費の目安17.5万円に対し、不足2.1万円 |
| その後〜妻が65歳になるまで(妻48歳〜) | 9.6万円 | 生活費の目安12.5万円に対し、不足2.9万円 |
※当サイトの試算。前提は、会社員の夫が年収500万円で在職中に亡くなり、妻35歳(専業・収入なし)、子2人(末子5歳)。遺族厚生年金は年収÷12を平均標準報酬額とみなし、被保険者期間を300月とみなした概算です(実際の額は加入記録で変わります)。現在の月の生活費を25万円とし、子が18歳年度末までは70%、その後は50%を必要な生活費の目安にしました。この比率は保険の必要保障額の試算で一般に使われる目安で、公的な数値ではありません。教育費、住宅費の増減、葬儀費用、貯蓄、妻の収入、妻の65歳以降の年金は含めていません。
この前提では、遺族年金で生活費の目安の大部分が出る計算になりました。一方で、教育費や住宅費を含めた不足は、家計によって大きく変わります。不足の中身を知ってから、必要な保険金額(収入保障保険なら年金月額)を決める順番になります。
収入保障保険と定期保険の違い
生命保険文化センターの説明では、定期保険は、保険期間内に死亡した場合に死亡保険金を受け取れる保険で、受け取り方には一時金と年金の2つがあります。年金で受け取るタイプは、一般的には収入保障保険という名称で販売されています。違いは受け取り方です。
| 項目 | 収入保障保険 | 定期保険(一時金) |
|---|---|---|
| 受け取り方 | 亡くなった後、満期まで年金(毎月のものが多い) | 死亡保険金を一時金で |
| 受け取る総額 | いつ亡くなるかで変わる。受取回数には最低保証(2年・5年など) | 定額型は保険期間中ずっと同じ。逓減型は減っていく |
| 満期保険金・貯蓄性 | 満期保険金なし。解約返戻金は多くの場合あまりない | 満期保険金なし。貯蓄性なし |
※生命保険文化センター「生命保険の種類」の収入保障保険・定期保険の説明(2026年10月3日確認)。商品によって取り扱いは異なります。
収入保障保険には、年金に代えて一時金で受け取れるものがあります。ただし一時金は年金現価相当額となり、年金で受け取る総額より少なくなります。一方、定期保険の「逓減型」は、経過年数に応じて保険金額が減るため、子どもの成長で減る必要保障額に合わせやすい、と同じ説明にあります。
月々の不足を埋めたいなら年金、住宅の頭金や葬儀費用のようにまとまった額が必要なら一時金、という見方になります。どちらが合うかは、前のセクションの不足がどんな形で出るかで決まります。
保険料は生命保険料控除の対象か、保険金に税金はかかるか
保険料:国税庁のタックスアンサーNo.1141では、生命保険料控除の対象となる生命保険契約等として、生命保険会社などと締結した、生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約を挙げています。ただし、保険金の受取人のすべてが保険料を払う人かその配偶者その他の親族であること、保険期間が5年未満の貯蓄保険などは対象外であることが条件です。収入保障保険の語は国税庁の説明に出てきません。自分の契約が対象かは、保険会社から届く生命保険料控除証明書に生命保険料として記載されているかで確かめられます。
控除額は、平成24年1月1日以後に締結した契約(新契約)の一般の生命保険料の場合、年間の支払保険料が8万円を超えると一律4万円です。介護医療保険料・個人年金保険料と合わせた生命保険料控除の合計は、12万円が上限です(タックスアンサーNo.1140)。令和8年分と令和9年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合は、新生命保険料の控除額が最高6万円になります(租税特別措置法第41条の15の5)。年末調整での書き方は生命保険料控除証明書の見方、23歳未満の特例は生命保険料控除の23歳未満の特例、戻る額の計算は生命保険料控除でいくら戻るで確かめられます。
保険金:受け取るときの税金は、保険料を誰が負担し、誰が受け取るかで決まります(タックスアンサーNo.1750)。
| 誰が保険料を払い、誰が受け取るか | 税金の種類 | 年金で受け取るとき |
|---|---|---|
| 保険料の負担者と受取人が同じ人(被保険者は別) | 所得税 | 公的年金等以外の雑所得(一時金なら一時所得) |
| 被保険者と保険料の負担者が同じ人(亡くなった本人が払い、家族が受け取る) | 相続税 | 年金を受け取る権利に課税 |
| 被保険者・保険料の負担者・受取人がすべて別 | 贈与税 | 年金を受け取る権利に課税 |
※国税庁タックスアンサーNo.1750・No.4114(令和8年4月1日現在法令等)で、2026年10月3日に確認しました。相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります(No.4114)。年金で受け取る場合の所得税の計算や源泉徴収は、No.1750に記載されています。個別の事情は税務署にご確認ください。
生命保険に世帯でいくらかけているかの平均は生命保険料の平均はいくらにあります。
よくある質問
Q. 遺族年金は、会社員が亡くなれば必ずもらえますか?
A. 必ずではありません。遺族基礎年金は、亡くなった方の保険料納付済期間と免除期間が加入期間の3分の2以上あることが原則です(国民年金法第37条)。令和18年3月末までの死亡で65歳未満なら、直近1年に未納がなければよい特例があります(日本年金機構)。遺族の側にも条件があり、遺族基礎年金は18歳になった年度の3月31日までの子と生計を同じくする配偶者か子が対象です(同法第37条の2)。
Q. 共働きで配偶者に収入がある場合、遺族年金は出ますか?
A. 遺族は、亡くなった方に生計を維持されていたことが条件です(厚生年金保険法第59条)。日本年金機構の用語集では、生計維持は原則として、生計を同じくしていることと、前年の収入が850万円未満(所得が655万5千円未満)であることの両方を満たす場合とされています。収入が850万円未満であれば、収入があること自体は妨げになりません。ただし、実際の認定は日本年金機構が個別に行います。
Q. 子がいない夫婦の場合も、遺族年金は出ますか?
A. 遺族基礎年金は、18歳到達年度末までの子がいなければ出ません(国民年金法第37条の2)。遺族厚生年金は、会社員が在職中に亡くなったなど一定の要件で、子のない妻に出ます。ただし日本年金機構の案内では、子のない30歳未満の妻は5年間のみです(厚生年金保険法第63条第1項第5号イ)。子のない夫は55歳以上の場合に限られ、受給開始は60歳からです。2028年4月1日以後の死亡は、見直し後のルールが適用されます。
Q. 収入保障保険の保険金に税金はかかりますか?
A. 誰が保険料を負担し、誰が受け取るかで税金の種類が変わります。国税庁のタックスアンサーNo.1750では、保険料の負担者と受取人が同じ人のときは所得税(年金で受け取れば公的年金等以外の雑所得)、被保険者と保険料の負担者が同じ人のときは相続税、被保険者・保険料の負担者・受取人がすべて別のときは贈与税とされています。個別の事情は税務署や税理士にご確認ください。
Q. 収入保障保険の保険料は、年末調整で控除できますか?
A. 国税庁は、生命保険料控除の対象となる生命保険契約等を、生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる契約などとして説明しています(タックスアンサーNo.1141)。保険期間が5年未満の貯蓄保険などは対象外です。個別の契約が対象かどうかは、保険会社から届く生命保険料控除証明書に生命保険料として記載されているかで確かめられます。
参考・出典
- 日本年金機構:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)・遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)・年金用語集「生計維持」
- e-Gov法令検索:国民年金法(第37条・第37条の2・第38条・第39条)・厚生年金保険法(第58条〜第63条)
- 国税庁 タックスアンサー:No.1140 生命保険料控除・No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等・No.1750 死亡保険金を受け取ったとき・No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金・No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
- 公益財団法人生命保険文化センター:収入保障保険・定期保険・自分が死亡したときのためにどう備えている?(生活保障に関する調査 2025年度)
- 住宅金融支援機構 フラット35 新機構団体信用生命保険制度
※2026年10月3日現在に日本年金機構・国税庁・e-Gov・生命保険文化センター・住宅金融支援機構で確認した内容で、制度や金額は変わることがあります。遺族年金の額は概算で、実際の額は加入記録で決まります。特定の保険商品・保険会社を推奨するものではありません。個別の事情は、年金事務所・税務署・加入している保険会社にご確認ください。