就業不能保険は必要?会社員は傷病手当金と障害年金を先に数える|働けない期間の収入、公的保障が終わった後と住宅ローンの団信、保険料控除の区分

就業不能保険が要るかどうかは、病気やけがで働けない間に、傷病手当金と障害年金を数えても、生活費と返済に不足が出るかで決まります。会社員は健康保険から、休業前の給与の約3分の2にあたる傷病手当金が、支給を始めた日から通算1年6か月まで出ます。この記事は、会社に勤めている方が、保険を考える前に働けない期間の収入を数える順番で、原典をもとに整理したものです。特定の保険商品や保険会社をすすめるものではありません。

就業不能保険が要るかを決める順番

生命保険文化センターの説明では、就業不能保障保険は、病気やけがで所定の就業不能状態が所定の期間続いたときに、一時金や年金、月払いの給付金などを受け取れる保険です。就業不能状態になってから60日間などの支払対象外期間が過ぎたあとに給付金を受け取るタイプが一般的で、「所定の就業不能状態」や「所定の期間」は商品によって違います。

契約の前に、次の順に数えます。

  • 1. 有給休暇と会社の制度:最初の3日間と、その後の休みで給与が出るか。休職の規程や、健保組合の付加給付(金額の上乗せや期間の延長)は、会社の就業規則と加入している健保で確かめます。
  • 2. 傷病手当金:会社員の健康保険から出る、給与の約3分の2。最長で通算1年6か月です。
  • 3. 障害年金:傷病手当金が終わっても障害の状態が続くときの年金。等級に当たるかが条件です。
  • 4. 貯蓄と、家族の収入:すぐ使える預貯金と、配偶者が働いて得る収入。
  • 5. 毎月の固定費:住宅ローンや家賃、教育費。団信が働けない間の返済を肩代わりするかは契約で確かめます。
  • 6. 残りの不足:1〜5を引いても足りない月数と金額が、保険で備えるかを考える部分です。

この記事は、2と3を原典で数える部分と、6を考える材料を扱います。傷病手当金の申請手続きは傷病手当金の支給条件・支給額の計算と申請方法、日額と総額の計算は傷病手当金 計算機にあります。

働けない期間ごとに、公的保障でいくら出るか

会社員(健康保険の被保険者)が、業務外の病気やけがで働けなくなったときの、期間ごとの公的保障です。

働けない期間公的保障根拠
最初の3日間(待期) 傷病手当金は出ない。有給休暇なら給与が出る 健康保険法第99条第1項、協会けんぽ
4日目から通算1年6か月 傷病手当金。1日あたり、直近12か月の標準報酬月額の平均÷30の3分の2 健康保険法第99条第2項・第4項
休んだ日に給与が一部出る 給与が傷病手当金より少ないときは、その差額が出る 健康保険法第108条第1項
退職したあとも続く 資格を失った日の前日まで1年以上の被保険者で、傷病手当金を受けているなら続けて出る 健康保険法第104条
1年6か月を過ぎても働けない 傷病手当金は終わる。障害の等級に当たれば障害年金 健康保険法第99条第4項、国民年金法第30条

※e-Gov法令検索(2026年10月1日施行時点)と、協会けんぽ「傷病手当金」で、2026年10月3日に確認しました。傷病手当金の対象は、業務外の病気やけがの療養のために仕事に就けず、連続する3日間を含み4日以上休み、休んだ期間の給与が出ない(または傷病手当金より少ない)場合です。任意継続被保険者の期間中に発生した病気やけがは対象外です。業務上や通勤中の病気・けがは労災保険の対象で、労災保険の休業補償給付を見ます。

仕事に就けない状態かどうかは、療養担当者の意見などをもとに、被保険者の仕事の内容を考慮して判断される、と協会けんぽは説明しています。同じ病気で何度か休むときも、受け取れる期間は通算で1年6か月です。

月給30万円の傷病手当金の試算

額の決まり方は健康保険法第99条第2項に書かれています。ここでは、直近12か月の標準報酬月額がずっと30万円の会社員が、病気で休んだ場合を1例だけ示します。

項目計算結果
標準報酬日額30万円(12か月の平均)÷3010,000円
1日の傷病手当金10,000円×3分の26,667円
1か月(30日)分6,667円×30日約20.0万円
通算1年6か月分1か月分×18か月約360万円

※当サイトの試算。前提は、標準報酬月額が12か月とも30万円、休業中の給与は0円、1か月を30日として18か月分を足した概算です。実際の日数は暦で数え、額は加入記録や健保組合の付加給付で変わります。休業中の社会保険料や住民税の扱いは、会社や加入している健保にご確認ください。

この前提では、給与30万円に対して、傷病手当金は月に約20.0万円です。差の約10.0万円が、毎月の収入の減り方になります。この差を、貯蓄・家族の収入・固定費の見直しで埋められるかが、保険を考える出発点です。傷病手当金は健康保険法第62条により、課税の対象になりません。

傷病手当金が終わったあとは障害年金

傷病手当金は通算1年6か月で終わります。働けない状態が続くときの公的保障は障害年金で、会社員は、初診日に厚生年金に加入していれば、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が対象になります。障害の程度の判定日(障害認定日)は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日で、その期間内に治ったときはその日です(国民年金法第30条、厚生年金保険法第47条)。

障害の等級年金額(令和8年4月分から)対象
1級 障害基礎年金1,059,125円+子の加算。障害厚生年金は報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額243,800円 基礎と厚生の両方
2級 障害基礎年金847,300円+子の加算。障害厚生年金は報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額243,800円 基礎と厚生の両方
3級 障害厚生年金のみ。報酬比例の年金額(最低保障635,500円) 厚生年金に加入していた方

※日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(ともに更新日2026年4月1日)で、2026年10月3日に確認しました。昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子の加算は2人目までが各243,800円、3人目以降が各81,300円で、生計を維持されている子(18歳になった後の最初の3月31日までの子など)がいるときに付きます。配偶者の加給年金額は、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときです。報酬比例部分は、厚生年金の加入期間が300月未満なら300月とみなして計算します。

受け取るには、初診日の前日までの納付要件があります。初診日がある月の前々月までの加入期間の3分の2以上で保険料が納付または免除されていること。ただし初診日が令和18年3月末日までで、初診日に65歳未満なら、直近1年に未納がなければ足ります。障害厚生年金は、初診日に厚生年金の被保険者であったことも条件です。障害年金は国民年金法第25条・厚生年金保険法第41条第2項により、課税の対象になりません。

注意したいのは、「働けない」ことと「障害の等級に当たる」ことは、別の基準で判断される点です。傷病手当金を受けている間も、障害年金の等級に当たるとは限りません。等級に当たらない場合、傷病手当金が終わった後の収入は、貯蓄・家族の収入・復職後の給与で支えることになります。額を試算するには障害年金はいくら? 計算ツールがあります。

公的保障で足りなくなる部分と、住宅ローンの団信

ここまでを数えて不足が残りやすいのは、次の場面です。

  • 傷病手当金の期間中:給与の約3分の2しか出ないので、毎月の収入が減る一方、住宅ローンや教育費などの固定費は続きます。
  • 1年6か月を過ぎたあと:障害年金の等級に当たらないと、公的な所得保障は途切れます。復職できるまでの収入は、貯蓄などで支えます。
  • 最初の3日間:有給休暇が残っていれば給与が出ます。残りが少ないと、短い休みでも収入が減ります。

住宅ローンの団信:団体信用生命保険は、契約者が亡くなったときなどに、残りの返済に保険金が充てられる仕組みです。たとえばフラット35の新機構団信は、死亡・所定の身体障害状態になった場合などに、以後の返済が不要になります。新3大疾病付機構団信は、これに加えて3大疾病が原因で一定の要件に該当した場合や、公的介護保険の要介護2〜5などの状態になった場合も、残りの返済が不要になります。住宅金融支援機構の説明には、「就業不能」という語は出てきません。

民間の住宅ローンの団信は、金融機関や商品によって、保障の範囲や、病気で働けない間の返済の扱いが違います。団信が働けない間の返済まで肩代わりするなら、その分は就業不能保険と重なる部分です。重なる分を外して不足を数えるために、契約書か金融機関の案内で保障の範囲を確かめます。フラット35の団信は、死亡や所定の状態になったときに返済がなくなる仕組みで、働けない間の生活費をまかなうものではありません。

がん・医療保険は入院や通院の費用に備えるもので、働けない間の収入に備える就業不能保険とは目的が違います。がん保険は必要か 計算機・医療保険は必要か 計算機・収入保障保険は必要?でそれぞれ確かめられます。

保険料は生命保険料控除のどの区分か、給付金に税金はかかるか

保険料:国税庁のタックスアンサーNo.1141は、生命保険料控除の対象を、生命保険契約等・介護医療保険契約等・個人年金保険契約等の3つに分けています。介護医療保険契約等は、疾病または身体の傷害等により保険金が支払われる契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金等が支払われるものです。国税庁の説明に「就業不能」という語は出てきません。

どの区分になるか(そもそも対象になるか)は、契約ごとの保障内容で決まります。保険会社から届く生命保険料控除証明書で、区分と金額を確かめるのが確実です。複数の保障が一つの契約に入っている場合は、主たる保障内容に応じて控除が適用されます(No.1140の注)。保険期間が5年未満の貯蓄保険などは対象外です。

控除額は、平成24年1月1日以後に締結した契約(新契約)では、各区分とも年間の支払保険料が8万円を超えると一律4万円です。3つの区分を合わせた生命保険料控除の合計は、12万円が上限です(No.1140)。戻る額の計算は生命保険料控除でいくら戻る、証明書の見方は生命保険料控除証明書の見方で確かめられます。

給付金:所得税法施行令第30条第1号は、生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものを、非課税とされる保険金等の範囲に挙げています。就業不能給付金が、この範囲に当たるかどうかは、給付の条件や受取人によって変わる可能性があります。個別の契約は、保険会社か税務署にご確認ください。

入る前に確かめること

生命保険文化センターの説明をもとにした、契約前の確認点です。商品によって違う部分が多く、ここが保険の中身を決めます。

  • 「就業不能状態」の定義:入院や医師の指示による在宅療養だけか、「国民年金の障害等級1・2級」「公的介護保険の要介護2以上」にも広げているか。在宅療養の条件も会社によって違います。
  • 精神疾患の扱い:対象に含む商品と、除外する商品があります。別の給付や特約にして、受取期間に上限を設けているものもあります。
  • 支払対象外期間:14日・30日・60日・61日・121日・180日などと、商品によって違います。傷病手当金が出る期間とどう重なるかを確かめます。
  • 受取期間と保険期間:就業不能状態が続く間受け取れるものと、6か月・1年などで区切るものがあります。保険期間は年満期(更新で保険料が上がる)か、歳満期です。
  • 給付金の上限:月額5万円程度から取り扱う会社があり、収入などによって上限が決まります。
  • 解約返戻金と保険料の払込免除:解約返戻金がない商品が多いこと、給付金の支払事由に当たると以後の保険料が免除される商品があることも、説明にあります。

これらを、前の節で数えた「傷病手当金が出ている間の不足」と「1年6か月を過ぎたあとの不足」に当てはめて、どちらを備えたいのかを決める順番になります。

よくある質問

Q. 傷病手当金は、会社を休んだ初日から出ますか?

A. 出ません。健康保険法第99条第1項は、労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給すると定めています。協会けんぽの案内では、最初の連続する3日間(待期)には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。

Q. 傷病手当金をもらいながら、障害年金も受け取れますか?

A. 同じ病気やけがで障害厚生年金を受け取れるときは、傷病手当金は原則として支給されません。ただし、障害年金の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法第108条第3項)。額の調整は加入している保険者が行うため、申請時に確かめてください。

Q. 退職したあとも、傷病手当金は続きますか?

A. 資格を失った日の前日まで引き続き1年以上被保険者だった方で、資格を失ったときに傷病手当金を受けているなどの場合は、続けて受けられます(健康保険法第104条)。協会けんぽの案内では、任意継続被保険者や共済組合の組合員だった期間は1年に数えません。また、退職後の継続給付では、いったん仕事に就ける状態になると、その後に再び働けなくなっても支給されません。

Q. 就業不能保険の給付金に、税金はかかりますか?

A. 所得税法施行令第30条第1号は、生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものを、非課税とされる保険金等の範囲に挙げています。就業不能給付金がこれに当たるかは、給付の条件や受取人によって変わる可能性があるため、個別の契約は保険会社か税務署にご確認ください。なお、傷病手当金は健康保険法第62条、障害年金は国民年金法第25条・厚生年金保険法第41条第2項で、課税の対象としないと定められています。

参考・出典

※2026年10月3日現在にe-Gov・協会けんぽ・日本年金機構・国税庁・生命保険文化センター・住宅金融支援機構で確認した内容で、制度や金額は変わることがあります。傷病手当金・障害年金の額は概算で、実際の額は加入記録や加入している健保で決まります。特定の保険商品・保険会社を推奨するものではありません。個別の事情は、加入している健保・年金事務所・税務署・保険会社にご確認ください。

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