個人事業主の消費税はいくらかかるか

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。 原則課税・簡易課税・2割特例で納税額は大きく変わります。売上別の目安と、インボイス登録の影響をまとめました。

先に結論

売上別 消費税額の目安

売上は税込。原則課税は経費率20%(経費がすべて課税仕入と仮定)、簡易課税はサービス業(第五種・みなし仕入率50%)の前提で計算した概算です。

売上(税込・年間)原則課税(概算)簡易課税(第五種)2割特例
500万円 363,636 227,273 90,909
800万円 581,818 363,636 145,455
1,000万円 727,273 454,545 181,818
1,500万円 1,090,909 681,818 272,727
2,000万円 1,454,545 909,091 363,636

単位:円。売上1,000万円未満の行は、基準期間の課税売上高が同水準なら本来は免税ですが、 インボイス登録によって課税事業者になった場合の金額として示しています。

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免税と課税の分岐点

消費税の納税義務は、基準期間(個人事業主はその年の前々年)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで決まります(消費税法第9条)。 前々年の売上が1,000万円以下なら、当年は原則として免税事業者です。

ただし、次のいずれかに当てはまる場合は、売上が1,000万円以下でも納税義務が免除されません。

  • 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合:登録している限り免除されません。
  • 特定期間(前年1月1日〜6月30日)の課税売上高が1,000万円を超える場合:給与等支払額の合計で判定することもできます。
  • 消費税課税事業者選択届出書を提出している場合:自分で課税事業者を選んでいる場合も免除されません。

原則課税・簡易課税・2割特例のしくみ

課税事業者になった場合、納税額の計算方法は3通りあります。

  • 原則課税:売上にかかる消費税額から、実際に支払った経費にかかる消費税額を差し引いて納税額を計算します。 経費の多い事業ほど有利ですが、課税仕入れの記録を細かく残す必要があります。
  • 簡易課税:業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使い、売上にかかる消費税額に(1−みなし仕入率)をかけて納税額を出します。 基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、事前に届出書を提出した場合に選べます。
  • 2割特例:インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった場合の経過措置で、 納税額を売上にかかる消費税額の20%にできます。事前の届出は不要で、確定申告書にその旨を記載するだけです。

簡易課税のみなし仕入率は業種で次のように決まっています。

事業区分みなし仕入率
第1種事業(卸売業)90%
第2種事業(小売業等)80%
第3種事業(製造業・建設業等)70%
第4種事業(その他)60%
第5種事業(サービス業・運輸通信業・金融保険業)50%
第6種事業(不動産業)40%

フリーランスのIT・デザイン・コンサル・ライティング等は、多くが第5種事業(みなし仕入率50%)に区分されます。

2割特例は令和8年分まで、その後は3割特例

2割特例は、インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった事業者向けの時限的な経過措置です。 個人事業者の場合、令和5年分〜令和8年分の消費税の確定申告が対象で、 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが要件です。

令和8年度税制改正により、その後の令和9年分・令和10年分については、 納税額を売上にかかる消費税額の30%にできる「3割特例」が新設されました。 適用要件(個人事業者であること、基準期間の課税売上高が1,000万円以下、インボイス発行事業者の登録を受けていること)は2割特例とほぼ同じです。 いずれの特例も、適用を受けた翌課税期間に簡易課税へ移る場合の届出手続きが緩和されています。

売上500万円の場合、2割特例なら年約90,909円、3割特例なら年約136,364円の納税額になります。 消費税を含めた実際の手取りは月単価別の手取り早見表で確認できます(早見表自体は消費税を含めていません)。

よくある質問

個人事業主の消費税はいくらから発生しますか?

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。ただし適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合は、売上が1,000万円以下でも納税義務は免除されません。

簡易課税はいくら得になりますか?

簡易課税は、みなし仕入率(業種ごとに40〜90%)を使って納税額を計算する方法です。サービス業(第五種、みなし仕入率50%)の場合、売上1,000万円なら簡易課税の納税額は約454,545円です。実際の経費が売上の50%より少ないほど、簡易課税のほうが有利になります。基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合に選べます。

2割特例と3割特例はどう違いますか?

インボイス発行事業者の登録によって免税事業者から課税事業者になった場合の経過措置です。納税額を売上にかかる消費税額の一定割合にできます。個人事業者の場合、2割特例は令和5年分〜令和8年分の申告が対象(納税額は売上税額の20%)で、その後の令和9年分・令和10年分は3割特例(納税額は売上税額の30%)に切り替わります。どちらも基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが要件です(令和8年度税制改正・国税庁公表)。

インボイス登録すると手取りはどれくらい減りますか?

免税事業者のままなら消費税の納税は0円です。登録して課税事業者になると、売上800万円の場合で2割特例なら年約145,455円、3割特例なら年約218,182円の消費税を新たに納めることになり、その分だけ手取りが減ります。取引先が仕入税額控除を必要とする課税事業者かどうかで、登録の要否は変わります。

出典

※金額は経費率20%・サービス業(第五種)の前提で機械的に計算した概算です。 実際の消費税額は業種区分・課税仕入れの実額・届出の有無で変わります。 断定的な税務判断は行っていません。正確な金額は税務署または税理士等の専門家にご確認ください。