年収の壁・支援強化パッケージはいつまで?130万円の事業主の証明は恒久化【2026年10月】
パートで扶養の範囲内に収めたい人に関わるのは、130万円の壁の「事業主の証明による被扶養者認定」です。厚生労働省は2025年10月1日付の通知で、これを「当面の対応ではなく、恒久的な取り扱い」としました。一方、106万円の壁向けのキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日までで、4月1日以降は別のコースに切り替わっています。
支援強化パッケージの対策別・期限の一覧
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、2023年10月に始まった「年収の壁」への当面の対応策です。厚生労働省のページ(2026年10月2日に確認)に載っている対策を、期限の書かれ方で整理しました。
| 対策 | 対象 | 期限 |
|---|---|---|
| 事業主の証明による被扶養者認定(130万円の壁) | 扶養に入るパート・アルバイト | 恒久化(2025年10月1日の通知)。原則、連続2回まで |
| 労働契約の内容による年間収入の判定(130万円の壁) | 被扶養者の認定を受ける人 | 2026年4月1日以降の認定から |
| キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース(106万円の壁) | 事業主 | 2026年3月31日までの取組 |
| キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース | 事業主 | 2026年4月1日以降の取組はこちら。終了日は確認できず |
| 社会保険適用促進手当(106万円の壁) | 新たに社会保険に入る人(標準報酬月額10.4万円以下) | 労働者ごとに最大2年間。制度全体の終了日は確認できず |
※出典:厚生労働省「『年収の壁』への対応」「年収の壁・支援強化パッケージ」、保険課長通知(令和7年10月1日 保保発1001第1号・第3号)、社会保険適用促進手当に関するQ&A。「終了日は確認できず」は、取得した原文に書かれていないという意味です。
助成金は事業主が受け取るもので、パートの人に直接支給されるものではありません。社会保険適用促進手当も、厚生労働省のQ&Aは「政府から労働者に支給されるものではなく、事業主が自らの判断で支給する」と説明しています。パートの人本人に関わるのは、上から2つの、扶養の認定に関する対策です。
130万円の壁:事業主の証明で扶養に残れる条件と出し方
厚生労働省のページによると、人手不足による労働時間の延長などで一時的に年収が130万円以上になった場合、過去の課税証明書・給与明細書・雇用契約書などに加えて「一時的な収入である旨の事業主の証明」を添付すると、原則として連続2回までは引き続き扶養に入り続けることができます。
この取扱いは2023年10月に「当面の対応」として始まりました。保険課長の2025年10月1日付の通知(保保発1001第1号)は、これを「当面の対応ではなく、恒久的な取り扱いとすることとした」と書き、具体的な運用は従来と同様としています。
どんな収入増なら「一時的」と認められるか
| 収入が増えた理由 | 一時的と認められるか | 原文の説明 |
|---|---|---|
| 同僚の休職・退職で業務量が増え、残業した | 想定されるケース | 主に残業手当や臨時の繁忙手当 |
| 受注が好調で事業所全体が忙しかった | 想定されるケース | 突発的な大口案件も同様 |
| 基本給(時給)が上がった | 認められない | 今後も収入が増えることが確実なため |
| 恒常的な手当が新設された、所定労働時間・日数が増えた | 認められない | 同上 |
※出典:事業主の証明による被扶養者認定 Q&A(厚生労働省、令和5年12月25日更新版)Q1-8。
いくらまでなら一時的か、という上限の金額は示されていません。Q&Aは、上限を設けるとそれが新たな「年収の壁」になりかねないこと、収入額だけでは一時的かどうかを判断しにくいことを理由に挙げ、各保険者が雇用契約書などもふまえて判断するとしています。
「連続2回」の数え方
新たに被扶養者として認定を受けるときを含め、被扶養者の収入確認で事業主の証明を使って保険者が確認すると「1回」と数えます。収入確認が年1回なら、連続する2年間の収入確認で使える、という意味です(同Q1-6、Q1-7)。収入確認の頻度が年1回と違う保険者の場合は、加入している健康保険組合などに確認するよう案内されています。勤め先が変わって保険者が変わると、回数は引き継がれず、新しい保険者での収入確認が1回目になります(同Q2-6)。
証明書の書き方と出し方
様式は厚生労働省のページで公開されている「被扶養者の収入確認に当たっての『一時的な収入変動』に係る事業主の証明書」です。様式の記載事項は次のとおりです。
- 被保険者・被扶養者の欄:提出年月日、氏名、被保険者等記号・番号
- 事業主の欄:事業所の所在地・名称・事業主氏名・電話番号、雇用契約等により本来想定される年間収入、人手不足による労働時間延長等が行われた期間、その期間に当事業所で得た収入額(実績額)
出し方は、被扶養者の収入確認のタイミングで、被扶養者を雇う事業主から証明を取得し、被保険者(扶養している人)の勤務先を通じて保険者へ、通常求められる書類と一緒に提出します(同Q3-1)。どの期間の収入について証明が必要かは保険者ごとに異なるので、加入している健康保険組合などに確認してください(同Q3-4)。複数の事業所で働いている場合は、一時的に130万円以上となった主な要因の勤務先から取得します(同Q3-5)。
対象は配偶者に限らず、被扶養者全般で、学生でも同じ取扱いです。60歳以上や一定の障害のある人の基準は180万円未満で、同じ特例が適用されます(同Q2-1、Q2-2、Q2-5)。
2026年4月から変わった、130万円の判定のしかた
2025年10月1日付の別の通知(保保発1001第3号・年管管発1001第3号)で、2026年4月1日以降に認定日がある被扶養者の認定は、一定の条件で労働契約の内容から年間収入を判定することになりました。
- 条件:労働契約で定められた賃金(諸手当・賞与を含む)から見込まれる年間収入が130万円未満で、ほかの収入が見込まれないこと。被保険者と同一世帯の場合は、被保険者の年間収入の2分の1未満であることも条件です
- 確認書類:労働条件通知書など労働契約の内容がわかる書類と、「給与収入のみである」旨の申立て
- 残業代などの臨時収入:労働契約に明確な規定がなく契約段階では見込みにくい時間外労働の賃金は、年間収入の見込額に含めない
- あとで130万円以上になった場合:臨時収入が社会通念上妥当な範囲にとどまるなら、それを理由に扱いを変える必要はない
※出典:保険課長・事業管理課長通知(令和7年10月1日)と、その取扱いに係るQ&A。60歳以上や一定の障害のある人は180万円、被保険者の配偶者以外で19歳以上23歳未満の人は150万円が基準です。
労働契約の内容から年間収入を判定できない場合(「シフト制による」など労働時間の記載が不明確な場合や、契約期間が1年に満たない場合など)は、これまでどおり給与明細書や課税証明書などで判定します。契約の更新や労働条件の変更があるたびに、その内容がわかる書面の提出を求められます。
臨時収入が一時的な収入変動かどうかを確かめるために、保険者が「年収の壁・支援強化パッケージ」の事業主の証明の提出を求めてもよい、とも書かれています(同Q8)。事業主の証明による認定についても、厚生労働省のページに「引き続き利用することができます」と書かれています。
106万円の壁:助成金・手当と、2026年10月の賃金要件撤廃
106万円の壁(勤め先の厚生年金・健康保険に加入して保険料が引かれる壁)への対応は、事業主向けの支援が中心です。
- キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース:厚生労働省のページでは、2026年3月31日までに短時間労働者を新たに被用者保険に適用させ、収入増加の取組を行った事業主が対象です。
- 短時間労働者労働時間延長支援コース:2026年4月1日以降に取組を行う場合は、こちらを使うとされています。リーフレット(令和8年4月版)では、労働者を新たに社会保険に加入させ、週の所定労働時間の延長や賃金の増額を行った事業主に助成し、小規模企業(30人以下)で1人最大75万円とされています。終了日は、取得したページ・リーフレットには書かれていませんでした。
- 社会保険適用促進手当:新たに社会保険に入った人の保険料負担を軽くするため、事業主が出す手当です。標準報酬月額10.4万円以下の人が対象で、手当のうち新たに発生した本人負担分の保険料相当額までは、保険料の算定に使う標準報酬月額に含めません。期間は、労働者ごとに最大2年間です。
※出典:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」、キャリアアップ助成金リーフレット、社会保険適用促進手当に関するQ&A。手当を出すかどうかは事業主の判断で、新たに社会保険の適用となっても手当が出ないことがあります(同Q3-1)。
2026年10月1日の賃金要件撤廃との関係
日本年金機構の案内では、2026年10月1日に「所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件が撤廃されました。週20時間以上、従業員51人以上の企業、学生でない、という条件は変わっていません。詳しくはパートの社会保険の加入条件(2026年10月)にまとめました。
助成金や手当が賃金要件の撤廃後にどう扱われるかを書いた原文は、取得した資料では確認できませんでした。勤め先に助成金や手当の予定があるかどうかは、勤め先に聞くのが確実です。
別の制度:保険料調整制度(2026年10月開始)
日本年金機構は、2026年10月から保険料調整制度を始めました。事業主が被保険者の保険料を一時的に一部追加負担することで、短時間労働者(標準報酬月額12.6万円以下)の健康保険料・厚生年金保険料の負担を、通算3年間軽くする制度です。事業主が追加負担した分は、3か月後の保険料から差し引かれ、最終的に事業主が納付する保険料は増えないと説明されています。
対象になる事業所は、2026年10月以降に「任意特定適用事業所」(従業員50人以下で、労使の合意により短時間労働者を社会保険に加入させる事業所)になった事業所や、2027年10月以降の適用拡大で新たに特定適用事業所となった事業所などです。原文には「支援強化パッケージの後継」とは書かれておらず、別の制度として案内されています。
使えない場合
130万円の壁の「事業主の証明」について、厚生労働省のQ&Aで使えないとされているケースをまとめました。
| ケース | 原文の扱い | 該当Q |
|---|---|---|
| フリーランス・自営業(雇用関係なし) | 対象外 | Q2-3 |
| 基本給・時給の引き上げ、所定労働時間・日数の増加 | 一時的な収入増とは認められない | Q1-8 |
| 年間収入の見込みが恒常的に130万円以上と明らか | 対象外(被扶養者でなくなる) | Q2-1、Q3-6 |
| 勤め先で社会保険の適用要件を満たす | 被保険者になるため被扶養者にならない | Q4-1 |
| 税の扶養控除 | 通常の取扱い(特例は適用されない) | Q4-3 |
※出典:事業主の証明による被扶養者認定 Q&A(厚生労働省、令和5年12月25日更新版)。
フリーランスや自営業の人については、Q&Aは、この特例が事業主の人手不足などに伴う他律的な収入変動を対象とするため、特定の事業主と雇用関係にない場合は対象にならないとしています。ただし、自営業の収入と勤務先の給与の両方がある人が、給与の一時的な増加で基準額を超えた場合は対象になります。個人事業主の扶養の基準は個人事業主が扶養から外れる金額で整理しています。
事業主の証明を出したのに保険者から外すと言われたときは、収入以外の要件を満たしていない可能性があります。まず、加入している健康保険組合などに理由を確認するよう案内されています(Q3-7)。
なお、このQ&Aの版には「時限措置か」という問い(Q1-3)が載っていますが、恒久化の前の記述です。期限については、2025年10月1日付の通知を確認してください。
よくある質問
Q. 年収の壁・支援強化パッケージは、いつまでですか?
A. パッケージの中身によって違います。130万円の壁の「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、厚生労働省保険課長の2025年10月1日付の通知で「当面の対応ではなく、恒久的な取り扱いとする」とされました。106万円の壁のキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、厚生労働省のページで2026年3月31日までの取組が対象で、4月1日以降は「短時間労働者労働時間延長支援コース」を使うとされています。社会保険適用促進手当は、労働者ごとに最大2年間とされていますが、制度全体の終了日は取得した原文には書かれていません。
Q. 事業主の証明で扶養に入れる年収の上限は、いくらまでですか?
A. 上限額は示されていません。厚生労働省のQ&Aは、上限を設けるとその額が新たな「年収の壁」になりかねないこと、一時的な事情かどうかは収入額だけでは判断できないことを理由に挙げ、各保険者が雇用契約書などをふまえて、増収が一時的かどうかを確認するとしています。
Q. 基本給が上がったときも、事業主の証明は使えますか?
A. 使えません。厚生労働省のQ&Aは、一時的な収入増加として主に残業手当や臨時の繁忙手当を想定しています。基本給が上がった場合、恒常的な手当が新設された場合、労働契約の所定労働時間・日数が増えた場合など、今後も収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められないとしています。
Q. 事業主の証明を出せば、必ず扶養に残れますか?
A. 必ずとは言えません。Q&Aでは、雇用契約書などから年間収入の見込みが恒常的に130万円以上となることが明らかな場合は、被扶養者に該当しなくなるとされています。また、被扶養者の要件は収入だけではないため、ほかの要件を満たさなくなって外れることもあります。外されたときは、まず加入している健康保険組合などに理由を確認するよう案内されています。
Q. 税金の扶養控除や、会社の家族手当にも使えますか?
A. 健康保険などの被扶養者認定と、国民年金の第3号被保険者の認定だけの取扱いで、税など他の制度は通常の取扱いとされています(厚生労働省のQ&A)。会社の家族手当は会社が決める制度で、健康保険の被扶養者認定に連動させている会社であれば、この特例と同様の扱いになると考えられる、という説明にとどまります。
Q. 19歳以上23歳未満の学生の扶養は、130万円のままですか?
A. 厚生労働省のページでは、被扶養者として認定を受ける人(配偶者を除く)が19歳以上23歳未満の場合、年間収入の要件は150万円未満に引き上げられたと書かれています。事業主の証明は、学生であっても同様の取扱いです(厚生労働省のQ&A)。
参考・出典
- 厚生労働省 - 「年収の壁」への対応(2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 年収の壁・支援強化パッケージ(2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について(令和7年10月1日 保保発1001第1号)(2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて(令和7年10月1日)(2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(PDF・2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 事業主の証明による被扶養者認定に関するQ&A(PDF・令和5年12月25日更新版・2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 事業主証明様式(PDF・2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ(リーフレット)(PDF・2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - 社会保険適用促進手当に関するQ&A(PDF・2026年10月2日確認)
- 厚生労働省 - キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)のご案内(リーフレット・令和8年4月版)(PDF・2026年10月2日確認)
- 日本年金機構 - 保険料調整制度のご案内(更新日2026年9月11日・2026年10月2日確認)
- 日本年金機構 - 保険料調整制度の概要(更新日2026年10月1日・2026年10月2日確認)
※制度は改正されることがあります。被扶養者の認定は加入している健康保険組合・協会けんぽなどの保険者が行うため、証明書の出し方や必要な期間は保険者に確認してください。助成金・手当は事業主の判断で利用するものです。