退職給付金とは?怪しい・詐欺と言われる理由と、自分で申請する方法
「退職給付金」という名前の公的な給付は、ハローワークの雇用保険の案内にも、協会けんぽの傷病手当金の案内にも出てきません(2026年10月4日に本文を確認)。有料の申請サポートがこの名前で説明している給付は、雇用保険の基本手当(失業保険)に当たり、病気やけがが関わるときは、健康保険の傷病手当金なども関わります。どちらも自分で申請できる制度で、受け取れるかどうかを決めるのは、ハローワークと健康保険の保険者です。有料のサポートを使うかどうかは、自分での手順を知ってから決めても遅くありません。
「退職給付金」は、国の制度の名前?
ハローワークの「基本手当について」「雇用保険の具体的な手続き」と、協会けんぽの「傷病手当金」のページの本文には、「退職給付金」という名前の給付は書かれていません(2026年10月4日確認)。退職の前後に使える公的な給付は、次の表のとおり、制度ごとに名前も窓口も違います。
| 制度 | 申請先 | 受け取れる人(公式の案内) |
|---|---|---|
| 基本手当(失業保険) | 住居を管轄するハローワーク | 離職後、働く意思と能力があるのに仕事に就けない人。離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること(倒産・解雇等や特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上) |
| 受給期間の延長(雇用保険) | 住所又は居所を管轄するハローワーク | 病気、けが、妊娠、出産、育児等で、引き続き30日以上働けないとき。働けない日数だけ、基本手当の受給期間を延長できる(最長3年) |
| 傷病手当金(健康保険) | 加入している協会けんぽの支部(組合健保ならその組合) | 業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続する3日間を含み4日以上休み、休業した期間に給与の支払いがない人 |
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「雇用保険の具体的な手続き」、協会けんぽ「傷病手当金」、2026年10月4日確認。
有料の申請サポートを案内している YELL!! のLP(pif-yell.jp/lp-16/)は、退職給付金を「働く意思があるにもかかわらず離職した方に対し、再就職までの生活を支えるために国から支給されるお金」と説明し、「対象:雇用保険加入1年以上」「申請はハローワーク経由」と書いています。この説明に当たる国の制度は、雇用保険の基本手当です。同じLPの流れには提携クリニックの紹介も含まれていて、病気やけがが関わる場合は、傷病手当金や受給期間の延長が関わります。LPには、どの制度の申請をどこまで手伝うのかの内訳は書かれていません。
自分で申請するなら、基本手当は何をする?
基本手当は離職後に、本人が住居を管轄するハローワークで手続きする制度です。ハローワークの案内では、離職票を持って求職の申込みをするところから始まるので、退職前に申請することはできません。退職前にできるのは準備です。
- 退職前:雇用保険被保険者証の有無を確かめます。会社がハローワークに出す離職証明書は、離職前に本人が氏名を記載することになっているので、離職理由の記載内容も確かめます。
- 退職後:会社から「雇用保険被保険者離職票(-1・-2)」が届きます。届かないときや会社と連絡がつかないときは、住居を管轄するハローワークに問い合わせます。
- ハローワークで受給資格の決定:求職の申込みをして、離職票を出します。持ち物は、離職票、個人番号の確認書類、身元の確認書類、写真2枚(マイナンバーカードを見せれば省略可)、本人名義の預金通帳かキャッシュカードです。
- 受給説明会と失業の認定:指定の日に説明会へ行き、原則として4週間に1度、失業の認定を受けます。認定を受ける期間ごとに、原則2回以上の求職活動の実績が必要です(最初の認定は1回)。
- 振込:認定の日から、通常5営業日で指定の口座に振り込まれます。
離職理由が自己都合のときは、求職の申込み後の7日間の待期のあとに、基本手当が支給されない給付制限があります。厚生労働省のリーフレットでは、退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月(3月31日以前なら原則2か月)で、5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は3か月です。ハローワークの手続きのページには「2か月間」と書かれた箇所が残っているので、自分の場合の期間は、受給資格決定のときにハローワークで確かめてください。
もらえる日数と1日の額
| 離職の区分 | 被保険者であった期間 | 所定給付日数 |
|---|---|---|
| 自己都合など(特定受給資格者・一部の特定理由離職者・就職困難者以外) | 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | |
| 20年以上 | 150日 | |
| 倒産・解雇等(特定受給資格者)など | 年齢と期間による | 90日〜330日 |
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」、2026年10月4日確認。1年未満の区分や、就職困難者の日数は、出典のページをご覧ください。
1日あたりの基本手当日額は、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金(賞与等を除く)の合計を180で割った賃金日額の、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)です。年齢ごとの上限は、令和8年8月1日現在、30歳未満7,450円、30歳以上45歳未満8,270円、45歳以上60歳未満9,110円、60歳以上65歳未満7,830円と定められています。受給できる期間は、原則として離職日の翌日から1年間で、これを過ぎると所定給付日数が残っていても受けられません。
虚偽の申告で受けたときは、以後の基本手当を受けられなくなり、返還を命じられます。原則として、不正に受けた額の2倍以下の金額の納付も命じられます。自分の状況に合わせた日数の見込みは失業保険計算機、退職のタイミングの考え方は失業給付の退職タイミングと受給日数で確かめられます。
病気やけがで働けないときは、何を使う?
ハローワークの案内には、「病気やけがのため、すぐには就職できないとき」は基本手当を受けることができないと書かれています。退職後すぐには働けないなら、使うのは次の2つです。
- 傷病手当金(健康保険):業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続する3日間を含み4日以上休み、給与の支払いがないときに、協会けんぽの支部などに申請します。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2が目安です(協会けんぽの計算例)。
- 受給期間の延長(雇用保険):病気やけがで引き続き30日以上働けないときは、働けない日数だけ、基本手当の受給期間を延長できます(最長3年)。早めに申請するのが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までなら申請できます。
退職後も傷病手当金を続けて受けるには、退職日までの被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日の前日に、現に受けているか受けられる状態にあることが条件です。一度、仕事に就ける状態になったあとで再び働けなくなっても、支給されません。くわしい条件は傷病手当金は退職後も受け取れる?、額の計算は傷病手当金計算機で確かめられます。
病気やけがが理由で自己都合退職をした人は、ハローワークの特定理由離職者の範囲(「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷…により離職した者」)に当たるかどうかが判断されます。当たるかどうかを決めるのはハローワークなので、離職票を持って窓口で相談してください。
有料の申請サポートは、自分での申請と何が違う?
YELL!!(運営は合同会社Pay It Forward)のLPは、「給付条件の確認から書類作成、申請方法まで専門チームがサポート」と案内しています。サポートの対象は「退職することが1か月以内に決まっている方」です。流れは、LINEの友だち追加、個別の無料診断(受給可否や金額目安の算出)、提携クリニックの紹介、書類作成サポート、審査・受給確定の順に書かれています(2026年10月4日確認)。
| 項目 | 自分で申請 | YELL!!のサポート(LP・特商法表記・規約の記載) |
|---|---|---|
| 申請先 | 基本手当はハローワーク、傷病手当金は加入先の保険者 | LPに「申請はハローワーク経由」とある |
| 費用 | 本記事で挙げたハローワーク・協会けんぽの案内に、申請の手数料の記載はない | 一括払い330,000円、後から一括払い440,000円、分割払い495,000円(税込)。後から一括払い・分割払いは、契約時に保証金30,000円 |
| 返金 | ― | LPは「受給できない場合は全額返金保証」と案内。特商法表記は「当社の故意又は重過失による事由による場合を除き、キャンセル及び返金は如何なる場合もできません」とし、クーリングオフ制度は適用されないとしている |
| 受給できるか | ハローワークや保険者が、要件を確かめて決める | LPに「受給率100%(※2025年5月時点)」の表示がある。一方、利用規約は、本サービスが失業給付金等の受給の成功を確約するものではないとしている |
| サポートの中身 | 自分で書類をそろえて申請する | 利用規約は、失業給付金等受給支援サービスを「利用者が失業給付金等を受給することを目的とした助言等に関するサービス」と定義している |
出典:YELL!!給付金サポートのLP(pif-yell.jp/lp-16/)、特定商取引法に基づく表記、利用規約、2026年10月4日確認。
LPの「全額返金保証」と、特商法表記の「返金は如何なる場合もできません」は、書き方が違います。どちらの条件が自分の契約に当てはまるのかは、申込みの前に、書面で確かめてください。LPは、申請の手続きに、場合によっては医師の診断が必要になるとも書いています。
書類の作成や提出の代行には、資格の定めがあります。社会保険労務士法27条は、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じて報酬を得て、申請書等の作成や、その提出の手続の代行を、業として行ってはならないと定めています(他の法律に別段の定めがある場合などを除く)。LPの「書類作成サポート」が助言にとどまるのか、作成や提出までを行うのかは、LPには書かれていません。
「怪しい」「詐欺」と言われるのはなぜ?申込み前に確かめる点
この記事は、特定の会社を詐欺だと言うものではありません。「怪しい」と感じる人がいる理由は、公式の文書で確かめられる点にあります。
- 名前が公的な制度のように見える:「退職給付金」は、ハローワークや協会けんぽの案内に出てくる名前ではありません。
- 費用が数十万円になる:特商法表記の料金は、330,000円から495,000円(税込)です。
- 返金の書き方が、表示ごとに違う:LPの「全額返金保証」と、特商法表記の「返金は如何なる場合もできません」です。
- 受給を決めるのは、サポート会社ではない:基本手当を決めるのはハローワーク、傷病手当金を決めるのは保険者です。
- 申告の責任は本人にある:虚偽の申告で受けた基本手当は、返還と、最大で不正に受けた額の2倍以下の納付の対象になります。
申込みの前に、次の5点を書面かメールで確かめておくと、あとで困りにくくなります。
- 基本手当と傷病手当金の、どちらの申請を、どこまで手伝ってもらえるのか。
- 総額、支払いの時期、返金される場合の条件(だれのどんな事由で、いくら戻るのか)。
- 申請書類を作る人、提出する人はだれか。資格のある専門家が関わるのか。
- 自分の場合に、受給の対象になるのか。退職日、被保険者期間、病気やけがの状況は、ハローワークや保険者にも直接たずねられます。
- 診断書や申告の内容が、自分の実際の状況と合っているか。実際と違う申告は、不正受給として支給の停止と返還の対象になります。
国民生活センターのトップページ、報道発表の一覧、「見守り新鮮情報」の案内ページに、「退職給付金」や「給付金サポート」を名指しした注意喚起は、見つかりませんでした(2026年10月4日確認)。注意喚起が無いことは、問題が無いという意味ではありません。契約で困ったときは、国民生活センターが案内している全国共通の「消費者ホットライン」や、地元の消費生活センターに相談できます。
よくある質問
Q. 「退職給付金」という公的な制度はありますか?
A. ハローワークの「基本手当について」「雇用保険の具体的な手続き」と、協会けんぽの「傷病手当金」のページには、「退職給付金」という名前の給付は書かれていません(2026年10月4日確認)。退職の前後に使える公的な給付としては、雇用保険の基本手当(失業保険)と、健康保険の傷病手当金があります。
Q. 退職前に、基本手当を申請できますか?
A. できません。ハローワークの案内では、手続きは離職後に、会社から届く離職票を持って、住居を管轄するハローワークで求職の申込みをするところから始まります。退職前にできるのは、雇用保険被保険者証の確認や、会社がハローワークに出す離職証明書の離職理由の記載内容の確認です。
Q. 自己都合で辞めても、基本手当はもらえますか?
A. 離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あれば、受給の要件を満たします。自己都合などで退職したときは、待期の7日間のあとに、基本手当が支給されない給付制限の期間があります。厚生労働省のリーフレットでは、退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月です。
Q. 傷病手当金と基本手当は、同時にもらえますか?
A. ハローワークの案内では、病気やけがのため、すぐには就職できないときは、基本手当を受けることができません。働けない状態が引き続き30日以上になるときは、ハローワークに申請して、基本手当の受給期間を延長できます(延長できるのは最長3年)。傷病手当金は、健康保険の保険者に申請する別の給付です。
Q. 申請サポートを使わずに、自分で申請できますか?
A. できます。基本手当は住居を管轄するハローワークへ、傷病手当金は加入している協会けんぽの支部(健康保険組合の場合はその組合)へ、本人が申請する制度です。必要な書類と流れは、この記事の「自分で申請するなら」の節にまとめました。
Q. YELL!!のサポートの料金はいくらですか?
A. YELL!!のLPにリンクされた特定商取引法に基づく表記(運営は合同会社Pay It Forward)では、給付金サポート・転職サポートの料金は、一括払い330,000円、後から一括払い440,000円、分割払い495,000円(いずれも税込)です(2026年10月4日確認)。後から一括払いと分割払いは、契約時に保証金30,000円を預かり、支払い完了時に返金するとされています。
参考・出典
- ハローワークインターネットサービス 基本手当について(2026年10月4日確認)
- ハローワークインターネットサービス 雇用保険の具体的な手続き(2026年10月4日確認)
- ハローワークインターネットサービス 基本手当の所定給付日数(2026年10月4日確認)
- ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(2026年10月4日確認)
- 厚生労働省 令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます(注1に給付制限の期間)(2026年10月4日確認)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ) 傷病手当金(2026年10月4日確認)
- e-Gov法令検索 社会保険労務士法(第27条)(2026年10月4日確認)
- YELL!!給付金サポート・特定商取引法に基づく表記・利用規約(2026年10月4日確認)
- 国民生活センター(2026年10月4日確認)
※給付の可否や額は、離職の理由、被保険者期間、加入している保険者などで変わります。個別の判断は、ハローワークや加入先の保険者にご確認ください。この記事は、特定のサービスの利用を勧めるものでも、否定するものでもありません。