ふるさと納税は年末調整で戻る?年末調整では控除されない理由・ワンストップ特例と確定申告の違い・年末調整後にやること・会社に知られるか
会社に勤めていて、ふるさと納税をした方向けの解説です。ふるさと納税の寄附金控除は、年末調整では受けられません。年末調整を定めた所得税法190条が計算に入れる控除の列挙に、寄附金控除(78条)が入っていないためです。控除を受ける方法は、寄附先の自治体に申請書を出すワンストップ特例か、確定申告のどちらかです。2つの違いと、年末調整のあとにやること、会社に知られるのかを、法令と国税庁・総務省の原文で整理しました。
ふるさと納税が年末調整で戻らない理由
ふるさと納税による控除の正体は、所得税法78条の寄附金控除です。国税庁のNo.1155は、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度と説明しています。
一方、年末調整を定めた190条は、その年に支払う給与等の金額から次の控除を引いて税額を計算すると定めています。条文の2号が挙げる控除は、次の表のとおりです。
| 控除 | 190条2号 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 社会保険料・小規模企業共済等掛金 | イ・ロ | 74条・75条 |
| 生命保険料・地震保険料 | ロ | 76条・77条 |
| 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生・扶養 | ハ | 79〜82条・84条 |
| 配偶者・配偶者特別 | ニ | 83条・83条の2 |
| 特定親族特別 | ホ | 84条の2 |
| 基礎 | ヘ | 86条 |
| 寄附金(ふるさと納税) | 挙がっていない | 78条 |
出典:所得税法78条・190条(e-Gov 法令検索、2026年10月1日時点の版)、2026年10月2日確認。190条の条文に「寄附」の語は出てきません。
年末調整は、会社が給与から引いてきた所得税を、190条の計算で精算する手続です。ふるさと納税の分は、この計算に入らないため、年末調整では戻りません。国税庁のNo.1900も、大部分の給与所得者は年末調整で所得税額が確定し納税も完了するとしています。寄附金控除を受けるには、別の手続が要ります。
年収ごとの寄附の上限額は、ふるさと納税 上限額計算ツールで調べられます。
ワンストップ特例と確定申告の違い
寄附金控除を受ける方法は2つです。総務省の「ふるさと納税の流れ」「税金の控除について」を、表にまとめました。
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 使える人 | 確定申告の不要な給与所得者等で、寄附先が5団体以内 | ワンストップ特例の対象ではない人、申請しない人 |
| 出す先と時期 | 寄附する際に、寄附先の自治体へ申請書 | 寄附の翌年3月15日までに、住所地の所轄税務署へ |
| 所得税 | 控除は行われない | 寄附をした年分の所得税から控除(還付されることがある) |
| 住民税 | 控除額の全額が、翌年度の住民税から減額 | 翌年度の住民税から減額 |
出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト(ふるさと納税の流れ・税金の控除について)、地方税法附則7条、2026年10月2日確認。
ワンストップ特例の法的な根拠は、地方税法附則7条です。確定申告を要しない見込みの人が、申告書の提出に代えて、寄附する際に寄附先の自治体へ申請書を出すと、自治体が住所地の市町村へ申告特例通知書を送ります。次のどれかに当たると、申告特例の求めはなかったものとみなされます(同条6項・13項)。
- 所得税法121条の適用を受けないこととなったとき(確定申告が必要になったとき)
- 翌年度の住民税の申告書を提出したとき
- 通知書を送った自治体の数が5を超えたとき
- 通知書の送付先の市町村が、賦課期日現在の住所地の市町村と異なったとき
ワンストップ特例の申請書の締切は、法令ではなく寄附先の自治体が決めています。公式ページで確認した例はワンストップ特例の期限と過ぎたときにまとめています。
年末調整のあとにやること
年末調整の書類を出し終えたあとに何をするかは、寄附の手続をどうしたかで変わります。
| あなたの場合 | やること | 期限・出典 |
|---|---|---|
| ワンストップ特例の申請書を出した | 追加の手続は不要。住所などが変わったときだけ変更の届出 | 変更は翌年1月10日まで(地方税法附則7条) |
| 申請書を出していない、または6団体以上に寄附した | 確定申告をする | 寄附の翌年3月15日まで(総務省)。過ぎたら還付申告で5年間(No.2030) |
| 医療費控除などで確定申告もする | ワンストップ特例の分も含めて、寄附をすべて申告書に書く | 国税庁 No.1155 |
| 年末調整で所得税が0円 | 住民税の申告書を市区町村に出す | 総務省。詳細は市区町村に確認 |
出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト、国税庁 No.1155・No.2030、地方税法附則7条、2026年10月2日確認。
寄附先の自治体が発行する寄附の証明書(受領書)は、確定申告に必要な書類です。総務省は大切に保管するよう案内しています。
住民税の減額が実際に反映されたかは、翌年に事業主経由で届く住民税の通知で確認します。市町村は5月31日までに通知することとされています(地方税法321条の4)。通知書の見方は住民税決定通知書の見方にあります。確定申告が要る人は確定申告が必要なケース、医療費控除と合わせる人は医療費控除とふるさと納税の併用が参考になります。
会社に知られるのか
年末調整の計算には、ふるさと納税は入りません(前の章)。会社が関わる可能性があるのは、給与から天引きされる住民税の通知です。
総務省の行政評価局の資料は、仕組みを次のように説明しています。給与から天引き(特別徴収)される個人住民税の税額は、市町村から事業主(特別徴収義務者)と従業員に通知されます。納税義務者用の税額通知書は、直接従業員に送られるのではなく、事業主を経由して交付されます。
| 書類 | 誰宛か | 資料に書かれていること |
|---|---|---|
| 特別徴収義務者用 | 会社(事業主) | 給与以外の所得や所得控除の情報は記載されない |
| 納税義務者用 | 従業員(会社経由で交付) | 給与以外の所得や所得控除の情報が含まれる。秘匿措置(シール貼付等)が無い市町村がある |
出典:総務省 行政評価局「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」、地方税法施行規則2条の様式、2026年10月2日確認。
この資料に、ふるさと納税や寄附の語は出てきません。ふるさと納税による寄附金税額控除は、住民税の税額控除のひとつです(地方税法37条の2・314条の7)。納税義務者用の様式には「税額控除前所得割額」「税額控除額」「所得割額」の欄が並んでいます。寄附金税額控除の金額が、会社を経由して受け取る通知書のどこに、どう表示されるかは、資料からは確認できませんでした。
また、総務省・国税庁の資料の範囲では、ワンストップ特例と確定申告で、会社への通知の仕方に違いがあるかも確認できませんでした。会社に知られたくない場合は、寄附をする前に、お住まいの市区町村の住民税の担当窓口に、通知書の秘匿措置の有無と表示のされ方を確認するのが確実です。
よくある質問
Q. ふるさと納税の寄附金受領証明書を、年末調整で会社に出す必要はありますか?
A. 所得税法190条2号が年末調整の計算に入れる控除は、社会保険料・小規模企業共済等掛金、生命保険料・地震保険料、障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生・扶養、配偶者・配偶者特別、特定親族特別、基礎の各控除です。寄附金控除(78条)は挙がっていません。年末調整の書類に寄附の金額を書いて会社に出しても、条文の計算には入りません。受領証明書は、確定申告に必要な書類として自分で保管します(総務省)。
Q. ワンストップ特例を使うと、所得税は戻らないのですか?
A. 総務省は、ワンストップ特例を申請した場合、所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が、翌年度の住民税から控除されるとしています。年末調整でも戻らず、住民税の減額という形で受けます。
Q. 年末調整が終わったあとでも、確定申告でふるさと納税の控除を受けられますか?
A. 受けられます。総務省は、ワンストップ特例の対象ではない人と申請しない人は、控除を受けるために確定申告が必要としています。期限は寄附をした翌年の3月15日までです(総務省)。それを過ぎても、所得税の還付は、翌年1月1日から5年間提出できる還付申告で受けられます(国税庁 No.2030)。
Q. 6つ以上の自治体に寄附しました。ワンストップ特例は使えますか?
A. 使えません。地方税法附則7条は、申告特例の求めを行う自治体の数が5以下の場合に限るとし、5を超えたときは、申告特例の求めはなかったものとみなすと定めています。確定申告が必要です。
Q. 医療費控除の確定申告をします。ワンストップ特例の申請は有効ですか?
A. 国税庁は「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります」としています(No.1155)。申請した分も含めて、確定申告書に書きます。併用の詳しい流れは、医療費控除とふるさと納税の併用のページにあります。
Q. 年末調整で所得税が0円になっています。ふるさと納税の控除はどうなりますか?
A. 総務省は、年末調整等により所得税が0円になっていて、住民税からのみ控除を受ける方は、住民税に関する申告書をお住まいの市区町村に提出する必要があるとしています。詳細は市区町村に確認してください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 所得税法(78条・121条・190条。2026年10月2日確認)
- e-Gov法令検索 地方税法(附則7条。2026年10月2日確認)
- 国税庁 No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)・No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月2日確認)
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人・No.2030 還付申告(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月2日確認)
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト - ふるさと納税の流れ・税金の控除について(2026年10月2日確認)
- 総務省 行政評価局 納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿(2026年10月2日確認)
※国税庁・総務省と法令の原文に書かれている範囲の整理です。控除の可否や手続は、個別の事情や市区町村の取扱いで変わります。具体的な取り扱いは寄附先の自治体、お住まいの市区町村、所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。