医療費控除とふるさと納税は併用できる?上限額が下がる仕組み、ワンストップ特例が使えなくなる理由、確定申告書の書き方
会社に勤めている方が、同じ年に医療費控除とふるさと納税を使うことはできます。ただし、医療費控除で住民税の所得割が下がると、ふるさと納税の上限額も下がります。また、医療費控除で確定申告をすると、ワンストップ特例の申請は無効になり、ふるさと納税も確定申告に入れる必要があります。上限額がどれだけ下がるかを年収別に試算し、確定申告書の書き場所を国税庁の資料でまとめました。
併用はできる。「どっちが得」ではない
医療費控除は、支払った医療費が足切り(10万円と総所得金額等の5%の低い方)を超えたときの、所得控除です。ふるさと納税は、寄附額から2,000円を引いた額を、所得税と住民税から控除する寄附金控除です。控除の種類も条件も別なので、2つを比べて片方を選ぶ関係にはありません。
| 控除 | 決まり方 | 出どころ |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 医療費の合計額から保険金などの補てんと足切りを引いた額(最高200万円)を、課税所得から差し引く。住民税にもある | 国税庁 No.1120、地方税法34条1項2号 |
| ふるさと納税 | 住民税の特例分の控除は、住民税所得割額の2割が限度。超えると実質負担は2,000円を超える | 総務省 税金の控除について |
| 2つが重なる年 | 医療費控除で住民税の課税所得が減る → 所得割額が減る → その2割も減る | 上の2行から計算 |
出典:国税庁 No.1120(令和8年4月1日現在法令等)、総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」、地方税法第34条(e-Gov)、2026年10月2日確認。3行目は原文の言い回しではなく、1・2行目の組み合わせから導いた説明です。
国税庁 No.1120 で「選択適用」と書かれているのは、医療費控除とセルフメディケーション税制の間です。ふるさと納税との間には、そのような記載がありません。つまり、医療費控除を受ける年にふるさと納税をしても、どちらも控除の対象になります。変わるのは、ふるさと納税の上限額だけです。
上限額はどれだけ下がるか
家族の医療費を30万円(仮置き)支払い、補てんなしとしたときの、年収別の試算です。上限額は、ふるさと納税 上限額計算ツールと同じ計算に、医療費控除の額を足して出しています。医療費は計算のための仮置きで、実際の額とは異なります。
| 年収 | ふるさと納税の上限額 (医療費控除なし → あり) | 医療費控除で 戻る額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約28,000円 → 約23,300円 | 約30,200円 |
| 400万円 | 約42,100円 → 約37,400円 | 約30,200円 |
| 500万円 | 約58,000円 → 約53,300円 | 約30,200円 |
| 600万円 | 約77,700円 → 約72,700円 | 約40,400円 |
| 700万円 | 約108,400円 → 約89,800円 | 約59,800円 |
| 800万円 | 約130,700円 → 約125,000円 | 約60,800円 |
試算の前提は、東京都・40歳未満・扶養なし、社会保険料は標準的な金額で概算、その他の所得控除は考慮していません。この年収では足切りは10万円なので、医療費控除の額は200,000円です。戻る額は、tools の医療費控除計算ツールと同じ計算(所得税の軽減分と住民税の軽減分の合計)です。実際の額は他の控除や源泉徴収額により変わります。年収700万円は、医療費控除で課税所得が下がり、所得税の税率の区分が20%から10%に変わるため、他の年収より下がり幅が大きく出ています。総務省は、特例分の計算に使う所得税の税率は、住民税の課税所得から人的控除差調整額を引いた額で決まり、所得税の税率と異なる場合があるとしています。
年収500万円なら、医療費控除で戻る額は約30,200円、ふるさと納税の上限額は約58,000円から約53,300円に、約4,700円下がります。上限額が下がるとは、同じ寄附額でも、下がった上限額を超えた分は自己負担が2,000円を超える、という意味です。総務省は、特例分が住民税所得割額の2割を超える場合、控除を合計しても寄附額から2,000円を引いた額の全額は控除されず、実質負担は2,000円を超えるとしています。
医療費が増えるほど、控除額が増えて、上限額は下がります。年収500万円で、医療費を変えたときです。
| 医療費(仮置き) | 医療費控除の額 | ふるさと納税の上限額 |
|---|---|---|
| 10万円 | 0円 | 約58,000円 |
| 20万円 | 100,000円 | 約55,700円 |
| 30万円 | 200,000円 | 約53,300円 |
| 50万円 | 400,000円 | 約48,600円 |
| 100万円 | 900,000円 | 約36,800円 |
医療費が10万円のときは足切りと同額で、医療費控除は0円になり、上限額は医療費控除なし(約58,000円)と同じです。年収500万円の試算です。
上限額の目安の見方
その年の医療費は年末まで確定しません。医療費控除を受ける見込みがあるときは、上の表のとおり、上限額の目安が下がります。ツールの結果と、実際に適用される上限額は、お住まいの市区町村にご確認ください(総務省は、具体的な計算は市区町村への問い合わせを案内しています)。
ワンストップ特例が使えなくなる
ワンストップ特例は、確定申告が不要な給与所得者が、寄附先5団体以内のときに使える制度です。医療費控除を受けるために確定申告をする年は、この前提が崩れます。国税庁 No.1155 は、次のように案内しています。
- 「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります」
- 医療費控除や雑損控除を受けるために確定申告や個人住民税の申告をする方も、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告をする必要があります
総務省によると、ワンストップ特例の申請をした場合は所得税からの控除が行われず、全額が翌年度の住民税から控除されます。確定申告をすると、所得税と住民税の控除額がそれぞれ決まる、という別の計算になります。申請書の期限や、出し忘れ・申請済みなのに入れずに申告したときの手続は、ワンストップ特例の期限と過ぎたときにまとめています。
確定申告書のどこに書くか
医療費控除とふるさと納税を一緒に申告するときの書き場所は、国税庁の資料では次のとおりです。
| 書くもの | 書く場所 | 国税庁の説明 |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 第一表 | 医療費控除の明細書で計算した金額を転記し、明細書を確定申告書と一緒に提出する |
| ふるさと納税の寄附先と金額 | 第二表「寄附金控除に関する事項」の「寄附先の名称等」「寄附金」欄 | ふるさと納税先の団体名と寄附された金額を記載する |
| ふるさと納税の金額(住民税用) | 第二表「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄 | 寄附された金額も必ず記載する。記載がないと、住民税で控除されないこともある |
出典:国税庁 No.1155(令和8年4月1日現在法令等)、「令和7年分 確定申告の手引き」の医療費控除(第一表)と寄附金控除(第一表第二表)、2026年10月2日確認。令和8年分の様式は、国税庁が公表したものをご確認ください。
寄附金控除の額は、手引きの計算欄で、寄附金の合計額と、第一表の所得金額等の合計に0.4をかけた額の、少ない方から2,000円を引いて求めます。医療費控除のほうの明細書の書き方は医療費控除の明細書の書き方に、スマホで申告する手順はスマホで確定申告(e-Tax)のやり方にあります。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額を入力すると、必要な付表や明細書が自動的に作成されます。
よくある質問
Q. 医療費控除とふるさと納税は、併用できますか?
A. 併用できます。国税庁 No.1155 は、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告をする方(医療費控除や雑損控除を受けるために確定申告や個人住民税の申告をする方を含む)が、ふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告をする必要があるとしています。医療費控除とふるさと納税のどちらか一方を選ぶ、という規定は、No.1155 にも No.1120 にも書かれていません。
Q. 医療費控除を受けると、ふるさと納税の上限額は下がりますか?
A. 下がります。総務省の式では、住民税の特例分の控除は住民税所得割額の2割が限度で、これを超えると実質負担は2,000円を超えます。医療費控除は住民税の課税所得も減らすので、所得割額が小さくなり、その2割も小さくなります。年収500万円(東京都・40歳未満・扶養なし)で、窓口で支払った医療費を30万円(仮置き)とした試算では、上限額は約58,000円から約53,300円になります。
Q. ワンストップ特例の申請書を出したあとに、医療費控除で確定申告をするとどうなりますか?
A. 国税庁は、確定申告を行う方はワンストップ特例の申請が無効となるため、申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があるとしています(No.1155)。期限や、誤って寄附金控除を入れずに申告したときの更正の請求は、ワンストップ特例の記事にまとめています。
Q. ふるさと納税の分は、確定申告書のどこに書きますか?
A. 国税庁 No.1155 では、第二表の「寄附金控除に関する事項」の「寄附先の名称等」欄と「寄附金」欄に、ふるさと納税先の団体名と寄附された金額を書き、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にも寄附された金額を必ず書くよう案内しています。医療費控除は、第一表に、医療費控除の明細書で計算した金額を転記します(令和7年分の手引き)。
Q. 「住民税に関する事項」の欄を書き忘れると、どうなりますか?
A. 国税庁 No.1155 は、所得税の確定申告書は個人住民税の申告書も兼ねているので、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄などが記載されていない場合には、個人住民税の賦課決定の際に控除されないこともあるとして、注意を促しています。
Q. 医療費が10万円に届かないときも、ふるさと納税の確定申告はできますか?
A. 医療費控除が0円でも、ふるさと納税について確定申告で寄附金控除を受けることはできます(No.1155)。医療費控除のほうは、足切りの10万円(総所得金額等が200万円未満の人は5%)を超えた分から対象なので、超えなければ控除額は0円です(No.1120)。上の表3のとおり、このとき上限額も下がりません。
Q. ふるさと納税の上限額ツールには、医療費控除を入れられますか?
A. 入れられません。ツールは医療費控除など、他の所得控除がない場合の目安です。この記事の表は、ツールと同じ計算に医療費控除の額を足した試算です。
参考・出典
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト - 税金の控除について(2026年10月2日確認)
- 国税庁 - No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月2日確認)
- 国税庁 - No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月2日確認)
- 国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」医療費控除(第一表)・寄附金控除(第一表第二表)(2026年10月2日確認)
- e-Gov法令検索 - 地方税法(第34条 所得控除)(2026年10月2日確認)
※試算は概算です。実際の上限額や控除額は、他の所得控除や年収確定後の金額、お住まいの市区町村の計算により変わります。具体的な申告は税務署または税理士にご確認ください。