医療費控除の明細書の書き方|病院・薬局ごとにまとめる記入例と交通費・家族分
医療費控除の明細書は、領収書1枚ごとに書かなくても、「医療を受けた方」と「病院・薬局など」ごとにまとめて書けます。国税庁の記載要領の記入例では、同じ病院で診療を受けた6,500円と5,500円を「12,000円」の1行にし、通院費(往復780円×2)は「1,560円」の別の1行にしています。本記事では、この明細書の書き方、手書きとパソコンでの作り方、薬局で買った薬と通院の交通費の扱い、家族分をまとめるとき、総所得金額等が200万円未満の人の10万円の扱い、医療費通知を使う場合、セルフメディケーション税制との違いを、国税庁の原文に沿ってまとめます。
医療費控除の明細書とは(領収書は出さずに保管する)
医療費控除を受けるには、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。国税庁の案内では、医療費の領収書は確定申告書への添付も、申告書を出すときの提示も必要ありません。ただし、明細書の記入内容を確認するため、確定申告期限等から5年間は自宅で保管し、税務署から提示や提出を求められることがあります。
明細書は、次の3つの部分でできています。
| 部分 | 書くこと | 使う人 |
|---|---|---|
| 1 医療費通知に記載された事項 | 医療費通知の合計など3つの金額 | 医療費通知を付ける人 |
| 2 医療費(上記1以外)の明細 | 領収書から、人・支払先ごとの医療費 | ほぼ全員 |
| 3 控除額の計算 | 医療費の合計、補填額、所得金額から控除額を出す | 全員 |
この記事では、国税庁の令和7年分の様式と記載要領を使って説明します。令和8年分の手引き(国税庁サイトの2026年版)は、2026年10月2日時点で公開が見つかっていないため、令和8年分を申告するときは新しい様式で書き方を確かめてください。
病院・薬局ごとにまとめて書く方法と記入例
「2 医療費(上記1以外)の明細」には、その年に自分や、生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費を、領収書から書き写します。国税庁の記載要領には、「領収書1枚」ごとではなく、「医療を受けた方」・「病院等」ごとにまとめて記入できると書かれています。1行の欄は次の5つです。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| (1) 医療を受けた方の氏名 | 医療を受けた方の氏名 |
| (2) 病院・薬局などの支払先の名称 | 診療を受けた病院や、薬を買った薬局などの名称 |
| (3) 医療費の区分 | 内容に当たるものを全てチェック(診療・治療/医薬品購入/介護保険サービス/その他の医療費) |
| (4) 支払った医療費の額 | 医療費控除の対象となる金額 |
| (5) (4)のうち保険金などで補填される金額 | 保険金や給付金を受け取った場合のその金額 |
国税庁の記入例(国税太郎さんが○△病院に通院した場合)は次のとおりです。診療は2月18日に6,500円、5月28日に5,500円で、通院費はそれぞれ往復780円(JR・○○バス)です。
| 支払先 | 医療費の区分 | 支払った医療費の額 |
|---|---|---|
| ○△病院 | 診療・治療 | 12,000円 |
| JR、○○バス | その他の医療費 | 1,560円 |
※氏名の欄は、2行目を「〃」(上と同じ)としています。「その他の医療費」には、通院費や医療用器具の購入(いずれも通常必要なものに限ります)などがあるときにチェックします。通院費の支払先が乗り継ぎ等で複数ある場合は、記入例のようにまとめて書いても差し支えないとされています。
つまり、同じ病院に何回通っても、1年分の診療費を合計して1行にできます。「医療を受けた方」が家族で違うときは、人ごとに行を分けます。
手書きで書くとき・パソコンで作るとき
手書きのとき:国税庁が出している「医療費控除の明細書」の様式に、上の記載要領のとおり書き、確定申告書と一緒に提出します。様式の「3 控除額の計算」は、医療費の合計(A)から補填される金額(B)を引き、所得金額の合計額(D)から出した足切り額(F)を引く順に進みます(くわしくは所得金額と10万円の項)。
パソコンやスマホで作るとき:国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額等を入力すると、必要な付表や明細書も自動的に作成されます(国税庁 No.1120)。次の2つの方法もあります。
- 医療費集計フォーム:支払った医療費をエクセルなどで入力・集計するための国税庁のフォーマットです。入力・保存したデータは、作成コーナーの医療費控除の入力画面で読み込めるので、領収書の枚数が多い人向けとされています。セルフメディケーション税制を使う人は、このフォームを使えません。
- マイナポータル連携:国税庁の案内では、毎年2月9日以降、申告する年分の保険診療分の医療費情報を取得して、申告書に自動入力できます。ただし、保険診療分でも、はり・きゅう等の施術費用や整骨院の柔道整復療養費など、取得できない情報があります。家族分の情報を取得するには、事前にマイナポータルで代理人の登録が必要です。
薬局で買った薬・市販薬はどう書くか
薬局での支払いは、支払先の欄に薬局の名称を書き、区分の欄は内容に当たるものをチェックします(薬を買った分は「医薬品購入」の枠です)。控除の対象になるかどうかは、薬の目的で分かれます。国税庁 No.1122 では、治療または療養に必要な医薬品の購入代金が対象で、病気の予防や健康増進のために使う医薬品は対象外です。
| 買ったもの | 医療費控除 | 国税庁の例示 |
|---|---|---|
| かぜ薬など | 対象 | かぜの治療に使った一般的な医薬品 |
| 医師の処方・指示の薬 | 対象 | 診療等を受けるため直接必要な医薬品 |
| ビタミン剤・サプリ | 対象外 | 病気の予防や健康増進のためのもの |
※疾病を予防するための予防接種の費用も、国税庁の手引きでは、対象に含まれないもの(疾病の予防又は健康増進のために供されるもの)に挙げられています。
市販薬の一部は、通常の医療費控除ではなく、後述のセルフメディケーション税制の対象になることがあります。どちらを使うかは選択制です。
通院の交通費はどう書くか
国税庁 No.1122 では、医師等による診療等を受けるための通院費は、医療費控除の対象になる医療費です。ただし、手段によって扱いが違います。
| 通院の手段 | 医療費控除 | 国税庁の説明 |
|---|---|---|
| 電車・バス | 対象 | 公共交通機関の通院費 |
| タクシー | 原則対象外 | 公共交通機関が利用できない場合を除く |
| 自家用車 | 対象外 | ガソリン代や駐車場の料金 |
明細書では、前の項の記入例のとおり、支払先の欄に「JR、○○バス」のように交通機関を書き、区分は「その他の医療費」にチェックして、往復の金額を合計して書きます。入院の際の部屋代や食事代、医師等の送迎費も、診療等を受けるために直接必要な費用として、通院費と同じ項目に挙げられています。
家族分の医療費をまとめるとき
国税庁 No.1120 では、医療費控除の対象になる医療費の要件は、次の2つです。
- 納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、実際に支払った年の分になります)
明細書では、家族の分も同じ「2 医療費の明細」に書き、「(1) 医療を受けた方の氏名」の欄で誰の医療費かを区別します。家族が別々の病院にかかっているときは、人ごと、病院ごとに1行になります。
家族の医療費通知を付ける場合も、通知は「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費に関する医療費通知」に限られます。
健康保険などから出た高額療養費、家族療養費、出産育児一時金、生命保険の入院給付金などは、医療費から差し引きます((5)欄に書きます)。差し引くのは、その給付の目的になった医療費が上限で、引ききれない分があっても他の医療費からは引きません。高額療養費の目安は高額療養費計算機で確かめられます。
所得金額と10万円(200万円未満の人は5%)
医療費控除の金額は、(支払った医療費の合計−補填される金額)−10万円です(最高200万円)。10万円の部分は、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額になります(国税庁 No.1120)。明細書の「3 控除額の計算」では、次の順に書きます。
- A:支払った医療費の合計、B:保険金などで補填される金額、C:差引金額(A−B。マイナスのときは0円)
- D:所得金額の合計額。確定申告書第一表の「所得金額等」の合計の金額で、退職所得金額と山林所得金額があるときは加算します(ほかに申告分離課税の所得があるときも加算)
- E:D×0.05、F:Eと10万円のいずれか少ない方の金額、G:医療費控除額(C−F。最高200万円)
たとえば、補填を引いたあとの医療費が15万円のとき、足切り額と控除額は総所得金額等によって次のように変わります。
| 総所得金額等 | 足切り額(F) | 控除額(G) |
|---|---|---|
| 100万円 | 5万円 | 10万円 |
| 150万円 | 7.5万円 | 7.5万円 |
| 200万円 | 10万円 | 5万円 |
| 300万円 | 10万円 | 5万円 |
※「控除額」は所得から引かれる金額で、戻る税金そのものではありません。給与だけの人の総所得金額等は、給与収入ではなく、給与所得控除を引いたあとの所得金額です。
給与収入から所得金額を出す方法は給与所得控除 計算ツールで、年収別の足切り額と戻る税金の目安は医療費控除はいくらから|年収別早見表で確認できます。
医療費通知(医療費のお知らせ)を使うとき
健康保険組合などから届く「医療費のお知らせ」が、次の6項目が書かれた医療費通知に当たる場合は、通知を添付すると、その分は明細書の「2」に書き写さなくて済みます(国税庁 No.1120 質疑応答 Q1)。
6項目は、①被保険者等の氏名、②療養を受けた年月、③療養を受けた者の氏名、④療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称、⑤被保険者等が支払った医療費の額、⑥保険者等の名称です。
この場合、明細書の「1 医療費通知に記載された事項」に、次の3つを書きます。
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| (1) | 通知に載っている医療費の額(自己負担額)の合計 | 176,584円 |
| (2) | (1)のうち、その年の1月〜12月に実際に支払った額 | 153,300円 |
| (3) | (2)のうち、保険金などで補填される金額 | なければ空欄 |
※記入例の数字は国税庁の記載要領のものです。通知には前年に支払った分が載っていることがあるので、(2)は領収書で確かめます。
注意する点は次のとおりです。
- 通知に載らない医療費(通院の交通費、薬局で買った薬など)は、通知を使っても「2」に書きます。
- 領収書を5年間保管する対象は、医療費通知に係るものを除いた領収書です。
- 通知に保険者番号や被保険者等の記号・番号が書かれているときは、復元できない程度に塗りつぶして出します。
- 令和3年分以後は、e-Taxで送るときは、通知に載っている事項を明細書に入力して送信すれば、通知の添付に代えられます(5年間は、税務署から通知の提示等を求められることがあります)。
- 6項目のどれかが欠けているお知らせは、医療費通知に当たりません。欠けた項目を補って書き入れるか、領収書から明細書を作り、領収書を5年間保管します。
セルフメディケーション税制の明細書との違い
ドラッグストアで買った市販薬が中心の人は、通常の医療費控除ではなく、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)を選ぶ方法があります。明細書も別の様式(「セルフメディケーション税制の明細書」)です。
| 項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象 | 診療・治療、薬、通院費など | 特定一般用医薬品等購入費 |
| 差し引く額 | 10万円(200万円未満は所得の5%) | 12,000円 |
| 控除の上限 | 200万円 | 88,000円 |
| 条件 | なし | 健康診査や予防接種などの一定の取組 |
国税庁 No.1131 では、この2つは選択適用です。セルフメディケーション税制を選ぶと、ほかの医療費が10万円を超えていても、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。また、いったん選んだあとに、更正の請求や修正申告で変更することもできません。人間ドックなど「一定の取組」の費用は、セルフメディケーション税制の控除の対象になりません。
対象の薬は、購入の際の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されています(国税庁 No.1129)。
よくある質問
領収書は1枚ずつ明細書に書かないといけませんか?
いいえ。国税庁の記載要領では、「領収書1枚」ごとではなく、「医療を受けた方」・「病院等」ごとにまとめて記入できるとされています。同じ病院の1年分を合計して1行にできます。
領収書は申告書と一緒に出しますか?
明細書を添付するので、領収書の添付や提示は必要ありません。ただし、確定申告期限等から5年間は自宅で保管し、税務署から求められたら提示または提出します(医療費通知に係るものを除きます)。
薬局で買ったビタミン剤は医療費控除に入れられますか?
病気の予防や健康増進のためのものは、国税庁 No.1122 で対象外とされています。かぜの治療に使った一般的な医薬品や、医師の処方・指示の薬は対象です。
タクシーで通院した分は書けますか?
電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は医療費控除の対象外です。自家用車で通院するときのガソリン代や駐車場の料金も対象外です。
総所得金額等が200万円未満だと、何が変わりますか?
医療費から差し引く10万円の部分が、総所得金額等の5%の金額になります。たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引く額は7.5万円です。
参考・出典
- 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(2026年10月確認。令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.1120 質疑応答事例(健康保険組合から送られてきた医療費のお知らせ)(2026年10月確認)
- 国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費(2026年10月確認)
- 国税庁 No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)・No.1131 選択適用(2026年10月確認)
- 国税庁「令和7年分 医療費控除を受けられる方へ」医療費控除の明細書の様式・記載要領(2026年10月確認)
- 国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」医療費控除(第一表)(2026年10月確認)
- 国税庁 確定申告特集「医療費控除を受ける方へ」(2026年10月確認)
※本ページの記載は一般的なケースを簡略化したものです。実際の申告内容は、最新の様式と記載要領、または税務署・税理士にご確認ください。