持株会のデメリットと税金は?奨励金・配当・売却益の課税、NISAで売れるか、退職・未上場の扱い
持株会の税金は、場面ごとに別々です。奨励金は、使用人に支給する金銭として原則は給与所得、配当は上場株なら源泉徴収(合計20.315%)で確定申告をしないことも選べ、売って出た利益には20.315%がかかります(国税庁)。NISAは、条文を読むかぎり持株会の口座にある株には使えません。ほかに、給与と株の価値が同じ会社に左右されること、引き出しや退会の条件が持株会の規約で決まること、未上場だと配当や売却の扱いが変わることがデメリットです。
場面ごとの税金の早見表
持株会は、税の面では「従業員が自社株を毎月コツコツ買う仕組み」です。条文は、持株会契約を「従業員等が、会社の他の従業員等と共同して、会社が発行する上場株式等の買付けを一定の計画に従って個別の投資判断に基づかずに継続的に行うことを約する契約」と定義しています(租税特別措置法施行令第25条の10の2第14項第23号)。税金は、買うとき・配当をもらうとき・売るときで別々に決まります。
| 場面 | 税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 奨励金をもらう | 使用人に支給する金銭は原則として給与所得(持株会の奨励金を名指しした国税庁の記載は未確認) | 所得税法28条・36条、国税庁 No.2508 |
| 上場株の配当をもらう | 源泉徴収15.315%+住民税5%。確定申告をしない選択ができる | 国税庁 No.1330・No.1331 |
| 未上場株の配当をもらう | 源泉徴収20.42%。総合課税。少額配当は申告不要 | 国税庁 No.1330 |
| 売って利益が出た | 譲渡益に20.315%(所得税15.315%+住民税5%)。取得費は総平均法に準ずる方法 | 国税庁 No.1463・No.1466 |
| 特定口座に受け入れる | 上場株式等なら、持株会の口座から特定口座へ振替で受け入れられる | 措置法施行令25条の10の2 |
| NISAで非課税にする | 持株会の口座にある株を入れる定めは、条文に見当たらない | 措置法37条の14 |
※出典:国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)、e-Gov法令検索(所得税法・租税特別措置法・同施行令)、金融庁NISA特設サイト(2026年10月3日確認)。令和9年1月1日以後に生ずる所得は、復興特別所得税が1.1%に下がり防衛特別所得税が併せて源泉徴収されるとされています(No.1330)。このページは現行の率で書いています。
ここで一番迷いやすいのは、奨励金・NISA・取得費の3つです。順に、国税庁と条文に書かれている範囲を確かめます。
奨励金は給与として課税されるのか
持株会では、会員が拠出した金額に、会社が一定の割合の奨励金を上乗せして株を買うことがあります。率や有無は会社しだいで、公的な決まりはありません。
国税庁には、持株会の奨励金を名指しで扱ったタックスアンサー・質疑応答事例は見当たりませんでした。そこで一般の規定を確かめると、次のとおりです。
- 給与所得とは:「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」に係る所得です(所得税法第28条第1項)。
- 収入金額には経済的利益も含まれます:金銭以外の物や権利その他経済的な利益で収入する場合は、その価額が収入金額です(所得税法第36条第1項)。
- 国税庁の案内:役員や使用人に支給する手当は、原則として給与所得になります(No.2508)。
これらから、会社が従業員に支給する金銭である奨励金は、原則として給与所得の収入金額になると考えるのが自然です。実際に給与明細へどう載るか(賞与や手当と同じ扱いか、別の扱いか)は、会社の経理処理と持株会の規約で決まるため、勤務先に確認してください。
配当の課税と確定申告
持株会で買った株にも、配当が出ます。配当所得の課税は、上場しているかで分かれます(国税庁 No.1330・No.1331)。
| 株の種類 | 源泉徴収 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 上場株式等(大口株主等を除く) | 15.315%(他に住民税5%) | しなくてもよい。する場合は総合課税か申告分離課税を選ぶ |
| 未上場株式(上場株式等の大口株主等を含む) | 20.42%(地方税なし) | 原則は総合課税で申告。少額配当(10万円×配当計算期間の月数÷12以下)は申告不要 |
※出典:国税庁 No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」、No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月3日確認)。大口株主等は、発行済株式の総数等の3%以上を持つ個人などです。
- 申告を選ぶと得になる場合があります:総合課税を選ぶと、一定のものを除いて配当控除が受けられます(No.1330)。申告分離課税を選ぶと、上場株式等の譲渡損失との損益通算ができます(No.1331)。どちらが有利かは、ほかの所得によって変わります。
- 確定申告をしない選択をすると、その配当の源泉徴収税額は戻りません:確定申告不要制度を選んだ配当に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引けません(No.1330)。
- 持株会を通して受け取る配当:配当を会員に分配するのか再投資するのか、支払通知書をどう出すのかは、公的な案内に書かれていません。持株会の規約や会員に届く通知で、受け取った配当と源泉徴収された額を確かめます。
引き出して売るとき:税金と取得費
持株会の株を売って利益が出ると、その譲渡益に、所得税15%と住民税5%の20%がかかります。所得税には復興特別所得税が上乗せされるため、合計は20.315%です(国税庁 No.1463)。計算は次のとおりです。
譲渡益 = 売却代金 -(取得費+売却の手数料等)
毎月、数回に分けて買っている持株会の株は、取得費を「総平均法に準ずる方法」で出します。国税庁は、同一銘柄を2回以上購入して一部を売ったときは、(A+B)÷(C+D)で1単位あたりの金額を計算するとしています(No.1466。Aは最初に購入したときの購入価額の総額、Bはその後今回の売却までの購入価額の総額、C・Dはそれぞれの株数)。
| 計算例(金額は仮の数字) | 株数 | 金額 |
|---|---|---|
| 1回目の買付け(単価1,000円) | 100株 | 100,000円 |
| 2回目の買付け(単価1,200円) | 100株 | 120,000円 |
| 1株あたりの取得費 | 200株で | (100,000+120,000)÷200=1,100円 |
| 100株を1株1,500円で売却 | 100株 | 譲渡益 40,000円 → 税 約8,126円(20.315%) |
※計算例は、No.1466の算式を持株会の買付けにあてはめた仮の数字で、手数料は入れていません。実際の取得単価は、持株会が会員に通知する数字を確認します。
- 奨励金を取得費に含めるか:国税庁・条文に、持株会の株式の取得費を名指しした記載は見当たりませんでした。持株会が会員に通知する取得単価や売却の計算書に従うのが入口です。給与として課税された奨励金の扱いは、税務署か税理士に確認してください。
- 損が出たとき:上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば、配当との損益通算や、翌年以後3年間の繰越控除ができます(No.1465)。条件は国税庁の案内で確認してください。
- 売却の手続き・単位・手数料:持株会の規約で決まります。公的な案内には書かれていないため、このページでは扱いません。
NISAで売れるのか、特定口座は使えるのか
「NISAで売れば非課税になるのか」という疑問は、NISAの非課税は、NISA口座に受け入れた株にだけ働くことを押さえると整理できます。
- NISAの仕組み:金融庁は、NISA口座で投資した金融商品の売却益と配当が非課税で、年間投資枠は最大360万円(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)、非課税保有限度額は1,800万円(成長投資枠はそのうち1,200万円)と説明しています。
- NISA口座に入れられる株:成長投資枠に受け入れる上場株式等は、金融商品取引業者への買付けの委託、業者からの取得、業者が行う募集のいずれかで取得し、取得後直ちに受け入れられるものとされています(租税特別措置法第37条の14第5項第6号ハ)。
- 持株会の株:持株会から払い出した株を非課税口座に受け入れる定めは、措置法とその施行令で「持株会」が出てくる箇所(特定口座への振替)には見当たりませんでした。条文を読むかぎり、持株会の口座にある株を売った利益は、NISAの非課税の対象ではなく、20.315%の課税対象と考えられます。
- 特定口座は使えます:持株会契約に基づいて取得した上場株式等は、持株会の口座から特定口座へ「振替」で受け入れられます(措置法施行令第25条の10の2第14項第23号)。特定口座の源泉徴収ありを選ぶと、売るたびに税が源泉徴収され、一定の条件で確定申告が不要になります(No.1476)。
持株会そのものがNISAの口座を使って買付けできるかどうかは、持株会の運営会社や規約によるため、確かめられていません。気になる場合は、勤務先の持株会の窓口に問い合わせます。
NISAの仕組みそのものは、iDeCoとNISAの比較にまとめています。
退職・一部引き出し・未上場の会社の持株会
| 場面 | わかっていること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 退職する | 持株会契約は従業員等が会社の他の従業員等と共同して行う契約。退会後の株の引き出し・売却の手続きは、公的な原典に定めがない | 持株会の規約・窓口 |
| 株を一部だけ引き出す | できるか、単位は何株かは、国税庁・条文に定めがない。売れば譲渡益に課税 | 持株会の規約 |
| 上場の会社の持株会 | 配当は申告不要が選べる。売却益は20.315%。特定口座へ振替できる | 国税庁 No.1330・No.1463 |
| 未上場の会社の持株会 | 配当は20.42%で源泉徴収(少額配当は申告不要)。売却は一般株式等で、特定口座は使えない | 国税庁 No.1330・No.1463 |
| 未上場株を発行会社に売る | 受け取る金額のうち、会社の資本金等のうちその株式に対応する額を超える部分は、配当所得とみなされる | 国税庁 No.1477、所得税法25条 |
※出典:国税庁 No.1330・No.1463・No.1477(令和8年4月1日現在法令等)、e-Gov 所得税法第25条第1項、租税特別措置法施行令第25条の10の2(2026年10月3日確認)。No.1477の特例(相続した非上場株式)は、このページでは使っていません。
退職の手続き全体は退職時のチェックリストに、確定申告が必要になる場合は確定申告が必要な会社員のケースにまとめています。
デメリットのまとめ
公的な原典と、持株会の仕組みから読み取れる点です。
- 給与と株の価値が、同じ会社に左右されます:勤務先の業績が悪くなると、給与・賞与と、持株会で持つ株の価値の両方が同じ会社の状況の影響を受けます。これは仕組みから生じる性質で、公的な原典に書かれた文言ではありません。
- 株価は上下し、元本は保証されません:売ったときに取得費を下回れば、損が出ます。
- 奨励金は課税されます:原則として給与所得で、手取りが全額増えるわけではありません。
- NISAの非課税は使えません:条文を読むかぎり、持株会の口座にある株には使えません。
- 引き出し・退会の条件は持株会ごとに違います:単位や時期、手数料、一部引き出しの可否は規約で決まり、公的な案内がありません。
- 未上場だと、換金や課税の自由度が下がります:配当は申告不要を選べず、特定口座も使えません。発行会社に売ると、みなし配当が生じる場合があります。
一方で、奨励金が付く、給与天引きで少額から続けられる、といった点を理由に続ける人もいます。続けるか引き出すかは、手取り、ほかの積み立て、住宅や老後の資金計画との兼ね合いで変わります。財形貯蓄のデメリットと解約やiDeCoは解約できるかもあわせて確認すると、会社経由の積み立て全体を整理しやすくなります。
よくある質問
Q. 持株会の奨励金には税金がかかりますか?
A. 国税庁に、持株会の奨励金を名指しで扱ったページは見当たりませんでした。ただ、使用人に支給する金銭は原則として給与所得になります(所得税法第28条第1項・国税庁 No.2508)。会社が会員に上乗せして支給する奨励金は、給与として扱われるものと考えるのが自然です。給与明細での扱いは、勤務先の経理か持株会の規約で確認してください。
Q. 持株会の配当は、確定申告が必要ですか?
A. 上場株式等の配当は、支払いのときに15.315%(他に住民税5%)が源泉徴収され、確定申告をしなくてもよい制度があります(国税庁 No.1330)。申告する場合は、総合課税か申告分離課税を選べます(No.1331)。ただし大口株主等(発行済株式の3%以上など)は対象外です。未上場株式の配当は20.42%の源泉徴収で、少額配当(1回の配当が10万円×配当計算期間の月数÷12以下)なら確定申告を要しません。
Q. 持株会の株を売ると、税金はいくらかかりますか?
A. 株式等の譲渡益には、上場株式等も一般株式等(未上場)も、所得税15%と住民税5%の20%がかかり、所得税には復興特別所得税が上乗せされます(国税庁 No.1463)。合計は20.315%です。たとえば譲渡益が5万円なら、計算上は約10,158円です(50,000円×20.315%)。譲渡益は「売却代金-取得費-手数料等」で、利益にだけかかります。
Q. 持株会で買った株は、NISAで売れば非課税になりますか?
A. 条文を読むかぎり、持株会の口座にある株は対象外と考えられます。NISA口座(成長投資枠)に受け入れられる上場株式等は、金融商品取引業者への買付けの委託、業者からの取得、業者が行う募集で取得し、取得後直ちに受け入れられるものとされています(租税特別措置法第37条の14第5項)。持株会から払い出した株を入れる定めは、措置法・施行令の「持株会」の用例(特定口座への振替)には見当たりません。持株会が拠出にNISAを使えるかは、持株会の運営会社や規約に確認してください。
Q. 退職したら、持株会の株はどうなりますか?
A. 国税庁・条文には、退職後の持株会の株の扱いを定めたものは見つかりませんでした。持株会契約は、従業員等が会社の他の従業員等と共同して、買付けを一定の計画で継続的に行う契約と定義されている(租税特別措置法施行令第25条の10の2第14項第23号)ので、退会や株の引き出し・売却の手続きは持株会の規約で決まります。株を売れば譲渡益に課税されます。
Q. 未上場の会社の持株会でも、税金は同じですか?
A. 同じではありません。未上場株式の配当は、上場株式等のような申告不要の制度が使えず、20.42%の源泉徴収で、総合課税の対象です(少額配当は申告不要)。譲渡は一般株式等として20.315%の申告分離課税ですが、特定口座に入れられるのは上場株式等だけです。また、個人が非上場株式を発行会社に譲渡して受け取る金額が、会社の資本金等のうちその株式に対応する額を超える部分は、配当所得とみなされます(国税庁 No.1477、所得税法第25条)。
参考・出典
- 国税庁 - No.2508 給与所得となるもの(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)・No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)・No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費・No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1476 特定口座制度・No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例(冒頭の一般則のみ参照。2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 所得税法(第25条・第28条・第36条。2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 租税特別措置法(第37条の14。2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 租税特別措置法施行令(第25条の10の2。2026年10月3日確認)
- 金融庁 - NISA特設サイト「NISAを知る」(2026年10月3日確認)
※持株会の仕組み(奨励金の率、引き出し・退会・売却の条件、手数料)は、会社と運営する持株会の規約によって異なります。税金の具体的な扱いは、勤務先の持株会の窓口、税務署、税理士等にご確認ください。このページは特定の銘柄や投資の判断を勧めるものではありません。