退職金は年末調整に含まれる?退職所得と給与所得の違い・源泉徴収票は別・配偶者控除の所得に入るか・確定申告が要る場合

会社に勤めていて、退職金を受け取る予定の方、家族が退職金を受け取った方向けの解説です。退職金(退職手当等)は退職所得で、給与所得とは別の所得です。年末調整を定めた所得税法190条は給与等について定めていて、条文に「退職」の語は出てきません。源泉徴収票も別、家族の退職金は配偶者控除の「合計所得金額」に退職所得金額として入ります。確定申告が要る場合とあわせて、国税庁と e-Gov 法令検索の原文で整理しました。

退職金は年末調整に含まれるか

所得税法28条1項は、俸給・給料・賃金・歳費・賞与とこれらの性質を有する給与を給与等とし、その所得を給与所得としています。退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与は、30条1項が退職手当等として、退職所得に分けています。年末調整の190条が扱うのは、前者の給与等です。190条の条文には、「退職」の語は出てきません。

項目給与等(賞与を含む)退職手当等
所得の種類給与所得(28条1項)退職所得(30条1項)
源泉徴収の義務183条1項199条
年末調整190条が定める190条に「退職」の語はない
源泉徴収票226条1項226条2項

出典:所得税法28条・30条・183条・190条・199条・226条(e-Gov 法令検索、2026年10月1日時点の版)、2026年10月2日確認。

国税庁のNo.1420は、退職所得は原則として他の所得と分離して所得税額を計算するとしています。退職所得の金額は(収入金額−退職所得控除額)×1/2で、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、支払者が支払の際に税額を計算して源泉徴収します。給与の年末調整とは別の手続です。

なお、国税庁の手引き(5〜6ページ)は、年の中途で退職した人を、死亡退職・12月中に支給期の到来する給与を受けた後の退職などの場合を除き、年末調整の対象としていません。退職金の有無は、この表の条件に挙がっていません。転職した年の前職分の扱いは転職した年の年末調整にあります。

退職所得の受給に関する申告書の書き方は、退職所得の受給に関する申告書とはにまとめています。

源泉徴収票は、給与と退職金で別になる

所得税法226条は、給与等の源泉徴収票(1項)と、退職手当等の源泉徴収票(2項)を、別の項で定めています。退職手当等の支払をする者は、各人別に源泉徴収票を2通作り、退職の日以後1月以内に、1通を税務署長に提出し、他の1通を受ける者に交付します。

項目給与等退職手当等
条文226条1項226条2項
交付の期限翌年1月31日まで(年の中途で退職した居住者は退職の日以後1月以内)退職の日以後1月以内

出典:所得税法226条1項・2項、2026年10月2日確認。

給与の源泉徴収票の摘要欄の見方は源泉徴収票の摘要欄の見方、もらえないときの対応は源泉徴収票がもらえないときにあります。

家族が退職金をもらった年の配偶者控除・扶養控除

配偶者控除や扶養控除の要件にある「合計所得金額」は、所得税法2条1項30号で、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額と定められています。国税庁の手引き(9ページ)も、合計所得金額を、事業所得・給与所得などの合計額に「退職所得金額、山林所得金額を加算した金額」としています。

足されるのは、退職金の収入金額ではなく、退職所得控除額を引いて2分の1にした退職所得の金額です(30条2項、No.1420)。次の表は、ほかの所得がない場合の、退職所得の金額と、控除対象配偶者の上限(62万円以下、令和8年分、No.1191)との関係です。

退職金(勤続年数)退職所得控除額退職所得の金額
800万円(勤続20年)800万円0円(62万円以下)
500万円(勤続10年)400万円50万円(62万円以下)
1,000万円(勤続20年)800万円100万円(62万円を超える)
1,500万円(勤続20年)800万円350万円(62万円を超える)

令和8年分の所得税。当サイトの計算式(一般の退職手当等・障害者になったことによる退職でない場合)で算出。勤続5年以下の場合などは計算が異なります。パートの給与所得などがあれば、その所得金額に足した額で判断します。2026年10月2日確認。

退職金が退職所得控除額の範囲に収まれば、退職所得の金額は0円で、合計所得金額に足される額も0円です。控除額を超えた分は、2分の1にした額が足されます。年末調整で配偶者の合計所得金額の見積額を書く申告書の書き方は、基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方にあります。

なお、手引き(45ページ)は、住民税では、扶養親族等の要件とされる所得の金額には退職所得の金額は含めないこととされているとしています。住民税の扱いは、市区町村に確認してください。

退職金で確定申告が要る場合

国税庁のNo.1420は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで、扱いを分けています。申告書は、退職手当等の支払を受ける時までに、支払者を経由して提出するものです(所得税法203条1項)。

申告書源泉徴収される税額確定申告
提出した退職所得の金額に応じた税額原則として不要。医療費控除などで確定申告書を出すときは、退職所得の金額を記載する
提出していない支払金額の20.42%本人が確定申告をして精算する

出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(令和8年4月1日現在法令等)、所得税法201条3項・203条、2026年10月2日確認。

提出していない場合の税率は、所得税法201条3項が100分の20、国税庁のNo.1420が復興特別所得税を含めて20.42パーセントと書いています。退職金の手取りの目安は退職金の手取り計算機で確認できます。

企業型DCなどを一時金で受け取る場合の退職所得控除の扱いは、企業型DCの受け取り方と税金にあります。

よくある質問

Q. 退職金をもらった年は、勤め先の年末調整を受けられませんか?

A. 国税庁の手引き(5〜6ページ)の表は、年の中途で退職した人について、①死亡により退職した人、②著しい心身の障害のため退職した人で本年中に再就職ができないと見込まれる人、③12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人、④パートタイマーなどが退職した場合で本年中に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人は年末調整の対象とし、それ以外は対象外としています。退職金の有無は条件に挙がっていません。年末調整Q&A(問1)も、年の中途で退職した人は一定の場合を除き対象とならないと答えています。

Q. 退職金から20.42%が引かれていました。戻りますか?

A. 国税庁のNo.1420は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人には、退職金の支払金額の20.42パーセントの所得税額および復興特別所得税額が源泉徴収され、受給者本人が確定申告を行うことで精算するとしています。精算の結果は、退職所得控除額などで決まります。申告書の仕組みは、退職所得の受給に関する申告書のページにまとめています。

Q. 退職金の源泉徴収票は、いつもらえますか?

A. 所得税法226条2項は、退職手当等の支払をする者が、退職の日以後1月以内に源泉徴収票を作成し、1通を税務署長に提出し、他の1通を退職手当等の支払を受ける者に交付するよう定めています。給与の源泉徴収票とは別の条文で、別の書類です。

Q. 配偶者が退職金をもらった年、配偶者控除は受けられますか?

A. 配偶者控除の要件の「合計所得金額」には、退職所得金額が含まれます(所得税法2条1項30号、手引き9ページ)。国税庁のNo.1191は、控除対象配偶者の年間の合計所得金額を62万円以下(令和8年分)としています。退職金の収入金額ではなく、退職所得控除額を引いて2分の1にした退職所得の金額が足されます。ほかの所得と合わせて62万円以下かどうかで判断します。個別のケースは、税務署や会社の給与担当に確認してください。

Q. 退職金が退職所得控除額の範囲内でも、合計所得金額に入りますか?

A. 入る金額は、収入金額から退職所得控除額を引いた残額の2分の1(所得税法30条2項、No.1420)です。収入金額が退職所得控除額の範囲に収まれば、退職所得の金額は0円になり、合計所得金額に足される額も0円です。勤続5年以下の場合や役員等の場合は計算が異なります。

Q. 退職金を受け取った年に、医療費控除で確定申告をします。退職金はどうなりますか?

A. 国税庁のNo.1420は、申告書を提出している人も、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があるとしています。

参考・出典

※国税庁と法令の原文に書かれている範囲の整理です。控除の可否や申告の要否は、個別の事情や会社の取扱いで変わります。税の判断は勤務先の担当部署、税務署、税理士にご確認ください。

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