単身赴任の年末調整の書き方|別居の家族を扶養に入れられるか・申告書の住所欄・単身赴任手当と帰省旅費は課税か
会社に勤めている方向けの解説です。単身赴任で家族と別居していても、「生計を一にしている」なら、家族を扶養控除や配偶者控除の対象にできます。国税庁の通達2-47は、休日などには家族のもとで起居を共にするのが常例か、常に生活費などの送金がある場合を、生計を一にするとしています。単身赴任手当は、国税庁が挙げる非課税の例外(通勤手当・旅費・宿日直手当)に入っていないため、原則どおり給与所得として課税されます。
別居の家族を扶養に入れられるか(通達2-47)
単身赴任で家族が別の場所に住んでいても、扶養控除は受けられます。扶養親族の要件の1つは「あなたと生計を一にしていること」で、同居は条件ではありません。所得税基本通達2-47は、勤務の都合で日常の起居を共にしていない場合でも、次のどちらかに当てはまれば生計を一にするとしています。
| 単身赴任の状況 | 生計を一にするか | 根拠 |
|---|---|---|
| 休日などの余暇には、家族のもとで起居を共にするのが常例 | 生計を一にする | 通達2-47(1)イ |
| 家族との間で、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている | 生計を一にする | 通達2-47(1)ロ |
| 上の2つのどちらにも当たらない | 通達に例の記載なし | 勤務先・税務署に確認 |
出典:所得税基本通達2-47、国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除(令和8年4月1日現在法令等)のQ&A、国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」問3、2026年10月2日確認。
家族が赴任先で一緒に暮らしている場合は単身赴任ではないので、ここでは扱いません。扶養控除の控除額は、16歳以上の一般の控除対象扶養親族なら所得税38万円、19歳以上23歳未満の特定扶養親族なら63万円です。家族の合計所得金額が62万円以下(令和8年12月1日施行、令和8年分から適用)などの要件は、単身赴任でない場合と同じです。
別居の家族を扶養に入れるとき、国税庁は、会社が正しく計算するために、銀行振込や現金書留の振込票、書留の写しなどで送金の事実を確認することをお勧めしています。法令上は、会社にこれらの書類を提出することまでは求められていません。
扶養控除等申告書の書き方全般は扶養控除等申告書の書き方にあります。
配偶者控除も同じ考え方
配偶者控除の控除対象配偶者の要件にも「納税者と生計を一にしていること」があり、国税庁の根拠法令等に所得税基本通達2-47が挙がっています。単身赴任で配偶者と別居していても、上の表のどちらかに当たれば、生計を一にしているものとして扱われます。配偶者の合計所得金額は62万円以下(令和8年分)が要件で、あなたの合計所得金額が900万円以下なら一般の控除対象配偶者の配偶者控除は38万円です。
配偶者控除と配偶者特別控除の申告書は、基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方にまとめています。
申告書の住所欄と世帯主の欄
国税庁の令和8年分の記載例(扶養控除等申告書)で、単身赴任のときに迷いやすい欄は次のとおりです。
| 欄 | 記載例の書き方 | 記載例の内容 |
|---|---|---|
| あなたの住所又は居所 | 上部の欄に記載 | ○○市××町 23-7 |
| 世帯主の氏名・あなたとの続柄 | 上部の欄に記載 | 山川 太郎/本人 |
| 源泉控除対象親族の住所又は居所 | 家族ごとの行に記載 | 同じ住所は書くか〃。国外の長男は、国外の住所 |
出典:国税庁「《記載例》令和8年分扶養控除等申告書」(記載例の画像で照合)、2026年10月2日確認。
記載例では、あなたと同じ住所の家族は上の欄と同じ住所を書き(または〃)、別の場所に住む長男はその住所を書いています。単身赴任で家族が自宅に住み、あなたが赴任先にいる場合も、家族の行には家族が住んでいる場所を書く欄だと、記載例から読み取れます。
ただし、赴任先と住民票の住所のどちらを「あなたの住所又は居所」に書くか、世帯主の欄に誰を書くかは、記載例と国税庁の「年末調整のしかた」に説明が見つかりませんでした。住民票を移していない場合の書き方は、勤務先の担当部署の指示に従ってください。
70歳以上の親が元の家に残ったとき
70歳以上の親を扶養に入れている場合は、同居の有無で控除額が変わります。同居老親等なら所得税58万円、それ以外の老人扶養親族なら48万円です。
国税庁の令和8年分「年末調整のしかた」は、所得者が転勤したことに伴い住所を変更したため、親が所得者等と別居している場合は、同居老親等に該当しないと書いています。同居老親等は、あなたかあなたの配偶者のいずれかとの同居を常況としている親です。単身赴任そのものの例は原文にありません。配偶者が親と同居を続けている場合の扱いは、勤務先の担当部署に確認してください。同居老親等の要件と所得の見積額の出し方は、同居老親等の年末調整の書き方にあります。
単身赴任手当と帰省旅費は課税か
国税庁のタックスアンサー No.2508 は、使用人に支給する手当は原則として給与所得になるとしています。非課税の例外は、一定金額以下の通勤手当、転勤や出張などのための旅費のうち通常必要と認められるもの、一定金額以下の宿直・日直の手当です。単身赴任手当の名前は挙がっていません。
| 支給されるもの | 課税の扱い(国税庁) | 根拠 |
|---|---|---|
| 毎月の単身赴任手当 | 非課税の例外に挙がっていない手当は、原則として給与所得 | No.2508 |
| 社宅が確保できず単身赴任した人への、旅費規程による月額の着後滞在費 | 一種の別居手当又は住宅手当として、給与等に課税 | 質疑応答事例 |
| 会議等の出張に併せて帰宅するときの旅費 | 一定の条件を満たせば、非課税として差し支えない | 質疑応答事例 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2508 給与所得となるもの、質疑応答事例(源泉所得税)「単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費」「単身赴任者が会議等に併せて帰宅する場合に支給される旅費」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)、2026年10月2日確認。
帰省の旅費で非課税になるのは、会議等のための出張に付随して帰宅する場合です。国税庁の質疑応答事例は、主として職務遂行上必要な旅行と認められ、旅費の額が所得税基本通達9-3(その旅行に通常必要とされる費用の範囲)を著しく逸脱しない限り、非課税として差し支えないとしています。次の3点に注意が必要とされています。
- 対象は、会議等のため職務遂行上の必要に基づく旅行を行い、これに付随して帰宅する場合に支払われる旅費に限られる
- 月1回などの定量的な基準で非課税の取扱いをするものではない
- 帰宅のための旅行は職務出張に付随するものなので、期間や帰宅する地域には制約がある
帰省だけを目的に定期的に支給される旅費は、この事例の対象に入っていません。課税されるかどうかは、勤務先の給与の担当部署に確認してください。給与として課税される手当は、年末調整で計算する給与の総額に含まれます。
よくある質問
Q. 単身赴任でも、家族を扶養に入れられますか?
A. 入れられます。国税庁によると、生計を一にするとは、必ずしも同居を要件とするものではありません。勤務の都合で別居していても、休日などには家族のもとで起居を共にすることを常例としている場合か、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合は、生計を一にするものとして取り扱われます。そのうえで、家族の合計所得金額が62万円以下(令和8年分)などの要件を満たす必要があります。
Q. 単身赴任先から家族に仕送りをしていません。休日に家に帰るだけでも大丈夫ですか?
A. 通達2-47は、休日などの余暇に家族のもとで起居を共にすることを常例としている場合も、生計を一にするものとしています。どのくらいの頻度なら常例といえるかは、通達に数字が書かれていません。迷うときは、勤務先の担当部署か税務署に確認してください。
Q. 単身赴任手当は、課税されますか?
A. 国税庁のタックスアンサー No.2508 によると、使用人に支給する手当は原則として給与所得です。非課税の例外として挙げられているのは、一定金額以下の通勤手当、転勤や出張などのための旅費のうち通常必要と認められるもの、一定金額以下の宿直・日直の手当で、単身赴任手当は挙がっていません。類似の質疑応答事例では、旅費規程により単身赴任者に月額5万円を支給する着後滞在費を、一種の別居手当又は住宅手当として給与等に課税するとしています。
Q. 会社が帰省のための交通費を出してくれます。課税されますか?
A. 国税庁の質疑応答事例は、単身赴任者が会議等のための出張に併せて帰宅する場合の旅費について、主として職務遂行上必要な旅行と認められ、旅費の額が所得税基本通達9-3の範囲を著しく逸脱しない限り、非課税として差し支えないとしています。ただし、この取扱いの対象は、職務上の旅行に付随して帰宅する場合に限られ、月1回などの定量的な基準で非課税とするものではないとされています。帰省だけを目的に定期的に支給される旅費が非課税になるかは、この事例からは分かりません。
Q. 70歳以上の親が元の家に残っています。同居老親等になりますか?
A. 国税庁の「年末調整のしかた」は、所得者が転勤したことに伴い住所を変更したため、老親等が所得者等と別居している場合は、同居老親等に該当しないとしています。同居老親等は、あなたかあなたの配偶者のいずれかとの同居を常況としている親をいうため、配偶者が親と同居を続けている場合の扱いは、この例からは分かりません。迷うときは勤務先の担当部署に確認してください。
Q. 単身赴任先に住民票を移していません。申告書の住所や世帯主の欄はどう書きますか?
A. 国税庁の記載例では、申告書の上部に「あなたの住所又は居所」「世帯主の氏名」「あなたとの続柄」の欄があり、世帯主が本人の例が載っています。単身赴任で住民票の住所と現住所が違う場合の書き分けは、記載例と「年末調整のしかた」で見つかりませんでした。勤務先の担当部署の指示に従ってください。
参考・出典
- 所得税基本通達2-47(生計を一にするの意義)・同9-3(非課税とされる旅費の範囲)(2026年10月2日確認)
- 国税庁 No.1180 扶養控除・同Q&A・No.1191 配偶者控除・No.2508 給与所得となるもの(2026年10月2日確認)
- 国税庁 令和8年分 年末調整Q&A・令和8年分 年末調整のしかた・《記載例》令和8年分扶養控除等申告書(2026年10月2日確認)
- 質疑応答事例 単身赴任者が会議等に併せて帰宅する場合に支給される旅費・単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費(2026年10月2日確認)
※国税庁の原文に書かれている範囲の整理です。生計を一にしているか、手当や旅費が課税になるかは、個別の事情や会社の規定で変わります。個別の判断は、勤務先の担当部署、税務署でご確認ください。