年末調整を出さないとどうなる?乙欄で多く引かれ、確定申告で戻る
年末調整の書類のうち「扶養控除等(異動)申告書」を出していないと、会社は毎月の給与から「乙欄」で源泉徴収し、年末調整もしません(国税庁 No.2665・No.2511)。年末調整の対象にならない人は、自分で確定申告をして税額を精算します。多く引かれた分は、確定申告(還付申告)で取り戻せます。バイト・学生・掛け持ち・副業の場合の戻る額の例と、期限も下にまとめました。
どの書類を出さないかで変わること
年末調整の書類は主に3種類あります。出さなかった書類によって、毎月の源泉徴収と年末調整の扱いが違います。
| 出さない書類 | 毎月の源泉 | 年末調整 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 乙欄(税額が高い) | 対象にならない |
| 基礎控除申告書など | 甲欄のまま | 行われるが、その控除は入らない |
| 保険料控除申告書 | 甲欄のまま | 行われるが、その控除は入らない |
年末調整の対象になるのは、扶養控除等(異動)申告書を年末調整を行う日までに提出している一定の人です(No.2665)。基礎控除・配偶者控除等・保険料控除は、各人が提出した申告書に基づいて年末調整で行うことになっています(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。
出し忘れなら、年末調整の前に出すのが一番簡単です
国税庁の手引きは、まだ扶養控除等申告書を出していない人についても、年末調整を行う時までに申告があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことになっていると案内しています。確定申告の手間が要るのは、年末調整が済んでからも出さなかった場合です。
乙欄とは?毎月いくら多く引かれるか
給与から源泉徴収する所得税の額は、「給与所得の源泉徴収税額表」で決まります。扶養控除等申告書を提出している人の給与は「甲欄」、それ以外の人の給与は「乙欄」を使います(No.2511)。同じ給与でも、乙欄のほうが毎月の源泉徴収税額は大きくなります。
令和8年分の源泉徴収税額表(月額表)で、社会保険料等を引いたあとの月の給与が次のとき、税額は表のとおりです。甲欄は扶養親族等が0人の場合です。
| 月の給与 | 乙欄(出さない) | 甲欄(出す・0人) |
|---|---|---|
| 110,000円 | 3,900円 | 380円 |
| 130,000円 | 5,300円 | 1,400円 |
| 150,000円 | 8,300円 | 2,420円 |
出典:国税庁 令和8年分 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)。月の給与は、その月の社会保険料等控除後の金額です。
甲欄を使う人は、年末調整で1年間の本来の税額と精算されます。乙欄を使う人はこの精算がないため、毎月多く引かれた分は、確定申告をしない限りそのままになります。
確定申告で戻る額の例
1か所で1年間、毎月同じ給与をもらい、乙欄で源泉徴収された人が、令和8年分の確定申告をした場合の例です。令和8年分の所得税は、給与所得控除(収入220万円以下は74万円)と基礎控除(合計所得489万円以下は104万円)で計算します。社会保険料の天引きや他の所得はない前提です。
| 年収(月×12) | 乙欄で1年間に引かれた額 | 確定申告で戻る額 |
|---|---|---|
| 132万円 | 46,800円 | 46,800円 |
| 156万円 | 63,600円 | 63,600円 |
| 180万円 | 99,600円 | 98,579円 |
戻る額=乙欄で引かれた額 − 令和8年分の本来の所得税。本来の所得税は年収132万円で0円、年収156万円で0円、年収180万円で1,021円です。社会保険料や他の控除がある場合は本来の税額がさらに少なくなるため、戻る額は増える方向に動きます。
源泉徴収税額が0なら、戻る税金もありません
還付は、すでに源泉徴収された所得税がある場合に発生します。給与の源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0の方は、申告しても還付される所得税額はありません(No.2030)。
令和8年分の基礎控除の金額や、令和7年分との違いは基礎控除の早見表と計算機で確認できます。
バイト・学生・掛け持ち・副業の場合
- 学生・バイト(1か所):扶養控除等申告書を出していれば甲欄で、年末調整もされます。出していなければ上の表のとおり乙欄になります。学生で一定の要件を満たす場合の控除は勤労学生控除の計算ツールで確認できます。
- 掛け持ち:扶養控除等申告書を出した側の給与が主たる給与(甲欄)、それ以外は従たる給与(乙欄)です。従たる給与は原則として年末調整できず、本人が確定申告で精算します(No.2520)。
- 副業が給与の場合:本業が甲欄、副業が乙欄になります。給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と給与・退職以外の所得金額の合計が20万円を超えると、確定申告が必要です(一定の場合は不要。No.1900)。この場合は「戻る」ではなく「申告の義務」になります。詳しくは副業があるときの年末調整へ。
- 年の途中で辞めた:退職した人は、年末調整の対象になるごく一部の場合を除き年末調整されません(No.2665)。国税庁は、年の途中で退職し年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているときを、還付申告の具体例に挙げています(No.2030)。
取り戻せる期限
税金が戻る確定申告(還付申告)は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(No.2030)。例えば令和8年分なら、令和9年1月1日から5年間です。
手続は、給与の源泉徴収票を用意して、国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作り、e-Taxまたは郵送等で所轄の税務署に出します。期限後の扱いと、納める税金がある場合の加算税・延滞税は確定申告の期限を過ぎたらにまとめています。
よくある質問
Q. 扶養控除等申告書を出さないと、どうなりますか?
A. 給与の支払者は、扶養控除等申告書を提出していない人の給与には税額表の「乙欄」を使って源泉徴収します(No.2511)。年末調整の対象になるのは扶養控除等(異動)申告書を提出している一定の人なので(No.2665)、出していない人は年末調整されず、自分で確定申告をして精算することになります(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。
Q. 出し忘れていることに気づきました。今からでも間に合いますか?
A. 国税庁の手引きには、まだ申告書を提出していない人についても、年末調整を行う時までに申告があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことになっている、と書かれています(「令和8年分 年末調整のしかた」)。年末調整が終わる前なら、会社の担当部署に出せば乙欄のままにならずに済みます。
Q. 年末調整されなかった場合、戻る税金はどうやって取り戻しますか?
A. 確定申告(還付申告)をします。還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(No.2030)。給与の源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0の方は、申告しても還付される所得税はありません(No.2030)。
Q. 保険料控除申告書だけ出さなかった場合は?
A. 生命保険料控除や地震保険料控除は、提出された保険料控除申告書に基づいて年末調整で行います(「令和8年分 年末調整のしかた」)。出さなかった場合、年末調整にはその控除が入らないので、確定申告で申告することになります。扶養控除等申告書を出していれば、毎月の源泉徴収は甲欄のままです。
Q. バイトを掛け持ちしています。どちらも年末調整されますか?
A. 2か所以上から給与をもらう場合、扶養控除等申告書を提出している側の給与が「主たる給与」で甲欄、それ以外の「従たる給与」は乙欄です。原則として従たる給与は年末調整できないので、本人が確定申告で精算します(No.2520)。
参考・出典
- 国税庁 - No.2665 年末調整の対象となる人(2026年10月2日確認)
- 国税庁 - No.2511 税額表の種類と使い方(2026年10月2日確認)
- 国税庁 - No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収
- 国税庁 - No.2030 還付申告
- 国税庁 - No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 - 令和8年分 源泉徴収税額表
- 国税庁 - 令和8年分 年末調整のしかた
※税額や適用の判断は、個々の状況によって異なります。具体的な取り扱いは所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。